2015年12月から制度が義務化されてから8年が経過したストレスチェック。
義務化の内容は制度開始後からの変更はありませんが、職場環境改善等、従業員が働きやすい環境整備のためにストレスチェックの結果を活かす流れが様々な企業で見られるようになってきました。
毎年実施するなら、より効果があるストレスチェックにしたいものですよね。
今回は職場環境改善に繋がり実施効果を高める進化したストレスチェックついてお伝えします。
ストレスチェックの目的
そもそもストレスチェック制度の目的とは何でしょうか?改めて確認していきます。
ストレスチェック制度の目的は、従業員のストレス状況をチェックすることではありません。ストレスチェックは、職場に心理的な負担はないか、ストレスの要因となるものはないか等、職場環境のチェックが主な目的です。
すなわちストレスチェックとは、従業員のストレスの程度を把握し、職場環境改善につなげ、働きやすい職場づくりを進めることで従業員のメンタルヘルス不調の未然に防止すること(一次予防)です。
職場環境改善というと、企業側にとってはコストがかかるという印象をもたれる方も少なくはありません。しかし、実際には企業にとって職場環境改善を行うメリットは大いにあります。
職場環境改善に取り組む企業側のメリット
企業側にとっての職場環境改善に取り組むメリットとはどのようなものでしょうか?
従業員の健康リスクを未然に防ぎ、職場環境改善を行うことで、パフォーマンスの向上による生産性のアップが期待されます。また、休職者数の減少や復職後の再発リスクの低下により、会社にとってのコストを下げることも期待できます。
ストレスチェックの実施効果を高める運用とは?
ストレスチェックを実施することで期待できる効果とは大きく次の3つ挙げられます。
① メンタルヘルス不調の未然防止
② 従業員のストレス状況の改善
③ 働きやすい職場の実現
それぞれの内容と企業ができる取り組み方法についてお伝えします。
① メンタルヘルス不調の未然防止
ストレスチェックを受けることで、従業員は個人結果から自身のストレス状況について確認することができます。
どのようなことにストレスを感じているのか気づくことで、適切なセルフケアの方法を見つけ、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことに繋がります。
企業による取り組み方法
メンタルヘルス不調の未然防止について、企業による取り組みとしては、セルフケアについて情報を発信したり、相談窓口の設置等が挙げられます。
セルフケア情報の発信
ストレスチェック実施後、個人結果の返却の際に、ストレス状況に応じたセルフケア等のヘルスケアについての情報を伝えたり、健康だよりなど社内報で伝えることで、定期的に情報を発信することが従業員のセルフケアに役立ちます。
相談窓口の設置
心や身体、職場環境や人間関係等、様々なことを気軽に相談できる窓口を設置することはメンタルヘルス不調を未然に防ぐことに役立ちます。悩みはひとりで抱え込むと解決から遠ざかる傾向があります。誰かに話を聞いてもらう、具体的な解決策を求めることができる相談窓口の設置は重要です。
② 従業員のストレス状況の改善
ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された場合は、受検者本人の申し出により医師の面接指導があり、医学的な観点から専門的なアドバイスを得ることが出来ます。
また、処遇や職場環境について問題がある場合、会社側と問題が共有されより本質的な解決に繋がります。
企業による取り組み方法
従業員のストレス状況の改善については、どのようなことがストレス要因となっているのか現状を把握することが重要です。
ストレスチェックの集団分析により把握し、効率的に環境を改善することをおすすめします。ストレスチェックの集団分析方法については、次の記事で解説しています。
③ 働きやすい職場の実現
「②従業員のストレス状況の改善」と同様に職場分析を行いますが、その際、部や課など一定規模の集団ごとに集計し、職場ごとにストレスの特徴と傾向を分析することで、各職場の課題が明確となります。
高ストレス者が多い部署があった場合、業務内容や労働時間などの他の情報も合わせ、周囲からの支援の状況や、仕事の質的・量的負担についても見ていきます。
職場の課題に応じた改善をすることで、ストレスの要因そのものを低減することができます。
企業による取り組み方法
集団分析の結果を有用に活用するためには、職場環境改善を行う趣旨を会社全体に周知し、従業員に理解してもらうことが重要です。
職場環境改善のための体制をつくり、研修等を利用し職場環境改善の方法論やスキルを習得することも大切です。
進化したストレスチェックとは?
進化したストレスチェックとは、職場環境改善を効果的に繋ぐことができるストレスチェックのことを指します。
すなわち、受検しやすい環境を作り受検率を上げ、より詳細に分析ができ、何が問題でどのように解決したらよいのかわかりやすくなるストレスチェックということになります。
これらを実現するにはどうしたらよいのでしょうか?必要な環境整備についてお伝えします。
ストレスチェック実施について社内へ告知
ストレスチェックの実施にあたり、制度の目的や従業員にとってのメリット等を説明し理解してもらうことで、従業員が積極的にストレスチェックに参加してもらうことが大切です。
「ストレスチェックは人事評価に影響するのではないか」という誤解は少なくありません。このような誤解や不安を持つことなく受検してもらえるよう丁寧に告知することが重要です。
受検方法が選べる(マークシート受検・Web受検)
ストレスチェック実施は、従業員の勤務様態等から紙によるマークシート受検か、パソコンやスマホ等によるWeb受検か、状況に応じて柔軟に対応する必要があります。
Web受検の場合には、パソコンだけではなくスマホでも動作するのか、独自のアプリは必要なのか確認することが大切です。受検率を高めるためにも、従業員にとって負担にならない方法をとることが重要です。
ストレスチェック80項目版を選択する
現在標準的に行われているストレスチェックは、57項目からなる「職業性ストレス簡易調査票」です。しかし近年、80項目からなる「新職業性ストレス簡易調査票」(「ストレスチェック80項目版」)が注目されています。
「ストレスチェック80項目版」は、57項目版よりも詳しく職場環境の現状を把握し職場環境改善に役立てることができます。
ストレスチェック80項目版の詳細はこちらの記事で解説しています。
外国語に対応
ストレスチェックの対象者は常時使用の従業員であり、もちろんそこには外国人も含まれます。現在日本においては多くの外国人が働いています。従業員に負担を感じさせることなくストレスチェックを実施するためには、外国語に対応することが重要です。
従業員に外国人がいる場合は、調査票だけではなく実施説明、受検勧奨等、各段階において外国語での対応が必要となります。
産業医との連携
職場環境改善においては、日常的な職場環境について精通している産業医の意見は重要です。
ストレスチェックの集団分析結果と産業医の意見をあわせて、何をどのように改善していけばよいか検討する必要があります。
ストレスチェックの実施者及び面接指導を、産業医が担当する場合は上記の連携は問題ありません。
しかし、事業場の産業医がその役割を引き受けてくれない場合、担当する外部の産業医が必要となります。このような場合、より有効な職場環境改善がなされるためには、産業医間との連携を円滑であることが重要です。
おわりに
今回は、実施効果を高めるストレスチェックの運用についてお伝えしました。ストレスチェックの集団ごとの集計・分析に基づく職場環境改善は、従業員はもちろん企業にとってもメリットがあります。できるところから取り組んでみてはいかがでしょうか。
(参照)厚生労働省『ストレスチェックマニュアル』
ストレスチェック8年間の経験と40万人の実績がある日本CHRコンサルティングでは、厚労省ストレスチェック制定委員メンバーの精神科産業医が運用を整備し、300社以上のストレスチェック支援経験のある組織コンサルタントが職場環境改善をサポートします。全国対応しております。お気軽にお問い合わせ下さい。