ストレスチェックの実施者・実施事務従事者の役割は?守秘義務違反に罰則も!

ストレスチェックの実施者・実施事務従事者の役割は?守秘義務違反に罰則も! ストレスチェック

ストレスチェックの実施にあたり実施者、実施事務従事者の役割は重要となりますが具体的にどのような役割があるのでしょうか?

またストレスチェックの結果を扱うことから実施者、実施事務従事者には守秘義務があります。違反した場合はどのような罰則があるのでしょうか?

今回はストレスチェックの実施者・実施事務従事者は何をするのか、その具体的な役割や守秘義務についてお伝えします。

人事権を持つ者はストレスチェックの実施に携わってはいけない

厚生労働省のストレスチェック指針において、ストレスチェックの受検者について人事権を持つ者は、ストレスチェックの実施事務に携わってはいけないと明記されています。

そのため、実施者・実施事務従事者は人事権がある人は担当することはできません。

○ 実施事務従事者の範囲と留意事項

規則第52 条の10 第2 項の規定に基づき、ストレスチェックを受ける労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、ストレスチェックの実施の事務に従事してはならない。

なお、事業者が、労働者の解雇、昇進又は異動の人事を担当する職員(当該労働者の解雇、昇進又は異動に直接の権限を持つ監督的地位にある者を除く。)をストレスチェックの実施の事務に従事させる場合には、次に掲げる事項を当該職員に周知させなければならないものとする。

① ストレスチェックの実施事務従事者には法第104 条の規定に基づき秘密の保持義務が課されること。

② ストレスチェックの実施の事務は実施者の指示により行うものであり、実施の事務に関与していない所属部署の上司等の指示を受けてストレスチェックの実施の事務に従事することによって知り得た労働者の秘密を漏らしたりしてはならないこと。

③ ストレスチェックの実施の事務に従事したことによって知り得た労働者の秘密を、自らの所属部署の業務等のうちストレスチェックの実施の事務とは関係しない業務に利用してはならないこと。

引用:ストレスチェック指針(心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づ き事業者が講ずべき措置に関する指針)厚生労働省

 

詳細については下記の記事をご覧ください。

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ストレスチェックの実施者とは?

ストレスチェックの実施者

ストレスチェックの実施者とは、ストレスチェックの計画を立て、結果を評価する役割を持つ人のことを指します。

ストレスチェックの実施者は誰でもできるものではなく、労働安全衛生法において定められています。

労働安全衛生法において実施者は、「医師」「保健師」または、厚生労働大臣が定める研修を修了した「看護師」「精神保健福祉士」「公認心理士」と定められています。

実施者になるには上記のような国家資格が必要となります。

(心理的な負担の程度を把握するための検査等)
第六十六条の十  事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。

引用:労働安全衛生法 第66条の10第1項

(検査の実施者等)
第五十二条の十 法第六十六条の十第一項の厚生労働省令で定める者は、次に掲げる者(以下この節において「医師等」という。)とする。
 一 医師
 二 保健師
 三 検査を行うために必要な知識についての研修であつて厚生労働大臣が定めるものを修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士又は公認心理師
2 検査を受ける労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事してはならない。

引用:労働安全衛生規則 第一編 第六章 健康の保持増進のための措置(第四十二条の二-第六十一条の二)

ストレスチェックの実施者の役割

ストレスチェックの実施者の役割について、「ストレスチェック指針」において次のように定められています。

実施者は、ストレスチェックの実施に当たって、当該事業場におけるストレスチェ ックの調査票の選定並びに当該調査票に基づくストレスの程度の評価方法及び高スト レス者の選定基準の決定について事業者に対して専門的な見地から意見を述べるとと もに、ストレスチェックの結果に基づき、当該労働者が医師による面接指導を受ける 必要があるか否かを確認しなければならないものとする。

引用:心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づ き事業者が講ずべき措置に関する指針

ストレスチェックの実施者の役割は大きくわけて3つあります。

  1. ストレスチェック実施にあたり、企業側に対して専門的な見地からアドバイス等意見を述べること
    事業者がストレスチェックを実施する際、質問表をどれにするか(一般的な57項目版か、より詳細な集団分析ができる80項目版か等)、集団分析や職場環境改善についてのアドバイス等を行います。
  2.  高ストレス者の選定基準や評価方法の決定にあたり、企業側に対して専門的な見地からアドバイス等意見を述べること
    ストレスチェックでは高ストレス者の選定基準等は、最終的には事業者が決定しますが、その際に、社内の衛生委員会での意見や、実施者の専門的なアドバイスが重要となります。
  3.  個人結果から、医師による面接指導が必要かについて判断すること

ストレスチェックの実施者には専門的な見地からのアドバイスや判断が任せられています。

ストレスチェックの実施においては、調査票の回収や集計、受検者との連絡調整等の作業が発生しますが、それら事務的な作業については、「実施事務従事者」が実施者の指示に従って行うこととなります。

ストレスチェックの実施者は面接指導担当医になれるか?

ストレスチェックを実施した後、高ストレスと判定された従業員が面接指導を希望する場合、医師がその面接指導を行うことになります。

この面接指導を担当する医師は、実施を行った産業医が担当することが望ましいとされています。

厚生労働省が各都道府県に向けた通達では、以下のように説明されています。

事業場の状況を日頃から把握している当該事業場の産業医がストレスチェック及び面接指導等の実施に直接従事することが望ましい

引用元:厚生労働省

労働安全衛生法の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省 令の整備に関する省令等の施行について

実施者を外部委託する場合

実施者は外部委託することも可能です。
厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」においては、ストレスチェックの実施を外部委託する際には、自社の産業医などの産業保健スタッフが共同実施者として関わることを推奨しています。

ストレスチェックの実施を外部機関に業務委託する場合にも、産業医等の 事業場の産業保健スタッフが共同実施者として関与し、個人のストレスチェ ックの結果を把握するなど、外部機関と事業場内産業保健スタッフが密接に 連携することが望まれます。
引用:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル

ストレスチェックの実施事務従事者とは

ストレスチェックの実施事務従事者とは、実施者の補助をする役割を担います。

質問票の回収、データ入力、結果送付など、個人情報を取り扱う業務を担当します。
社内の衛生管理者、産業保健スタッフや事務職員が担当する場合が多く、外部委託も可能です。

厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」では、実施事務従事者は実施者の事務的な補助を行う役割があると示されています。

実施者のほか、実施者の指示により、ストレスチェックの実施の事務(個人の調査票のデータ入力、結果の出力又は記録の保存(事業者に指名された場合に限る)等を含む。)に携わる者をいう。
引用:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル

ストレスチェックの実施事務従事者の役割

実施事務従事者は、実施者の指示により、質問票の回収、データ入力、結果送付など、個人情報を取り扱う業務等ストレスチェックの実施の事務を担当し、ストレスチェックが円滑に行われるために重要な役割を担っています。

実施事務従事者の具体的な役割としては次のことが挙げられます
・ストレスチェック実施の日程調整
・受検者へのストレスチェック実施の案内
・質問票の配布回収
・受検勧奨
・結果の通知
・集団分析の結果を事業者に提供
・面接指導が必要な従業員への面接指導申出の勧奨
・面接指導の日程調整

・結果記録の保存(事業者に指名された場合) など

それぞれの項目についてポイントを整理して説明します。

① ストレスチェックの実施スケジュールの調整

  • ストレスチェックを行う時期や対象者を確定し、日程を調整する。
  • 事業者・実施者・受検者(従業員)とのスケジュール調整を行う。
  • 必要に応じて外部機関(健康診断機関など)との連携をとる。

② 受検者への案内と通知

  • ストレスチェックの目的や実施方法を分かりやすく説明し、従業員に周知する。
  • 受検方法(紙ベース or Webシステム)について案内を行う。
  • 個人情報の保護について従業員に説明し、安心して受検できる環境を整える。

③ 質問票の配布・回収

  • 質問票(調査票)を配布し、従業員が適切に記入できるようサポートする。
  • Webシステムを利用する場合は、ログイン方法などの説明を行う。
  • 期限内に回収するよう、リマインドを行う。

④ 受検勧奨

  • 受検率を向上させるため、未受検者に対して受検を勧める。
  • 強制ではなく、受検のメリットを説明しながら促すことが重要。
  • 産業医や管理職とも連携しながら、ストレスチェックの受検を推進する。

⑤ 結果の通知

  • 受検者本人へストレスチェックの結果を通知する。
  • 個人情報保護の観点から、通知方法には十分な配慮を行う(電子メール、封筒での手渡しなど)。
  • 事業者へは本人の同意がない限り、個人の結果を提供しない というルールを厳守する。

⑥ 集団分析の結果を事業者に提供

  • 個人が特定されない形 で、部門ごとのストレス状況を集計・分析する。
  • 事業者に対して、ストレス要因の分析結果を提供し、職場環境改善につなげる。

⑦ 面接指導の申出勧奨

  • ストレスチェックの結果、「高ストレス」と判定された従業員に対し、医師による面接指導を受けるよう勧める。
  • 申し出の方法や流れについて説明し、希望する従業員がスムーズに面接指導を受けられるようサポートする。

⑧ 面接指導の日程調整

  • 面接指導を実施する医師と従業員のスケジュールを調整する。
  • プライバシーを確保しつつ、面接を受けやすい環境を整える。

⑨ 結果記録の保存(事業者から指名があった場合)

  • ストレスチェックの結果を 個人が特定されない形で 保存する。
  • 保存期間は 5年間(法律で定められている)。
  • 情報漏えいを防ぐため、アクセス管理を厳重に行う。

実施事務従事者としての重要なポイント

  1. 個人情報保護の徹底

    • 実施事務従事者には守秘義務があり、ストレスチェックの結果を 本人の同意なく事業者に提供してはいけない
    • 結果の管理・通知方法には細心の注意を払う。
  2. 受検率向上の工夫

    • 受検を強制するのではなく、従業員が納得して受けられるような説明を行う。
    • ストレスチェックの目的をしっかり伝える(メンタル不調の「発見」ではなく「予防」が目的)。
  3. スムーズな運営と調整

    • スケジュール調整や面接指導の申出勧奨など、全体の流れを管理し、スムーズに運営する。
  4. 結果を活かした職場環境の改善

    • ストレスチェックの結果を集団分析し、職場環境の改善につなげる。
    • 事業者と連携し、ストレスの要因を減らす取り組みを進める。

ストレスチェックの実施事務従事者は、ストレスチェック制度の円滑な運用を支える重要な役割 を担っています。

特に 個人情報の管理とプライバシー保護 を厳守しつつ、受検率の向上や面接指導のサポートを行い、従業員のメンタルヘルス不調の未然防止 に貢献することが求められます。

守秘義務違反の場合は罰則も

ストレスチェックの結果を扱うことから、実施者・実施事務従事者には法律で守秘義務が課され、違反した場合は刑罰の対象となります。

守秘義務違反の刑罰の内容は、「労働安全衛生法における守秘義務に係る規定」において、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」とされています。

ストレスチェックの個人結果の記録保存については、保存が適切に行われるよう記録の保存場所の指定、保存期間の設定及びセキュリティの確保等、必要な措置が講じられることが事業者に義務付けられています。

しかし、結果の記録保存の担当者は、実施事務従事者が指名される場合が多く、第三者に閲覧されることがないよう厳重に管理することも実施事務従事者の役割に入ることもあります。

おわりに

ストレスチェックの実施者・実施事務従事者の具体的な役割について説明してきました。事務的な職務を担う実施事務従事者は、重要な役割と担うことになりますが、実施者と連携・協力しながらストレスチェックを円滑に運営することが期待されています。

 

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