ストレスチェックの効果的な活用方法・活用事例

ストレスチェック

2015年12月から制度が義務化されてから9年が経過したストレスチェック。

義務化の内容は制度開始後からの変更はありませんが、職場環境改善等、従業員が働きやすい環境整備のためにストレスチェックの結果を活かす流れが様々な企業で見られるようになってきました。

毎年実施するなら、より効果があるストレスチェックにしたいものですよね。

今回は職場環境改善に繋がり実施効果を高めるポイントをお伝えします。

ストレスチェックの目的

そもそもストレスチェック制度の目的とは何でしょうか?改めて確認していきます。

ストレスチェック制度の目的は、従業員のストレス状況をチェックすることではありません。ストレスチェックは、職場に心理的な負担はないか、ストレスの要因となるものはないか等、職場環境のチェックが主な目的です。

すなわちストレスチェックとは、従業員のストレスの程度を把握し、職場環境改善につなげ、働きやすい職場づくりを進めることで従業員のメンタルヘルス不調の未然に防止すること(一次予防)です。

職場環境改善というと、企業側にとってはコストがかかるという印象をもたれる方も少なくはありません。しかし、実際には企業にとって職場環境改善を行うメリットは大いにあります。

職場環境改善を行うメリット

企業側が職場環境改善を行うメリットにはどのようなものがあるでしょうか?具体的に見てみましょう。

従業員のモチベーション向上

職場環境の改善は、従業員が仕事に対して持つモチベーションに大きく影響します。快適な作業スペースや良好な人間関係があることで、従業員は自分の仕事に誇りを持ち、達成感を感じやすくなります。

例えば、明るい照明や適切な温度、整理整頓されたオフィスは、働きやすさを向上させ、業務に対する意欲を高めます。これにより、従業員は自発的に業務に取り組むようになり、結果として生産性も向上します。

生産性の向上

改善された職場環境は、生産性を直接的に向上させる要因となります。例えば、作業スペースが整備され、必要な道具や資料が手の届く場所に配置されていると、業務の効率が高まります。

また、静かな作業エリアやリフレッシュスペースがあることで、集中力が維持され、タスクの遂行がスムーズになります。結果として、業務の質が向上し、納期の遵守や顧客満足度の向上につながります。

健康リスクの低減

職場環境の改善は、従業員の身体的および精神的健康を守るために重要です。人間工学に基づいた椅子やデスクの導入、適切な休憩時間の確保は、身体的な負担を軽減します。

また、ストレスを軽減する施策(メンタルヘルスのサポートやストレス管理プログラムなど)を導入することで、精神的な健康も守られます。これにより、病気のリスクが低下し、欠勤率も減少します。

 離職率の低下

良好な職場環境は、従業員の満足度を高め、結果として離職率を低下させる要因となります。従業員が快適に働ける環境やサポート体制が整っていると、企業に対する忠誠心が増し、他の職場に移る意欲が減ります。

特に、キャリア成長の機会や柔軟な働き方を提供することで、従業員は長期的に企業に留まる傾向があります。これにより、採用コストやトレーニングコストを削減することができます。

企業イメージの向上

職場環境に配慮する企業は、社会からの評価が高まります。従業員の健康や働きやすさを重視する姿勢は、企業のブランドイメージを向上させ、顧客や取引先からの信頼を得ることができます。

また、良好な職場環境を提供している企業は、求人においても優位性を持ち、優秀な人材を引き寄せる要因となります。これにより、競争力が向上します。

コミュニケーションの改善

職場環境の改善は、従業員同士のコミュニケーションを円滑にします。オープンなオフィスレイアウトやリフレッシュエリアの設置は、自然な会話や意見交換を促進します。これにより、チーム内の協力が強化され、問題解決のスピードが向上します。また、コミュニケーションが活発になることで、従業員のアイデアや創造性が引き出され、新しいビジネスチャンスや改善策が生まれることも期待されます。

これらの要素が相互に影響し合いながら、企業全体の成長と発展に寄与することが期待されます。職場環境の改善は、単なる快適さの向上に留まらず、企業の持続可能な発展を支える重要な要素となります。

ストレスチェック実施のメリット

ストレスチェックを実施することで期待できる効果は大きく次の3つ挙げられます。

① メンタルヘルス不調の未然防止​
② 従業員のストレス状況の改善​
③ 働きやすい職場の実現

それぞれの内容と企業ができる取り組み方法についてお伝えします。

① メンタルヘルス不調の未然防止​

セルフケア

ストレスチェックを受けることで、従業員は個人結果から自身のストレス状況について確認することができます。

どのようなことにストレスを感じているのか気づくことで、適切なセルフケアの方法を見つけ、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことに繋がります。

企業による取り組み方法

メンタルヘルス不調の未然防止について、企業による取り組みとしては、セルフケアについて情報を発信したり、相談窓口の設置等が挙げられます。

セルフケア情報の発信

ストレスチェック実施後、個人結果の返却の際に、ストレス状況に応じたセルフケア等のヘルスケアについての情報を伝えたり、健康だよりなど社内報で伝えることで、定期的に情報を発信することが従業員のセルフケアに役立ちます。

相談窓口の設置

心や身体、職場環境や人間関係等、様々なことを気軽に相談できる窓口を設置することはメンタルヘルス不調を未然に防ぐことに役立ちます。悩みはひとりで抱え込むと解決から遠ざかる傾向があります。誰かに話を聞いてもらう、具体的な解決策を求めることができる相談窓口の設置は重要です。

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② 従業員のストレス状況の改善​

支援探索型ストレスコーピング

ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された場合は、受検者本人の申し出により医師の面接指導があり、医学的な観点から専門的なアドバイスを得ることが出来ます。

また、処遇や職場環境について問題がある場合、会社側と問題が共有されより本質的な解決に繋がります。

企業による取り組み方法

従業員のストレス状況の改善については、どのようなことがストレス要因となっているのか現状を把握することが重要です。

ストレスチェックの集団分析により把握し、効率的に環境を改善することをおすすめします。ストレスチェックの集団分析方法については、次の記事で解説しています。

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③ 働きやすい職場の実現

「②従業員のストレス状況の改善」と同様に職場分析を行いますが、その際、部や課など一定規模の集団ごとに集計し、職場ごとにストレスの特徴と傾向を分析することで、各職場の課題が明確となります。

高ストレス者が多い部署があった場合、業務内容や労働時間などの他の情報も合わせ、周囲からの支援の状況や、仕事の質的・量的負担についても見ていきます。

職場の課題に応じた改善をすることで、ストレスの要因そのものを低減することができます。

企業による取り組み方法

集団分析の結果を有用に活用するためには、職場環境改善を行う趣旨を会社全体に周知し、従業員に理解してもらうことが重要です。

職場環境改善のための体制をつくり、研修等を利用し職場環境改善の方法論やスキルを習得することも大切です。

ストレスチェックの活用事例

以上のようにストレスチェックには企業にとっても多いにメリットがあります。それではストレスチェックの結果を活用するにはどうしたらよいのでしょうか。活用事例を見ていきましょう。

A社

  • 結果の分析: ストレスチェックの結果から、特定の部署で「仕事の量」や「職場の人間関係」に関するスコアが高いことが判明しました。
  • 課題の特定: 特に、業務の負荷が高く、コミュニケーションが不足していることがストレスの要因とされました。
  • 改善策: 管理職向けのメンタルヘルス研修を実施し、リーダーシップやコミュニケーションスキルの向上を図りました。また、業務の見直しを行い、タスクの分担を見直しました。
  • アクションプラン:
    • メンタルヘルス研修の実施: 管理職向けに、コミュニケーションスキルやストレスマネジメントに関する研修を実施しました。これにより、管理職が部下のストレスを理解し、サポートできるようにしました。
    • 業務負担の見直し: タスクの見える化を行い、業務の優先順位を明確にしました。必要に応じて、業務の再分配を行い、特定の従業員に過度な負担がかからないよう調整しました。
    • 定期的なフォローアップ: ストレスチェックを年に一度実施するだけでなく、定期的にフォローアップミーティングを設け、従業員の状況を確認する機会を設けました。

B社

  • 結果の分析: ストレスチェックによって、従業員の多くが「仕事とプライベートの両立」に関するストレスを感じていることが明らかになりました。
  • 課題の特定: 従業員のライフスタイルに合った働き方ができていないことが問題視されました。
  • 改善策: フレックスタイム制度を導入し、各自が自由に働く時間を選べるようにしました。この結果、仕事の効率が向上し、従業員のストレスが軽減されました。
  • アクションプラン:
    • フレックスタイム制度の導入: 従業員が自分のライフスタイルに合わせて働けるよう、フレックスタイム制度を導入しました。これにより、通勤ラッシュを避けたり、育児などのプライベートな事情に配慮した働き方が可能になりました。
    • 定期的なワークショップ: 業務効率を向上させるためのワークショップを定期的に開催し、効率的な作業方法やツールの活用法を学ぶ機会を提供しました。
    • 従業員の意見収集: 定期的にアンケートを実施し、従業員の意見や要望を収集する仕組みを作り、改善策に反映させました。

C社

  • 結果の分析: ストレスチェックの結果から、特に「休息時間の不足」と「業務負担」に関する不満が高いことが分かりました。
  • 課題の特定: 休憩時間が不十分であることが、従業員のストレスの原因であると認識されました。
  • 改善策: 従業員の意見を反映して、快適な休憩スペースを設置し、休憩時間の確保を徹底しました。この結果、ストレスレベルが低下し、従業員の満足度が向上しました。
  • アクションプラン:
    • 休憩スペースの設置: 従業員がリラックスできる専用の休憩スペースを設け、快適な休息が取れる環境を整えました。ここには、リフレッシュできる飲食物や雑誌なども用意しました。
    • 業務シフトの見直し: 業務のピーク時を考慮し、シフトの見直しを行い、特に忙しい時間帯に十分な人員を配置するようにしました。
    • ストレスマネジメント研修: 従業員向けにストレスマネジメントの研修を実施し、自己管理のスキルを高める機会を提供しました。

ストレスチェックを効果的に実施するには

ラインケアは厚生労働省による「4つのケア」のひとつ

職場環境改善を効果的に繋ぐことができるストレスチェックを実施するための必要な環境整備についてお伝えします。

ストレスチェック実施について社内へ告知

ラインケアとは

ストレスチェックの実施にあたり、制度の目的や従業員にとってのメリット等を説明し理解してもらうことで、従業員が積極的にストレスチェックに参加してもらうことが大切です。

「ストレスチェックは人事評価に影響するのではないか」という誤解は少なくありません。このような誤解や不安を持つことなく受検してもらえるよう丁寧に告知することが重要です。

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受検方法が選べる(マークシート受検・Web受検)

ストレスチェック実施は、従業員の勤務様態等から紙によるマークシート受検か、パソコンやスマホ等によるWeb受検か、状況に応じて柔軟に対応する必要があります。

Web受検の場合には、パソコンだけではなくスマホでも動作するのか、独自のアプリは必要なのか確認することが大切です。受検率を高めるためにも、従業員にとって負担にならない方法をとることが重要です。

ストレスチェック80項目版を選択する

ストレスチェック80項目版の内容やわかること

現在標準的に行われているストレスチェックは、57項目からなる「職業性ストレス簡易調査票」です。しかし近年、80項目からなる「新職業性ストレス簡易調査票」(「ストレスチェック80項目版」)が注目されています。

「ストレスチェック80項目版」は、57項目版よりも詳しく職場環境の現状を把握し職場環境改善に役立てることができます。

ストレスチェック80項目版の詳細はこちらの記事で解説しています。

ストレスチェック80項目版でわかること・質問内容・メリットは?
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外国語に対応

ストレスチェックの対象者は常時使用の従業員であり、もちろんそこには外国人も含まれます。現在日本においては多くの外国人が働いています。従業員に負担を感じさせることなくストレスチェックを実施するためには、外国語に対応することが重要です。

従業員に外国人がいる場合は、調査票だけではなく実施説明、受検勧奨等、各段階において外国語での対応が必要となります。

産業医との連携

ラインケアの具体的な取り組み

職場環境改善においては、日常的な職場環境について精通している産業医の意見は重要です。

ストレスチェックの集団分析結果と産業医の意見をあわせて、何をどのように改善していけばよいか検討する必要があります。

ストレスチェックの実施者及び面接指導を、産業医が担当する場合は上記の連携は問題ありません。

しかし、事業場の産業医がその役割を引き受けてくれない場合、担当する外部の産業医が必要となります。このような場合、より有効な職場環境改善がなされるためには、産業医間との連携を円滑であることが重要です。

ストレスチェック後の高ストレス者への面接指導の内容や流れ・放置した場合は?
ストレスチェック検査後、実施者により高ストレス者で医師による面接指導対象者と判定され、面接指導を希望された方には、医師による面接指導が行われることになります。 今回は、面接指導の内容や流れを中心に解説します。 ストレスチェックの実施の流...

おわりに

今回は、実施効果を高めるストレスチェックの運用についてお伝えしました。ストレスチェックの集団ごとの集計・分析に基づく職場環境改善は、従業員はもちろん企業にとってもメリットがあります。できるところから取り組んでみてはいかがでしょうか。

(参照)厚生労働省『ストレスチェックマニュアル』


ストレスチェック8年間の経験と40万人の実績がある日本CHRコンサルティングでは、厚労省ストレスチェック制定委員メンバーの精神科産業医が運用を整備し、300社以上のストレスチェック支援経験のある組織コンサルタントが職場環境改善をサポートします。全国対応しております。お気軽にお問い合わせ下さい。
職場環境改善までサポート!ストレスチェック委託は、CHR

記事監修

精神科医専門医・日本医師会認定産業医。
川崎医科大学卒、1988年渡辺クリニック(2018年改称)を開設。
その後、厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の在り方検討委員会」委員、内閣府「自殺対策官民連携協働会議」委員、公益財団法人日本精神神経科診療所協会会長など歴任。
現在、医療法人メディカルメンタルケア横山・渡辺クリニック名誉院長、大阪大学医学部神経科精神科非常勤講師、一般社団法人日本精神科産業医協会共同代表理事ほか。
ストレスチェック法制化においても、厚生労働省「ストレスチェック制度に関する検討会」「ストレスチェック項目に関する専門検討会」「ストレスチェック制度マニュアル作成委員会」などの委員を務める。

ストレスチェック 人事労務担当者向け
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