メンタルヘルス不調による休職者への会社対応|復職支援の流れ

メンタルヘルス不調による休職者への会社対応|復職支援の流れ ラインケア

仕事や職業生活において、ストレスを強く感じることがあるという労働者の割合は約6割にものぼり、メンタルヘルス不調による休職や退職をした労働者は、あわせて1割程になるという調査結果があります。

このように近年メンタルヘルス不調が原因で休職するというのはそう珍しいことではなくなっています。休職者に対して企業はどのように対応したらよいのでしょうか?

今回は、メンタルヘルス不調による休職から復職準備までのポイントについてお伝えします。

企業にとって復職支援が重要な理由

うつ病などのメンタルヘルス不調は、再発することが多いため復職支援については衛生委員会等で内容やルールを整備しておくことが必要です。

調査研究によれば、うつ病で休職した社員のうち47.1%が5年以内に再発、再休職に至っています。また、休職期間は1回目の平均107日に対し、2回目は平均157日と1.5倍長くなっています。

この原因のひとつとして、休職・復職対応が適切でないことが挙げられています。休職が長引くほど、企業にとっての負担も大きくなるため、復職支援の整備は重要です。

休職前|療養に専念できるようにするための支援

休職が決定した従業員には、休業中の事務手続きや職場復帰の手順についての説明を行い、安心して休養に専念できるよう支援します。

社内への連絡方法

休職にあたり将来への不安や職場と切り離されることの孤独を感じる方は少なくありません。不安や悩みなどを相談できるよう社内で相談体制を整えたり、社外相談窓口などを設置し、休職中の連絡先を伝えます。その他、事務的な連絡が必要となった場合の連絡先も伝えます。

経済的不安の解消

安心して療養するためには、経済的な不安を解消することも重要です。傷病手当制度やその他の公的サービス等について案内し、必要ならば手続きを進めます。

休職のルールと復職支援について

就業規則等に基づく休職について、休職最長期間や復職が困難であった場合について等、規定内容について伝えます。休職のルールを伝えるだけではなく、復職支援についての大まかな流れを伝え職場復帰への不安を軽減することが大切です。

休職中|療養に専念してもらうために

休職中は会社のことは忘れて療養に専念してもらうことが重要です。

復職については本人の回復にあわせて焦らずゆっくり行い、主治医と相談しながら段階的に取り組むよう伝えます。

また会社側からの過度な接触は休職者のプレッシャーになることもあるため、休職者への連絡のタイミングや頻度、担当者は予め決めておきます。

復職準備|復職可否と職場復帰支援プラン

休職者から会社に職場復帰の意思が伝えられたら、復職のための準備を進めます。

主治医による職場復帰可能の判断

復職にあたり、主治医から職場復帰が可能という判断が記載された診断書の提出が必要です。その際、就業上の注意などがある場合は具体的な意見も記入してもらいます。

職場復帰の可否の判断

主治医による判断があったからといって、すぐに職場復帰を決定するのではなく、職場において業務ができるまで回復しているかどうか確認することが大切です。

職場復帰の可否については、休職者本人や主治医だけではなく、上司、産業医、人事担当者等からの意見を聞き、取るべき対応を確認しながら総合的に判断する必要があります。

特にメンタルヘルス不調の回復過程においては、調子がよい日、悪い日など波があることが多いため、復職の可否については、その波が大きく揺れることなく安定しているか見ていくことは重要です。

メンタルヘルス不調の要因が職場環境にある場合は、希望する復帰先や就業上の配慮、これまでの業務や職場との適合性や職場の人間関係等についても休職者本人から話を聞いていきます。

そのうえで、産業医をはじめとする事業場内産業保健スタッフ等が中心となって職場復帰の可否について判断を行います  。

職場復帰支援プランの作成

復職が可能と判断されたら、職場復帰に向けたプランを作成します。

職場復帰プランでは、いくつかの段階を設定し経過をみながら元の就業状態に戻していくようにします。

無理な復帰はメンタルヘルス不調の再発にも繋がることがあります。ゆっくり計画的に職場復帰を進めることが、長期的に安定して働くためにも重要であることを休職者本人や上司に説明し理解を促します。

職場復帰の具体的なプランは、産業保健スタッフを中心に十分な情報収集と評価を実施した上で、復職する労働者と管理監督者、人事労務管理スタッフを含めて十分に話し合いながら作成します。

職場復帰プランの主な内容 
●職場復帰日
復帰のタイミングは休職者本人の状態や職場の受け入れ準備等の両方を考慮の上決定します
●管理監督者による就業上の配慮
業務内容や業務量の変更、業務サポートの内容や方法、残業の禁止や時短勤務など段階的な就業上の配慮、治療上必要な配慮など
●人事労務管理上の対応
異動や配置転換の必要性、本人の病状や業務状況に応じたフレックスタイム制度など勤務制度の変更等について
●産業医等による医学的見地からみた意見
安全配慮義務に関する助言や職場復帰支援に関する意見
●フォローアップ
管理監督者や産業保健スタッフ等によるフォローアップの方法、就業制限等の見直しを行うタイミング、就業上の配慮や医学的観察が不要になる時期の見直し
●その他
試し出勤制度等の利用の検討、リワークなどの職場復帰サービス利用について

おわりに

メンタルヘルス不調による休職から復帰準備までのポイントについてお伝えしました。病気の再発、再休職とならないためには、無理なく段階的に職場復帰を進め、支援し続けることが大切です。

復職にあたっては本人だけではなく周りにも不安や負荷がかかることがあります。そのため会社として復職支援の体制を整えることが重要です。

(参考)
平成30年 労働安全衛生調査」(厚生労働省)

『職場復帰支援の手引き』(厚生労働省)
「こころの耳|職場復帰に際しての支援」(厚生労働省)

主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究


ストレスチェック8年間の経験と40万人の実績がある日本CHRコンサルティングでは、厚労省ストレスチェック制定委員メンバーの精神科産業医によるラインケア研修や、再発防止に配慮した休職・復職プログラム支援を提供しております。オンラインにて全国対応しております。お気軽にお問い合わせ下さい。

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記事監修

精神科医専門医・日本医師会認定産業医。
川崎医科大学卒、1988年渡辺クリニック(2018年改称)を開設。
その後、厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の在り方検討委員会」委員、内閣府「自殺対策官民連携協働会議」委員、公益財団法人日本精神神経科診療所協会会長など歴任。
現在、医療法人メディカルメンタルケア横山・渡辺クリニック名誉院長、大阪大学医学部神経科精神科非常勤講師、一般社団法人日本精神科産業医協会共同代表理事ほか。
ストレスチェック法制化においても、厚生労働省「ストレスチェック制度に関する検討会」「ストレスチェック項目に関する専門検討会」「ストレスチェック制度マニュアル作成委員会」などの委員を務める。

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