マスクを外すのが怖い・・・心理的な原因と対処法を医師が解説

マスクを外すのが怖い・・・心理的な原因と対処法を医師が解説 メンタルヘルス

2020年、新型コロナウイルス感染症対策のため、マスクを着用するのが日常化して3年ほど経過しました。 

政府は、今年3月13日以降のマスク着用については、今後は個人の判断に委ねるという方針を発表し、マスクを外すという雰囲気が高まりつつあります。 

厚労省マスクポスター

画像引用:厚生労働省

 一方、「マスクを外すのが怖い」「素顔を知られるのは恥ずかしい」というように、マスクを外すことへの抵抗を感じる方は少なくないようです。 

  2022年5月にマスク着用に関する新しい基準が発表され、屋外では「身体的距離が確保出来ず会話が発生する場合を除き」、また、屋内においても「2メートル以上の距離を確保でき、会話量が少ない場合」は、マスク着用は必要ないとされましたが、多くの方は屋内外問わずマスク着用されていたのではないでしょうか。 

今回は、マスクを外すのが怖いと感じることについて、心理的な原因と対処法を中心にお伝えします。 

マスクの着用は新型コロナウイルス対策以外にも、その他の感染症予防、また花粉やPM2.5等の吸入を減らす効果も期待でき、この記事は、マスクを外すことを推奨するものではありません。また、適切なマスク着用への配慮を否定するものではありません。 

「マスクを外すのが怖い」その背後にある心理とは?

見た目のコンプレックスを隠したい

程度の差はあれど容姿にコンプレックスを抱えている方は少なからずいらっしゃるでしょう。 

例えもともとはそれほど気にしていなかったコンプレックスであったとしても日常的にマスクを着用してそれを隠してみると、マスクなしの状態より自信を持って人と接することができていたかもしれません。そうすると小さなコンプレックスのはずが、マスクを外して人前に出ることに対しての大きな抵抗となり、怖いとも感じることがあるでしょう。 

素顔を見せるのが恥ずかしい

長いマスク生活で、会社や学校等でもお互い素顔を知らないまま過ごしてきたという方も少なくないでしょう。 

マスク姿から、いざ素顔を見せるとなると恥ずかしさや緊張が伴うこともあります。 

素顔を見せた時に、周囲から「思っていたイメージと違う」と思われることを恐れることもあるかもしれません。 

コミュニケーションに関する不安

マスクを着用することで口元や頬の表情が隠れ他人に表情を見られにくい状態、つまりは感情を知られにくい状態となります 

マスクを外すと、表情が露わとなるため抵抗感を持つ方が少なくないようです。 

(ただし日本人は元来感情を読み取る際に目元を重視する傾向があるためか、悲しみや軽蔑以外の感情についてはマスク着用の有無で表情認識の正答率に明らかな差はないといった結果が得られた研究もあるようです。) 

また、もともとコミュニケーションが苦手な方や、今はあまり他人と接触したくない気分、といった場合にもマスクは効果的であると思いますので、マスクのない生活ではコミュニケーションがより難しくなったり、他人との関係性がこじれてしまったりと、困難な状況を生じる可能性もあるでしょう。 

周囲の状況による影響

マスクをつけること、外すことについて、周囲の状況による影響も大きいでしょう。 

多くの人がマスクをつけている状況では、マスクを外すことによって周囲から浮いてしまうことを恐れることもあります。また、感染症予防の観点から、自分がマスクを外すことによって他人に迷惑をかけるのではないかという不安も出てきます。 

一方、周囲がマスクを外している状況においてマスク着用する場合、何故マスクを外さないのか等周囲からどのように思われるか気になることもあると思います。 

マスクを外すのが怖いときの対処法

この約3年間、当たり前に着用していたマスクを外す場合、恐怖心や抵抗感が出てくるのはおかしなことではありません。また、マスクは「してはいけない」と言われるようなものでもありません。

ただ、感染症予防等の本来の目的とは異なる用途でマスクを手放せないために社会生活やコミュニケーションに不都合を生じている場合は問題と言えるでしょう。これを乗り越えるためにはどうすればよいでしょうか? 

※感染予防の観点から着用を推奨される場面や注意点についても改めて確認してみてください。 マスクの着用について|厚生労働省 (mhlw.go.jp) 

無理をせずに徐々に慣れる

マスクを外すのが怖い場合は、無理をしてすぐに外すことは避けましょう。無理をしすぎると不安が強くなり逆効果となる可能性もありますので、徐々に慣れていくことが大切です。

まずは自宅や身近な場所で短時間から始め、少しずつ外す時間を延ばし外す場所・場面増やしいきましょう半年以上かかるものとしてゆっくりと自分の出来るペースで進めるのが良いでしょう。 

呼吸法でリラックスする

マスクが義務化された当初からマスク着用による浅い呼吸が問題視されていました。マスクを外すとで呼吸がしやすくなるため、自然と深い呼吸が増えるのが一般的です

しかし、久しぶりにマスクを外す場合は、緊張してむしろ浅い呼吸になることもあります。マスクを外せたときは、まずゆっくりと呼吸することを意識し、呼吸を整えることでリラックスしましょう。 

表情を作る練習をする

長期間のマスク生活によって顔の筋肉を動かすことも減り、しわやたるみが気になるようになったり、自分の表情に違和感を抱いたりする場合もあるかと思います。 

筋肉は動かさなければ衰えるのが当然です。

自室などマスクを外せる場面で大げさに色々な表情を作ったり発声したりして顔の筋肉を動かしてみましょう。楽しい気持ちになる・顔色が良くなる等の効果も期待できます。 

専門家に相談する

コロナ禍以前から、様々な理由でマスクを手放せない方はおられました。ただこの3年間で国民の大多数が否応なくマスクを着用することになり、マスク着用によって安心感を得、マスクのメリットと捉えるようになった方が多くおられるのだと思います。 

マスクを外すことが極端に怖い・不安な場合、不安や恐怖に関連する疾患が影響している可能性もあります。 

深刻な心理的な問題を抱えている場合は、精神科医や心理カウンセラーなどの専門家に相談することをおすすめします。 

誰かに話を聞いてもらったり、専門家のアドバイスを受けることで、自分自身を客観的に見ることができるようになり、解決策を見つけやすくなります。 

おわりに

マスク着用は、私たちの生活において習慣となりました。習慣を変えることには時間がかかることを忘れずに、自分自身に対する優しさを持ち続けることが大切です。 

無理に周囲にあわせて、急いでマスクのない生活に戻す必要もありません。一歩ずつ前進し、自分自身のペースで進んでいきましょう 

近年のSNSや画像加工の目覚ましい進歩は、ルッキズム(外見至上主義)を助長させてしまっている一因と考えられます。 

自分のみならず他人に対しても、こうありたい・こうあるべきだという外見上の基準を持ち、そのイメージに近づくためにマスクや写真の加工を手放せない場合があり、またその基準に合わないからと偏見を持ったり差別をしたりといった問題も生じているのではないかと思います。 

人によって、国によって、文化によって、または時代によって、様々な思想や価値観があることを知り、見た目のみにとらわれるのではなく本質を見極める目を育て、自分も他人も尊重できる社会になることを願っています。 

大人の考えや価値観は子どもにも容易に伝わります。一人ひとりが其々の価値観を育てやすく幸せを感じやすいような世の中へ向かう一歩として、今回はマスク着用に関する自分や周囲の気持ちについて考えてみてもらえれば幸いです。 

(参照)
マスクの着用について(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kansentaisaku_00001.html
見た目が9割?SDGsに関わるルッキズム「外見至上主義」にある社会問題(GREEN NOTE)
https://green-note.life/4343/
新型コロナの流行が落ち着いても「学校でマスク外すのが怖い」 本紙への投稿に共感する高校生たち(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/202803
もはやマスクは外せない?…その下にある心理とは(NHK)
https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20221007a.html

記事監修
渡辺 洋一郎(弊社代表取締役)

精神科医専門医・日本医師会認定産業医。
川崎医科大学卒、1988年渡辺クリニック(2018年改称)を開設。
その後、厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の在り方検討委員会」委員、内閣府「自殺対策官民連携協働会議」委員、公益財団法人日本精神神経科診療所協会会長など歴任。
現在、医療法人メディカルメンタルケア横山・渡辺クリニック名誉院長、大阪大学医学部神経科精神科非常勤講師、一般社団法人日本精神科産業医協会共同代表理事ほか。
ストレスチェック法制化においても、厚生労働省「ストレスチェック制度に関する検討会」「ストレスチェック項目に関する専門検討会」「ストレスチェック制度マニュアル作成委員会」などの委員を務める。

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