メンタルヘルスとは?具体的な症状と気をつけるべき2つのサイン

メンタルヘルスとは?具体的な症状と気をつけるべき2つのサイン メンタルヘルス

メンタルヘルスとは、心の健康状態のことを意味しています。

日本において心の健康バランスを崩し通院する方は、約420万人にも上り、生涯を通じて5人に1人が心の病にかかるといわれています。

メンタルヘルス不調は誰にでも起こる可能性があり、私たちに身近なテーマとなっています。

しかし、メンタルヘルスは症状として分かりづらく、他人だけではなくメンタルヘルス不調に陥っている本人もわからないまま過ごし、気づけば「うつ病」などの精神疾患を発症しているということもあります。

今回は、メンタルヘルスとは何か?を確認し、メンタルヘルス不調に陥った時の具体的な症状や、気をつけるべき2つのサインについて解説します。

メンタルヘルスとは?

世界保健機関(WHO)はメンタルヘルスを次のように定義づけています。

メンタルヘルスとは、人が自身の能力を発揮し、日常生活におけるストレスに対処でき、生産的に働くことができ、かつ地域に貢献できるような満たされた状態(a state of well-being)である。

WHOが定義づけるメンタルヘルスは、単に心身共に健康な状態を示すだけではなく、自己の可能性を実現し、職場や地域などのコミュニティに貢献できるほど十分に満たされた健康状態を示しています。

仕事などの職業生活のみならず、生きていくうえで心の健康状態、すなわちメンタルヘルスはとても重要です。

しかし、心の健康状態は自分でも把握することが難しいことがあります。自分や周りの変化にも気づきやすくなるためには、メンタルヘルス不調の代表的な兆候や症状を理解することが大切です。

具体的な症状や出来事メンタルヘルスを確認する

私たちは仕事や家庭など日常生活で、様々なストレスを感じています。

ひとつひとつは軽いストレスでも、発散することなく溜め込んでしまうと心身に様々な影響を及ぼすことになります。

メンタルヘルス不調を予防するためにも、ストレスサインに気づくことが大切です。メンタルヘルス不調としてのストレスサインは主に次のようなものがあります。

このような症状が続く場合は、専門家(精神科、心療内科)に早めに相談することをおすすめします。

ストレスサイン

こころの面

  • 悲しみ、憂うつ感
  • 不安感、イライラ感、緊張感
  • 無力感、やる気が出ない

体の面

  • 食欲がなくなる、やせてきた
  • 寝つきが悪い、朝早く目が覚める
  • 動悸がする、血圧が上がる、手や足の裏に汗をかく

行動の面

  • 消極的になる、周囲との交流をさけるようになる
  • 飲酒、喫煙量がふえる
  • 身だしなみがだらしなくなる、落ち着きがない

メンタルヘルス不調を引き起こしやすい出来事

メンタルヘルス不調は、出来事がきっかけとなり引き起こすことも多々あります。このような出来事があり、気になる場合は早めに身近な人やカウンセラー等に相談することをおすすめします。

生活上の出来事

私たちの心の健康は、日々の生活におけるさまざまな出来事の影響を受けます。特に、ストレスや不安を引き起こしやすい出来事に直面した際には、メンタルヘルスのバランスが崩れやすくなります。以下に、メンタルヘルス不調の原因となりやすい生活上の出来事を詳しく解説します。

自分や家族の誰かが病気・怪我・災害などの被災体験をした

自分自身が大きな病気にかかったり、家族が重篤な病に陥ったりすることは、精神的な負担が非常に大きくなります。病気の治療には長期間にわたる通院や入院が必要になることがあり、経済的な負担や介護の必要性が生じることもあります。特に、家族の誰かが慢性的な疾患を抱えている場合、介護者の精神的・肉体的疲労が蓄積し、うつ症状や不安障害を引き起こすことがあります。

また、交通事故や労働災害などによる大きな怪我をした場合も、身体的なダメージだけでなく、精神的なショックやトラウマを抱えることがあります。リハビリの期間が長引くことで、社会生活の制約を感じることもあり、孤独感や無力感が強まることがあります。

さらに、自然災害(地震・台風・洪水・火災など)に遭遇すると、住居の損壊や避難生活を余儀なくされ、生活の基盤そのものが崩れる可能性があります。災害の体験は強いストレスとなり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を引き起こす要因にもなります。

子どもの進学、夫婦や親子の不和など、家庭内の人間関係に問題があった

家庭は、本来安心できる場所であるべきですが、家庭内の人間関係が悪化すると大きなストレス源になります。例えば、子どもの進学や受験期には、親もプレッシャーを感じやすく、子どもとの関係がギクシャクすることがあります。期待と現実のギャップによる失望感や、子どもの成績や進路に対する過度な心配が、家庭内の緊張を高める原因になります。

夫婦関係の悪化もメンタルヘルスに大きく影響します。パートナーとの価値観の違い、生活習慣のすれ違い、不倫や浮気問題、離婚の話し合いなどが続くと、慢性的なストレス状態になり、うつ病や不安障害のリスクが高まります。また、DV(ドメスティックバイオレンス)などが関係している場合は、心的外傷が深刻化し、長期的な心理的ダメージを受けることもあります。

親子関係の問題も、精神的な負担を増大させます。子どもの反抗期や親の介護問題など、世代間の価値観の違いや役割の変化が原因で、親子関係が悪化することがあります。特に、親の高齢化に伴う介護問題は、働きながら介護をしなければならない「介護と仕事の両立」という難題を抱えることになり、心身の疲労が蓄積していきます。

ローンや借金、収入の減少などの金銭問題があった

経済的な問題は、生活全般に大きな影響を及ぼし、メンタルヘルスの悪化を招く代表的な要因の一つです。住宅ローンや自動車ローン、学費の負担が重くのしかかると、将来への不安が増し、精神的な余裕がなくなることがあります。

また、会社の倒産やリストラ、フリーランスの仕事減少などによる収入の減少は、生活基盤を直撃し、自己肯定感の低下につながることがあります。特に、突然の解雇や転職活動の長期化は、大きな心理的ストレスとなります。

さらに、借金が膨らみ返済が困難になると、精神的な追い詰められ方が深刻化します。支払いの催促や取り立ての電話が頻繁にかかってくると、不安や恐怖が募り、うつ症状を発症するケースもあります。

引越しや騒音などの住環境の変化があった

住環境の変化は、私たちの心理状態に大きな影響を与えます。引越しは、新たな環境に適応する必要があり、特に転勤や転校を伴う場合は、職場や学校での人間関係の構築も必要になります。こうした変化がストレスとなり、不眠や不安を引き起こすことがあります。

また、住環境の問題として、近隣住民とのトラブルや騒音問題が挙げられます。例えば、隣人や上階の住民の騒音がひどい場合、リラックスできるはずの自宅がストレスの原因になってしまいます。特に、夜間の騒音が続くと、睡眠不足となり、精神的に不安定になりやすくなります。

その他にも、住宅の老朽化や設備の不具合(雨漏り、断熱不足、害虫発生など)が続くと、快適な生活ができず、ストレスの蓄積につながります。これらの問題を解決しようとする際の交渉や修繕費用の負担も、新たな精神的負担となることがあります。

職場での出来事

職場は、多くの人にとって1日の大半を過ごす場所であり、そこでの出来事はメンタルヘルスに大きな影響を及ぼします。仕事の内容や人間関係、環境の変化によってストレスが増加し、それが蓄積するとメンタルヘルスの不調を引き起こす原因になります。ここでは、職場での出来事がどのように精神的な負担となるのかについて詳しく説明します。

仕事での失敗やミスがあり、責任を問われた

仕事においてミスや失敗は誰にでも起こることですが、その影響の大きさによっては強い精神的ストレスとなることがあります。特に、納期を守れなかった、取引先との交渉に失敗した、大きな金銭的損害を出してしまったといった重大なミスは、職場での信頼を失うだけでなく、自己肯定感の低下にもつながります。

また、ミスをした際に厳しく叱責されたり、周囲から冷たい目で見られたりすると、職場に居づらさを感じ、強いストレスや不安を抱えることがあります。場合によっては、責任を過度に問われることで、うつ病や適応障害を発症するケースもあります。

さらに、ミスが原因で社内での評価が下がったり、昇進のチャンスを逃したりすると、モチベーションの低下につながるだけでなく、自己効力感(自分には仕事をやり遂げる力があるという感覚)が低下し、仕事への意欲を失ってしまうこともあります。

 仕事の量や質、勤務時間などが変化した

仕事量や業務内容が急激に変化すると、それに適応するための負担が大きくなります。例えば、突然の業務増加により長時間労働を余儀なくされたり、納期が短縮されたりすると、肉体的な疲労だけでなく、精神的なプレッシャーも増します。特に、慢性的な長時間労働が続くと、過労によるメンタルヘルスの不調が起こりやすくなります。

一方で、仕事量が減ったり、単調な業務ばかりを任されたりすることも、ストレスの原因となります。自分のスキルや能力が評価されていないと感じると、自己肯定感が低下し、無気力や抑うつ状態に陥ることがあります。また、過小評価されることで、将来に対する不安が増し、職場への不満が募ることもあります。

さらに、テレワークやフレックスタイム制度の導入などにより、勤務時間や働き方が変化すると、ワークライフバランスの乱れが生じることがあります。仕事とプライベートの境界が曖昧になることで、常に仕事のことを考えてしまい、オンとオフの切り替えが難しくなることもストレスの要因になります。

上司や同僚、部下などと人間関係でのトラブルがあった

職場での人間関係は、仕事のモチベーションや精神的な健康に大きな影響を与えます。上司との関係が悪いと、指示を受けるたびにストレスを感じたり、理不尽な要求をされたりすることで、精神的な負担が増します。特に、パワハラ(パワーハラスメント)が職場に存在すると、常に緊張状態に置かれ、強い不安や恐怖を感じるようになります。

また、同僚との関係がうまくいかない場合も、孤立感や職場での居心地の悪さを感じることがあります。例えば、派閥争いや社内政治に巻き込まれたり、陰口を言われたりすると、精神的に疲弊しやすくなります。

さらに、部下との関係もストレスの原因になることがあります。部下の指導がうまくいかない、部下からの信頼を得られない、あるいは部下が問題行動を起こすといった状況では、上司としての責任を感じることで精神的な負担が増します。特に、新任の管理職はプレッシャーを強く感じやすく、ストレスが蓄積しやすい傾向があります。

昇進や配置転換、転勤など役割等の変化があった

昇進や異動、転勤といった職場での変化は、一見するとキャリアアップの機会であり、ポジティブなものに思えます。しかし、環境の変化は必ずしも良い影響ばかりではなく、新たな責任や業務内容の変化に適応するためのストレスが生じることがあります。

例えば、昇進したことで管理職になり、部下の指導や評価といった新しい役割が増えると、今までの仕事とは異なるプレッシャーを感じることがあります。特に、リーダーシップを求められる立場になると、部下のマネジメントや意思決定の責任が重くなり、ストレスを感じやすくなります。

また、部署の異動により、これまでの人間関係がリセットされ、新しい職場での人間関係を一から築く必要が生じることもストレスの要因になります。転勤の場合は、住環境の変化も伴うため、慣れない環境での生活や単身赴任による家族との距離の問題など、さまざまな心理的負担が加わります。

さらに、期待されていた昇進が見送られたり、望まない異動を命じられたりした場合には、仕事への意欲が低下し、自己肯定感の低下につながることもあります。このような状況では、「なぜ自分が選ばれなかったのか」と自責の念に駆られたり、会社への不満が募ったりすることで、精神的なストレスが蓄積しやすくなります。

このように、職場での出来事がメンタルヘルスに与える影響は非常に大きく、ストレスが長期間続くと、うつ病や不安障害、適応障害などのメンタルヘルス不調につながる可能性があります。ストレスを軽減するためには、適切な休息を取ることや、信頼できる同僚や家族と相談することが重要です。

職場のストレス解消法|原因から適切に対処する方法を解説
職場の人間関係や業務内容など、仕事でストレスを抱えてしまい、休みの日も仕事のことで頭がいっぱいになってしまうことはないでしょうか。 ストレス解消が大切と言われても、自分にあった解消法が見つからないこともあるかと思います。 特に職場のスト...

しかし、気分転換等のセルフケアでは解決できず医療レベルでの対処が必要な場合があります。次に、急いで専門家(精神科・心療内科)に相談すべき2つのサインについてお伝えします。

メンタルヘルスで気をつけるべき2つのサイン

私たちは日々の生活の中で、仕事や人間関係、家庭の問題など、さまざまなストレスにさらされています。しかし、ストレスが一定のレベルを超えると、心身に影響を及ぼし、メンタルヘルスの不調を引き起こすことがあります。特に、以下の2つのサインが現れた場合は、注意が必要です。

■疲れているのに眠れない
■好きなことが楽しめない

疲れているのに眠れない

心も体も疲れているはずなのに、なかなか眠れない、あるいは眠りが浅く何度も目が覚めてしまうという症状は、メンタルヘルス不調の重要なサインの一つです。

通常、疲れた状態であれば、横になると自然に眠りにつくものですが、ストレスや不安が強いと脳が過剰に活動し続け、リラックスできなくなります。その結果、寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目が覚めたりする「不眠症」の状態に陥ることがあります。

また、朝早く目が覚めてしまい、そこから眠れなくなる「早朝覚醒」も、うつ病や不安障害の初期症状として現れることがあります。こうした睡眠の問題が続くと、体力や集中力が低下し、さらにストレスが増加する悪循環に陥ってしまうため、早めの対処が重要です。

好きなことが楽しめない

以前は夢中になって楽しんでいた趣味や好きなことに対して、興味や意欲を持てなくなるのも、メンタルヘルスが不調に陥っているサインの一つです。

例えば、映画鑑賞や音楽を聴くことが好きだったのに「何を観ても、何を聴いても心が動かない」と感じる、友人との会話や外出が楽しくなくなる、食事をしても味気なく感じるなどの変化が現れることがあります。

これは、脳の「快楽を感じる機能」が低下している状態であり、うつ病の初期症状としてもよく見られます。特に、「何をしても楽しくない」「毎日が単調でつまらない」と感じる状態が続く場合は、ストレスが限界に近づいている可能性があります。

好きなことに対して楽しめない状態が長引く場合、それは単なる気分の浮き沈みではなく、心のエネルギーが枯渇しているサインかもしれません。その場合は、無理をせず、自分の心の状態を見つめ直す時間を作ることが大切です。

これらの症状が続く場合は専門機関へ相談を

「疲れているのに眠れない」「好きなことが楽しめない」といった症状が ほぼ1日中、毎日、1週間以上続く 場合は、セルフケアでは解決できる範囲を超えている可能性があります。このような状態を放置すると、さらに症状が悪化し、日常生活や仕事にも影響を及ぼすことがあります。そのためできるだけ早く医療機関(心療内科や精神科など)やカウンセリング機関に相談することをおすすめします。

 
メンタルヘルスの不調は、早めに対処することで回復しやすくなります。「まだ大丈夫」と我慢しすぎず、専門家のアドバイスを受けることが、心の健康を守る第一歩です。

おわりに

今回はメンタルヘルスについてお伝えしました。心と身体は密接に関係しており、切り離して考えるのではなく、心身合わせて見ていくことが大切です。

腹痛や頭痛など、身体の不調の原因はじつは心の不調にある場合は多々あります。またその逆に、身体の不調が続き、それが心を疲弊させ、うつ病などの精神疾患を引き起こすことがあります。

日頃から自分自身の健康状況を確認し、「以前はこんなことはなかったのに」「いつもと違う」など感じることがあれば、医師に相談することをおすすめします。

個人向け相談窓口(厚生労働省)

厚生労働省による「みんなのメンタルヘルス」では、こころの健康や病気、支援やサービス等、メンタルヘルス情報のポータルサイトです。相談窓口の案内等もあります。

ご案内
「みんなのメンタルヘルス総合サイト」の情報は、令和5年4月より国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」に掲載しています。
相談窓口案内|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
「こころの耳」(厚生労働省サイト)では、仕事やキャリア、こころの健康など、様々な悩みに関する専門の相談機関・相談窓口を紹介しています。

参照
『実践!ストレスマネージメント』 (渡辺洋一郎)
こころの耳「ストレス軽減ノウハウ」(厚生労働省)

EAP、ストレスチェック、メンタルに強い産業医の選任など
まずはお気軽にご相談ください

お気軽にお問い合わせください

ご利用料金等の資料はこちらから

記事監修

精神科医専門医・日本医師会認定産業医。
川崎医科大学卒、1988年渡辺クリニック(2018年改称)を開設。
その後、厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の在り方検討委員会」委員、内閣府「自殺対策官民連携協働会議」委員、公益財団法人日本精神神経科診療所協会会長など歴任。
現在、医療法人メディカルメンタルケア横山・渡辺クリニック名誉院長、大阪大学医学部神経科精神科非常勤講師、一般社団法人日本精神科産業医協会共同代表理事ほか。
ストレスチェック法制化においても、厚生労働省「ストレスチェック制度に関する検討会」「ストレスチェック項目に関する専門検討会」「ストレスチェック制度マニュアル作成委員会」などの委員を務める。

メンタルヘルス メンタルヘルス用語集 人事労務担当者向け
CHR発 well-being コラムWell be

(C) Japan Corporate Health Responsibility Consulting Co.,ltd All Rights Reserved.

タイトルとURLをコピーしました