ストレスチェックの集団分析結果の見方・職場環境改善方法を厚労省の検討会メンバーが解説!

ストレスチェックの集団分析結果の見方を精神科産業医が解説! ストレスチェック

従業員50名以上の事業場に1年に1回実施が義務付けられているストレスチェック。
実施後、所轄の労基署にストレスチェック報告書を提出することで実施完了となりますが、ストレスチェックの結果を職場環境改善等に有効活用するには、集団分析結果が重要です。

今回はストレスチェックの集団分析結果の見方や公開範囲等について厚労省の検討会メンバーが解説します。

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ストレスチェックの集団分析とは?

ストレスチェックの集団分析とは、結果を集団ごとに集計し解釈することが集団分析です。集団分析により、職場ごとのストレスの状況を把握することができます。

ストレスチェック集団分析は努力義務

ストレスチェックの目的は、職場でのメンタルヘルス不調を未然に防ぐこと、すなわち一次予防です。集団分析は努力義務であり、必ず実施すべきものとはされていません。しかし、より働きやすい職場環境にするために集団分析を行うことをおすすめします。

ストレスチェック集団分析を行うメリット

ストレスチェック集団分析を行う最大のメリットは、効果的な職場環境改善策が明確になるということです。

ストレスチェックの結果を職場や部署単位で集計することで、高ストレスの従業員多い部署や職場がわかります。この結果から、高ストレス者が多い部署の労働環境や残業時間など他の情報をあわせて考えることで、何が問題なのか明らかとなり、職場環境改善のための対応策を検討することができます。

ストレスチェック集団分析結果|公開・閲覧権限の範囲は?

通常、集団ごとの集計・分析結果は、個人を特定することができないため、結果が個人の評価に影響を及ぼすことがありません。そのため従業員の同意を取ることなく、実施者から事業主に結果を提供しても差し支えありません。

しかし、集計の単位が10名未満の場合は原則として事業主へ結果を提供することができませんが次の方法で集団分析を行うことは可能です。

10名未満の場合|集団分析する方法

10 人を下回る集団でも労働者の同意なく集計・分析できる方法として「仕事のストレス判定図」を用いることは可能です。これはストレスチェックの評価点の総計の平均値を求める方法です。

しかしこの方法でも2名といった極端に少人数の集団を対象とすることは、個人の結果の特定につながるため不適切です。

また、属性などでクロス析で行うことは個人の特定ができやすくなりますので、この場合、10人以上を出力基準とします。

10人を下回った場合は、いくつかの部署を合わせて集団分析を行ったり、対象者全員の同意をもって出力を行うようにします。

集団ごとの集計・分析を、どのような方法で実施するかについては、衛生委員会等で調査審議した上で事業場内の規程として定め、労働者に周知する必要があります。

ストレスチェックの集団分析の見方

集団分析は、「仕事のストレス判定図」から見ます。

仕事のストレス判定図からわかること

仕事のストレス判定図は次の4つの仕事上のストレス要因に注目し、ストレスの大きさと健康への影響を判定します。

仕事のストレス判定図からわかるストレス要因

  • 仕事の量的負担
  • 仕事のコントロール
  • 上司の支援
  • 同僚の支援

仕事のストレス判定図の見方

仕事のストレス判定図は「量ーコントロール判定図」と「職場の支援判定図」2つの図からなります。

さまざまな企業の従業員計約 3 万人の平均を全国平均とし、それを基準に集計部署のストレス度を相対的に評価します。

量ーコントロール判定図

ストレスチェック集団分析量ーコントロール判定図

量ーコントロール判定図からは、仕事の量的負担と、仕事の裁量権・自由度をストレス要因としたストレス度がわかります。

縦軸は仕事のコントロール、横軸は仕事の量的負担を示しています。

【ストレスが高い】
仕事のコントロールが低く、仕事の量的負担が高いほど、ストレスが高い状態を示します。すなわち、右下に表示されるほど、ストレスが高いということになります。

【ストレスが低い】
仕事のコントロールが高く、仕事の量的負担が低いほど、ストレスが低い状態を示します。すなわち、左上に表示されるほど、ストレスが低いということになります。

 

職場の支援判定図

ストレスチェック集団分析職場の支援判定図

「上司の支援」(横軸)と「同僚の支援」(縦軸)の点数から、同様に健康問題の危険(リスク)を 判定しています。同僚および上司からの支援度が低いほど、すなわちプロットが左下にあればある ほど、リスクが高くなります。

職場の支援判定図からは、上司の支援と、同僚の支援をストレス要因としたストレス度がわかります。

縦軸は同僚の支援、横軸は上司の支援を示しています。

【ストレスが高い】
上司の支援が低く、同僚の支援が低いほど、ストレスが高い状態を示します。すなわち、左下に表示されるほど、ストレスが高いということになります。

【ストレスが低い】
上司の支援が高く、同僚の支援が高いほど、ストレスが低い状態を示します。すなわち、右上に表示されるほど、ストレスが低いということになります。

ストレスチェックの集団分析|具体例

例えば、次のような結果が出た場合、具体的に何に着目したらよいか見ていきます。

ストレスチェックの集団分析の具体例

上記の判定図を点数化すると次のようになります。

尺度 平均点数 健康リスク(全国平均=100とした場合)
量的負担 7.0 量-コントロール判定図(A) 100 総合健康リスク
(A)×(B)/100

110

コントロール 6.0
上司の支援 7.6 職場の支援判定図(B) 110
同僚の支援 7.0

総合健康リスクは2つの判定図から、従業員の健康にどの程度影響を与えるかの指標となります。

上記の結果は、総合健康リスクが110点となっています。
これが意味することは、従業員の健康への悪影響が10%高まっているということです。

健康リスクの点数については次のようなケースが見られる傾向があります
120点以上・・・・・・潜在的な問題があることが考えられストレス要因を探り対応が必要
150点以上・・・・・・健康問題が表面化し早急な対応が必要

上記はあくまでもひとつの指標であるため、数字には現れない問題がある可能性も考える必要があります。

健康リスクとは何か

仕事のストレス判定図を点数で表現したものが健康リスクです。健康リスクから、仕事のストレスに関するリスクがどの程度あるのか一つの目安として確認することができます。

例えば、次のような結果が出た場合、具体的に何に着目したらよいか健康リスクとともに見ていきます。

ストレスチェックの集団分析の具体例

上記の判定図を点数化すると健康リスクがわかります。

尺度 平均点数 健康リスク(全国平均=100とした場合)
量的負担 7.0 量-コントロール判定図(A) 100 総合健康リスク
(A)×(B)/100

110

コントロール 6.0
上司の支援 7.6 職場の支援判定図(B) 110
同僚の支援 7.0

健康リスクには「健康リスクA」「健康リスクB」「総合健康リスク」があります。

健康リスクA

健康リスクAとは、「量-コントロール判定図」で表現されるストレス要因の「仕事の量的負担」「仕事のコントロール」から評価された業務的負荷に関するリスクを示しています。

健康リスクB

健康リスクBとは、「職場支援判定図」で表現されるストレス要因の「上司の支援」「同僚の支援」から評価された職場支援に関するリスクを示しています。

健康リスクはいずれも、数値が高いほどリスクが高い状態を表しています。

総合健康リスク

総合健康リスクは「健康リスクA」「健康リスクB」総合的に評価し、従業員の健康にどの程度影響を与えるかの指標となります。

総合健康リスクは、全国平均を100とし、仕事のストレスの特徴から予想される心理的ストレス反応や検査の異常値、病気の発生などの健康問題の危険度を見ることができます。

算出式は次の通りです。

総合健康リスク=「健康リスクA」×「健康リスクB」÷100 

総合健康リスクも、数値が高いほどリスクが高い状態を表しています。

改めて、先程の健康リスクの表を見てみましょう。

尺度 平均点数 健康リスク(全国平均=100とした場合)
量的負担 7.0 量-コントロール判定図(A) 100 総合健康リスク
(A)×(B)/100

110

コントロール 6.0
上司の支援 7.6 職場の支援判定図(B) 110
同僚の支援 7.0

上記の結果は、総合健康リスクが110点となっています。
これが意味することは、従業員の健康への悪影響が10%高まっているということです。

健康リスクの点数については次のようなケースが見られる傾向があります
120点以上・・・・・・潜在的な問題があることが考えられストレス要因を探り対応が必要
150点以上・・・・・・健康問題が表面化し早急な対応が必要

上記はあくまでもひとつの指標であるため、数字には現れない問題がある可能性も考える必要があります。

集団分析結果を活用する方法

それでは、仕事のストレス判定図や健康リスクはどのように職場環境改善に生かせばいいでしょうか。

集団分析結果から、どの分野で職場環境改善を行うべきか、その優先度の判断や、組織全体のマネージメント状態等がわかります。それぞれ確認するポイントを見ていきます。

健康リスクAが高い場合

「仕事の量的負担」「仕事のコントロール」から評価された業務的負荷に関するリスクを示す「健康リスクA」が高い場合、職場支援等の労務管理に関することの改善が必要ということがわかります。

数値が高いほどリスクが高い状態を表しています。

労務管理の改善具体例

  • 個人のスキルを上げる研修を行う
  • 適切な配置転換を行う
  • 人員の増員l物品と資材の整理
  • 対応をマニュアルにまとめる
  • 特定の個人やチームに業務の偏りがないか確認をする

健康リスクBが高い場合

「上司の支援」「同僚の支援」から評価された職場支援に関するリスクを示す「健康リスクB」が高い場合は、職場環境に関することの改善が必要ということがわかります。

数値が高いほどリスクが高い状態を表しています。

職場環境の改善具体例

  • ミーティングを定期的に行う
  • 打合せスペースを作る
  • 上司が在席する時間を決める
  • スケジュール共有表を活用する
  • 社内イベントを活用する
  • 適切な助言や励まし
  • 方針や見通しを共有する

総合健康リスクについて

総合健康リスクは健康リスクAと健康リスクBを総合した結果です。全国平均を100として、それよりも高い場合はリスクが高いということになります。

先に述べたように、健康リスクの点数については次のようなケースが見られる傾向があります
120点以上・・・・・・潜在的な問題があることが考えられストレス要因を探り対応が必要
150点以上・・・・・・健康問題が表面化し早急な対応が必要

健康リスクの数値は一つの目安です。それぞれ検証する必要があります。

おわりに

ストレスチェックの結果を職場環境改善に生かすための集団分析の見方について解説してきました。仕事のストレス判定図から計算される健康リスクは重要な指標です。

また集団分析の結果は、産業保健スタッフや専門知識を有する第三者を交えることで客観的に評価し、職場環境改善につなげることが重要です。

ストレスチェックの集団分析の他、健康診断の集計結果などの情報も考慮して総合的にリスク評価を行うことで、職場環境改善をさらに効果的に行うことができます。

ストレスチェック8年間の経験と40万人の実績がある日本CHRコンサルティングでは、厚労省ストレスチェック制定委員メンバーの精神科産業医が運用を整備し、300社以上のストレスチェック支援経験のある組織コンサルタントが職場環境改善をサポートします。全国対応しております。お気軽にお問い合わせ下さい。

職場環境改善までサポート!ストレスチェック委託は、CHR

記事監修
渡辺 洋一郎(弊社代表取締役)

精神科医専門医・日本医師会認定産業医。
川崎医科大学卒、1988年渡辺クリニック(2018年改称)を開設。
その後、厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の在り方検討委員会」委員、内閣府「自殺対策官民連携協働会議」委員、公益財団法人日本精神神経科診療所協会会長など歴任。
現在、医療法人メディカルメンタルケア横山・渡辺クリニック名誉院長、大阪大学医学部神経科精神科非常勤講師、一般社団法人日本精神科産業医協会共同代表理事ほか。
ストレスチェック法制化においても、厚生労働省「ストレスチェック制度に関する検討会」「ストレスチェック項目に関する専門検討会」「ストレスチェック制度マニュアル作成委員会」などの委員を務める。

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