感情労働とは?ストレスを抱えやすい職種・対策をわかりやすく解説

感情労働とは?ストレスを抱えやすい職種・対策をわかりやすく解説 メンタルヘルス用語集

感情労働とは、肉体労働、頭脳労働に並ぶ労働のカテゴリーです。具体的な職種としては、看護師や介護士、教師や保育士、受付やコールセンター、販売員やサービス業などが挙げられます。しかし感情労働には多くのストレスが伴います。

今回は、感情労働の概要と、ストレスを抱えやすい職種の例、そしてそれに対する効果的な対策についてわかりやすく解説していきます。

感情労働とは?肉体労働・頭脳労働との違い

感情労働とは、企業の顧客である消費者に対して、心理的にポジティブな働きかけをして報酬を得るための労働です。

感情が労働内容に及ぼす影響が大きく、かつ適切・不適切な感情が明確にされており、会社からの管理・指導の下で、本来の感情を抑えて業務を遂行することが求められます。

この概念は、アメリカの社会学者であるA・R・ホックシールド氏によって労働の分類のひとつとして提唱されたものであり、現代においては、多くの様々な職業・職種が感情労働を必要とされています。

肉体労働・頭脳労働との違い

肉体労働、頭脳労働、感情労働の違いは、何を主に使って報酬を得るかにあります。

「肉体労働」は身体を使って報酬を得る労働であり、「頭脳労働」は頭脳を使い、アイデアや企画、提案などを生み出し報酬を得る労働のことを指します。

「感情労働」は、本来の自然な感情を抑えコントロールすることで報酬を得る労働であり、それぞれの職種や職場に相応しいとされる感情を商品価値として提供します。

感情労働が必要とされる職種・業界

感情労働が求められる職業には3つの特徴があります。

  1. 対面あるいは声による顧客への対応がある
  2. 他人の中に何らかの感情変化を起こさなければならない
  3. 雇用されており、ふさわしいとされる感情が雇用者に規定されている

対人コミュニケーションが主な業務となる職種は、そのほとんどが感情労働に該当し、具体的には感情労働が必要な職種としては、次のような職業が挙げられます。 

看護師・介護士

患者や利用者の心身の状態に応じて、安心感や信頼感を与えるために、笑顔や声かけ、優しい態度などを必要とします。
また、治療を行うために、相手との信頼関係の構築が必要となります。

コールセンターのオペレーター

顧客の問い合わせやクレームに対応する際、丁寧さや親切さを示すために、笑顔や声のトーン、言葉遣いなどを必要とします。

販売員やサービス業

来客や顧客に対して、顧客のニーズにこたえ、商品やサービスの魅力を伝えるために、明るい表情や声、積極的な態度などを必要とします。

教員・保育士

生徒や園児の成長や学習を促すために、興味や関心をひくよう、楽しそうな表情や声、ユーモアなどを必要とします。

客室乗務員

機内での安全や快適さを確保するために、明るい表情や声、積極的な態度などを必要とします。

感情労働におけるストレスとは?

感情労働は、感情の抑制や不一致が原因で様々なストレスを引き起こすことがあります。

エネルギーの消耗

感情労働は自らのエネルギーを抑制し、求められる感情を表現することを求められます。表層演技と深層演技という心の働きが関与します。この二つの要素は、感情を制御するためのエネルギーを消耗させることがあります。

表層演技

表層演技とは、自分の本当の感情とは違う感情を表現することです。

例えば、怒っている顧客に対して、笑顔で対応することや、退屈している上司に対して、興味を持って聞くことなどが表層演技です。

表層演技は、自分の感情を抑え込むことでストレスを引き起こす可能性があり、本来の感情とのギャップに葛藤が生じやすくなります。 

深層演技

深層演技とは、自分の感情を仕事で求められる感情に合わせることです。

例えば、怒っている顧客に対して、その気持ちを理解しようとすることや、退屈している上司に対して、何か学べることがあると思うことなどが深層演技です。

深層演技は、自分の感情を変えることでストレスを軽減する可能性がある一方で、感情を抑制することから無意識のうちにストレスが溜まることにも繋がります。

適切に評価されない

感情労働は、人と直接コミュニケーションをとる職業において重要な能力ですが、個人の性格や特徴によるもと捉えられることが多く、職業的能力として十分に認識されず、報酬に反映されないことが問題視されています。

このように感情労働には、適切に評価されず目に見えない負担やストレスが伴うこともあります。

バーンアウト(燃え尽き症候群)

感情労働は、自分の本当の感情と仕事上求められる感情とのギャップにより、ストレスを生みます。このストレスは、長期的に蓄積されると、仕事に対する情熱やモチベーションが失われ、疲労や無気力、無関心、無力感などの症状が現れるというようなバーンアウトの原因となります。

感情労働をする職種では、業務に忠実で、情熱や信念をもって取り組む人ほど、許容値以上のストレスを抱えてしまう傾向があります。また、感情労働は、目に見えない労働であるため、その重要性や貢献度が十分に認められないことも、バーンアウトのリスクを高めます。

感情労働について企業が行うべき対策やケア

感情労働によるストレスを軽減するためには、企業は対策を講じる必要があります。

セルフケア研修の実施

感情労働は無自覚のうちにストレスを抱えてしまうこともあるため、従業員自身のストレスを理解を促すような研修等を実施することが大切です。

セルフケア研修では、感情労働の定義や特徴、ストレスの原因や症状、ストレス対処法などを教えることで、従業員の自己理解や日常的なセルフケアを促します。

定期的な面談やコミュニケーションの実施

感情労働者は、自分の本音を話す機会が少なく、孤立感や不満感を抱きやすいです。そのため、上司や同僚と定期的に面談やコミュニケーションを行うことで、従業員のありのままの感情を聞いたり、共感したり、励ましたりすることが大切です。

面談やコミュニケーションは、従業員の心理的安全性や信頼関係を高めることで、感情労働によるストレスを軽減する効果があります。

産業医との適切な連携

感情労働者は、ストレスが長期化するとメンタルヘルスの問題を発症するリスクが高まります。
そのため、企業は産業医と適切に連携し、従業員のメンタルヘルス状態を把握し、必要な場合は適切な治療や休職などの支援を行う必要があります。

産業医との連携は、従業員のメンタルヘルス問題を早期発見し、重篤化を防ぐことで、従業員の健康と企業の生産性を守るために重要です。

相談窓口・サポート体制の整備

従業員がストレスを抱えた際に、一人で抱え込まず誰かに話ができるように、相談窓口やメンタルヘルスサポートを設けることが、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことにとって有効的です。

ストレスチェックの活用

ストレスチェックは、従業員自らがストレス状況を把握することだけではなく、集団分析により職場における課題を特定し、労働環境の改善など適切な対策を行うことが可能です。

感情労働の従事する労働者のストレスを早期に発見し、適切な対策を講じることで、労働者の心身の健康を守り、生産性や労働満足度の向上につながることが期待できます。

おわりに

感情労働は、ストレスや負担を伴う一方で、肯定的な影響も持っています。

顧客など対応した方から感謝や喜びの言葉や反応を受け取ることで自己肯定感やモチベーションが高まり、組織にとっても業績や生産性の向上など、良い影響をもたらします。

企業としては従業員への適切なサポートや心のケアを行いながら、感情労働のポジティブな影響を最大限に引き出すことが重要です。


ストレスチェック8年間の経験と40万人の実績がある日本CHRコンサルティングでは、厚労省ストレスチェック制定委員メンバーの精神科産業医が運用を整備し、300社以上のストレスチェック支援経験のある組織コンサルタントが職場環境改善をサポートします。全国対応しております。お気軽にお問い合わせ下さい。

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記事監修
渡辺 洋一郎(弊社代表取締役)

精神科医専門医・日本医師会認定産業医。
川崎医科大学卒、1988年渡辺クリニック(2018年改称)を開設。
その後、厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の在り方検討委員会」委員、内閣府「自殺対策官民連携協働会議」委員、公益財団法人日本精神神経科診療所協会会長など歴任。
現在、医療法人メディカルメンタルケア横山・渡辺クリニック名誉院長、大阪大学医学部神経科精神科非常勤講師、一般社団法人日本精神科産業医協会共同代表理事ほか。
ストレスチェック法制化においても、厚生労働省「ストレスチェック制度に関する検討会」「ストレスチェック項目に関する専門検討会」「ストレスチェック制度マニュアル作成委員会」などの委員を務める。

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