ストレスチェック検査後、
今回は、面接指導の内容や流れを中心に解説します。
ストレスチェックの実施の流れはこちら
高ストレス者への面接指導の目的
高ストレス者への面接指導の目的は、ストレスの高い者を早期に発見し、メンタルヘルス不調を未然に防止し、事業者に対しては職場環境改善等の適切な措置を講じるよう促す一次予防です。
しかし、実際には医療が必要となるレベルの症状を伴う労働者は少なくなく、そのため面接指導は、治療につなげる対応である二次予防としての意義も求められています。
制度における面接指導の意義は、労働者や事業者に理解されづらいこともあり、両者にとってメリットのある有効な事後措置につなげるかが課題となります。
労働者にとっての面接指導のメリット
労働者にとっての面接指導のメリットは、
面接指導の対象者であることが、直ちに専門医の受診が必要とされるわけではありませんが、医師による面接指導によって、医療が必要な症状があると判明する場合もあり、医療的なケアにつなげることもできます。
すでに専門医を受診している場合でも、ストレスの原因が職場にある可能性もあり、職場環境改善につなげることが解決の糸口になる可能性もあります。
また、ストレスの要因となっている職場環境に関して述べることで、面接指導医師から事業者に対して、職場環境改善に関する意見を提出してもらうことができ、必要に応じて職場環境の改善につながる事後措置をとってもらうことにつながります。
企業にとっての面接指導のメリット
面接指導後、事業者は医師から就業上必要な措置や職場環境改善に関する意見を聞くことになります。そのことで、メンタルヘルス不調者の早期発見と早期対応につながり、事業場の安全配慮義務の履行につながります。
また、事後措置として必要な職場環境改善等を実施することは、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことのみならず、働きやすい環境づくりにより従業員のパフォーマンスの向上、そして、生産性の向上につながります。
高ストレス者への面接指導の費用負担
ストレスチェック制度における医師による面接指導の費用は、保険診療では行われず、事業者が負担するものとされています。
高ストレス者への面接指導の流れ・内容
ストレスチェック実施後、高ストレス者と判定され、実施者により面接指導が必要と認められた方が、面接指導を申出た場合、企業は面接指導を実施する義務があります。
面接指導を受ける場合は、ストレスチェックの結果は事業者側に開示されることになります。
高ストレス者への面接指導の流れは次の通りです。
①高ストレス者(面接指導対象者)を実施者が確認し、面接指導の案内を送る
②面接指導申込者を確認し、面接指導の日時・場所を調整する
③医師による面接指導の実施と事後措置に関する意見書の提出
④事業者は面接指導の結果の報告を受け、必要に応じ就業上の措置を講じる
⑤講じた事後措置、講じようとしている事後措置(講じなかった場合にはその旨とその理由)を面接指導を行った医師に報告
面接指導の流れについてそれぞれ詳しく見ていきます。
①高ストレス者(面接指導対象者)を実施者が確認し、面接指導の案内を送る
高ストレス者判定の基準等についてはストレスチェック実施準備段階において、実施者の助言や衛生委員会での意見を踏まえて予め決めておきます。
高ストレス者判定の基準についてはこちらの記事で詳しく説明しています。
実施者は、高ストレス者(面接指導対象者)を確認し、実施者から直接本人に通知します。
②面接指導申込者を確認し、面接指導の日時・場所を調整する
面接指導対象者が決定した後、面接指導の日時や場所等を調整します。
面接指導の申出方法
労働者からの面接指導の申出は、電子メールや書面等で行います。事業者はその記録を5年間残すことが求められています。
面接指導の実施時期
面接指導は申出があってから1ヶ月以内に実施する必要があります。
面接指導の担当者
高ストレス者の面接指導を担当することができるのは、医師です。事業場の産業医や産業保健活動に従事している日頃から社内の状況を把握できる医師が厚労省より推奨されています。
やむを得ない理由で面接指導を担当する医師を外部委託する場合も、産業医資格のある医師に委託することが望ましいとされています。
面接指導では精神疾患等の診断や治療を行うものではなく、精神科医や心療内科医が必ずしも面接指導を行う必要はありませが、メンタルヘルスに関する知識や技術をもっている医師が担当することが推奨されています。
面接指導はオンラインでも可能
面接指導については当初は原則対面とされていましたが、2020年11月「労働安全衛生法」の改正により、面接指導について「原則対面」が削除されオンラインによる面談がみとめられています。
ただし、いくつか条件が規定されていますので下記を確認ください。
(参照:『情報通信機器を用いた面接指導の実施について』厚生労働省)
③医師による面接指導の実施と事後措置に関する意見書の提出
面接指導ではストレスチェックの結果の内容に加えて、勤務状況、心理的な負担の状況、そのほかの心身の状況等について確認し、医学上の指導を行うとともに事業者に対して職場環境改善に関する意見書を記載します。
主に確認する内容
勤務状況について
ストレスの要因なりうる職場環境や人間関係、支援の状況について確認します。
心理的な負担の状況について
ストレスチェックの結果を記入するとともに、医学的所見に関する特記事項として、
抑うつ症状を始め医学的な対応を要すると思われる症状、所見などを記載します。
その他の心身の状況の確認
現在のストレス関連と思われる身体症状、精神症状の確認を行い記載します。
本人への指導する内容
面接指導において医師は、ストレス対処技術、気付きとセルフケア等の医学上の指導を行います。必要に応じ、専門機関の受診の勧奨等を行う場合があります。
④事業者は面接指導の結果の報告を受け、必要に応じ就業上の措置を講じる
面接指導の結果、就業面での配慮や職場環境改善等が必要と医師が判断した場合には、労働時間に関することがら、労働時間以外のことがら(仕事への適性、作業環境、人間関係など)に関して意見を記します。そして、職場環境の改善に関する意見を記載します。
事業者が意見を聞く時期は、面接指導を実施した後、遅くとも1ヶ月以内であることが推奨されています。しかし、労働者のストレスや健康状態が緊急を要する場合、速やかに意見聴取が行われる必要があります。
職場環境改善に関する事後措置の実施においては、人事労務担当者や現場の管理監督者と連携して対応することが大切です。また上司によるパワーハラスメントなど職場の人間関係が問題となる場合も多く、情報管理等も含めて、慎重な対応が求められます。
高ストレス者を放置した場合の企業の責任
2017年発表の厚生労働省『ストレスチェック制度の実施状況 』によれば、ストレスチェックを受けた労働者のうち、医師による面接指導を受けた労働者は0.6%という結果があります。
高ストレス者となるのは全体の10%であると考えると、面接指導を希望する労働者は極めて少ないと考えられます。
高ストレス者で医師が面接指導が必要と判定した労働者から面接指導の申出があった場合は、企業は面接指導を実施する義務があります。一方、高ストレス者(面接指導対象者)においては、本来この制度の趣旨である職場環境改善をはたすためには面接指導を受けていただくべきなのですが、面接指導を受けなければならないという義務はありません。
しかし、企業側は希望がないからといって高ストレス者に対して適切な対応を講じなければ、安全配慮義務違反とみなされる場合があります。
面接指導の申出がない場合は、面接指導を受けるよう促すため、申出の勧奨を行います。また相談の窓口等の情報提供を行い、日常的に労働者が相談しやすい環境を整えることが重要です。
おわりに
ストレスチェックの面接指導は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぎ、働きやすい環境づくりのためにも重要な機会です。面接指導後、職場環境改善等の有効な事後措置に繋げられるよう取り組むことが大切です。
労働者の健康増進と働きやすい職場環境つくりは結果的に事業所の業績向上につながります。
(参照:厚生労働省『ストレスチェック指針』)