働く環境において、ストレスは避けられない要素のひとつです。しかし、適切に管理しないとメンタルヘルス不調につながる可能性があります。ストレスチェック制度は、労働者のストレス状況を把握し、未然に対策を講じるために導入されました。今回は、ストレスチェックの目的や実施方法、その流れについてわかりやすく解説します。
ストレスチェックとは何か
ストレスチェックとは、企業や組織で働く労働者が、自身のストレスの程度や精神的な負担を把握するために行われる検査のことを指します。この制度は、働く人々のメンタルヘルスの維持・向上を目的としており、特に職場環境が原因で発生するストレスを早期に発見し、適切な対策を講じることで、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的としています。
ストレスチェック制度は、2015年12月に施行された労働安全衛生法の改正に伴い導入されました。この改正により、常時50人以上の労働者を雇用する事業場に対して、年に1回のストレスチェックの実施が義務付けられました。これは、労働者のメンタルヘルスの悪化を防ぐとともに、職場環境をより良くするための取り組みの一環として位置付けられています。
また、ストレスチェックの結果は個人に通知されるだけでなく、職場全体のストレス状況を把握するために集団分析が行われることもあります。この分析結果をもとに、企業や事業者は職場環境の改善を検討し、必要に応じて働き方の見直しやストレス軽減のための施策を講じることが求められています。
ストレスチェックの目的と重要性
近年、多くの労働者が職場で強いストレスを抱えており、メンタルヘルスの問題が深刻化しています。厚生労働省の「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事や職業生活に関して強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者の割合は82.7%にも上ると報告されています。また、具体的なストレス要因として「仕事の失敗、責任の発生等」(39.7%)、「仕事の量」(39.4%)、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」(29.6%)などが挙げられており、多くの労働者がさまざまな理由でストレスを抱えていることが分かります。
さらに、メンタルヘルス不調により1か月以上の休業や退職に至る労働者も増加傾向にあり、企業にとっても深刻な課題となっています。このような背景のもと、職場におけるストレスを軽減し、労働者の健康を守るために導入されたのが「ストレスチェック制度」です。本制度は、労働者が自身のストレス状態を把握し、適切な対策を講じることで、メンタルヘルス不調の未然防止を図ることを目的としています。
ここでは、ストレスチェック制度の主な目的とその重要性について詳しく解説します。
労働者のメンタルヘルス不調の未然防止
ストレスチェック制度の最も重要な目的の一つは、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことです。職場でのストレスは、長時間労働、人間関係の問題、業務量の増加など、さまざまな要因によって引き起こされます。こうしたストレスが放置されると、うつ病や適応障害などの精神的な疾患に発展する可能性があります。
ストレスチェックを通じて、労働者自身が自身のストレス状態を客観的に把握し、早期に対処することが可能になります。例えば、ストレスレベルが高いと判定された場合には、医師や産業カウンセラーといった専門家による相談の機会を提供することが推奨されます。また、企業側も、ストレスの高い労働者がどのような問題を抱えているのかを把握し、適切なサポート体制を整えることが求められます。
職場環境の改善
ストレスチェックは個人のストレス状態を把握するだけでなく、職場環境の改善にも大きく貢献します。ストレスチェックの結果を集団ごとに分析することで、特定の部署やチームでストレスが高まっている傾向があるかどうかを判断することができます。
例えば、ある部署で多くの労働者が高ストレス状態にある場合、その部署では業務量の偏りがある、上司とのコミュニケーションが不足している、労働環境が過酷であるといった問題が潜在的に存在する可能性があります。こうしたデータを基に、企業は労働環境の改善に向けた具体的な施策を講じることができます。その結果、職場のストレス要因を減らし、従業員が安心して働ける環境を構築することが可能になります。
労働者のセルフケア意識の向上
ストレスチェック制度は、労働者自身のセルフケア意識を高める役割も果たします。多くの人は、日常的にストレスを感じていても、それがどの程度深刻なものなのかを把握できていない場合があります。しかし、ストレスチェックを受けることで、現在の自分のストレスレベルを数値や評価として確認でき、必要な対策を講じるきっかけとなります。
また、企業側も従業員がストレスを自己管理できるよう、メンタルヘルス研修やカウンセリングの機会を提供することで、より健康的な職場づくりをサポートすることが求められます。
ストレスチェック制度には、「労働者のメンタルヘルス不調の未然防止」「職場環境の改善」「労働者のセルフケア意識の向上」という3つの大きな目的があります。これらの目的を達成するためには、企業と労働者双方が協力し、適切な対策を講じることが不可欠です。
労働者がストレスを早期に把握し、適切なケアを行うことで、健康的で働きやすい職場環境が実現します。企業にとっても、従業員の健康を守ることは生産性の向上や離職率の低下につながるため、ストレスチェックを積極的に活用し、メンタルヘルス対策に取り組むことが求められます。
ストレスチェックの実施手順と流れ
ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルスを維持・向上させるために重要な制度です。適切な手順で実施することで、労働者自身がストレス状況を把握し、職場環境の改善にもつながります。以下に、ストレスチェックの実施手順と流れを詳しく解説します。
下記の図は、ストレスチェック実施の流れを図解したものです。実施前の運用準備から、調査実施、高ストレス者対応、職場環境改善、報告書の提出までが一連の流れとなります。それぞれ順を追って説明していきます。
ストレスチェック実施前の運用準備
ストレスチェックを効果的に実施するためには、適切な準備と計画が不可欠です。事前の準備を怠ると、労働者が正確な回答をしにくくなったり、適切なフォローアップが行えなくなったりする可能性があります。特に、企業がストレスチェックを単なる義務として実施するのではなく、職場環境の改善や労働者の健康維持に役立てるためには、事前準備の段階でしっかりとした計画を立てることが重要です。
まずは、ストレスチェックを円滑に進めるための事前準備について詳しく説明します。
実施方針の策定
まず、企業としてストレスチェックの目的や目標を明確にすることが重要です。ストレスチェックの実施は単なる義務ではなく、労働者の健康を守り、職場環境を改善するための手段です。そのため、企業の経営陣や人事担当者は、ストレスチェックを通じて何を達成したいのかを事前に整理し、明確な方針を打ち出す必要があります。実施方針の策定は衛生委員会等で審議し決定します。
衛生委員会で審議すべき内容は、「ストレスチェック指針」において提示されており、具体的には以下の項目が挙げられます。
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ストレスチェックの目的とその周知方法
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実施体制の決定
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制度担当者、実施者、実施事務従事者の明示
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ストレスチェックの実施方法(オンライン・紙媒体など)
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ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析の方法
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ストレスチェック結果の保存期間と取り扱い
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情報提供の同意取得方法
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集団分析の実施方針
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受検者に対する不利益な取扱いの防止策
これらの項目を事前に検討し、衛生委員会で審議を行うことで、ストレスチェックの実施がスムーズに進むだけでなく、労働者の安心感を高めることができます。
また、衛生委員会での審議が完了した後は、決定した実施方法やスケジュールを従業員に適切に説明し、ストレスチェックの目的や意義を理解してもらうことが重要です。この情報提供が不十分だと、労働者の受検率が低下したり、正確なデータが得られなかったりする恐れがあります。そのため、ストレスチェックの実施に関する説明会を実施するなど、情報を発信することをおすすめします。
実施者と実施事務従事者
ストレスチェックの実施には、専門的な知識を持つ実施者と、事務手続きを担当する実施事務従事者が必要です。実施者には、産業医や保健師、臨床心理士、精神科医などが選ばれることが一般的です。彼らはストレスチェックの設計や結果の分析、高ストレス者への対応など、専門的な業務を担当します。
一方、実施事務従事者は、ストレスチェックの運営に関わる事務手続きを担当し、調査票の配布・回収、データ入力、結果の通知などを行います。実施事務従事者は、個人情報の適切な管理に関する知識を持ち、労働者のプライバシーを厳守することが求められます。
調査票の選定
ストレスチェックの調査票にはさまざまな種類がありますが、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」が広く用いられています。この調査票は、
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仕事の負担(仕事量や仕事のコントロール)
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職場の人間関係(上司や同僚との関係)
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心理的ストレス反応(不安や抑うつなどの精神的な負担)
といった項目を評価するために作成されており、労働者のストレス状態を総合的に把握することができます。
企業によっては、業種や職場環境に応じて80項目版等の調査票を使用する場合もあります。例えば、IT企業では長時間労働の影響を測る項目を追加する、接客業では顧客対応によるストレスを評価する項目を含めるといった工夫がなされることがあります。
実施方法の決定
ストレスチェックの実施方法として、紙媒体またはオンライン形式のいずれかを選択する必要があります。
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紙媒体:従業員に紙の調査票を配布し、記入後に回収する方法。インターネット環境が整っていない職場などに適しています。
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オンライン:webを利用して調査を行う方法。集計や分析が迅速に行えるため、大規模な事業所ではオンライン実施が推奨されます。
どの方法を選ぶ場合でも、労働者が正直に回答できる環境を整えることが重要です。例えば、
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回答の匿名性を確保する
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上司が回答結果を直接確認できないようにする
といった工夫を施すことで、正確な回答を促すことができます。
プライバシー保護の対策
ストレスチェックでは、労働者の個人情報やメンタルヘルスに関するデリケートな情報を取り扱うため、厳格なプライバシー保護の対策が求められます。
具体的には、
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結果の管理方法を明確にする:個人結果は本人のみが確認できるようにし、会社の管理職や人事部が勝手に閲覧することがないようにする。
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データの保管と廃棄ルールを定める:一定期間経過後、調査票やデータを適切に処分する。
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外部業者を利用する場合の契約内容を確認する:オンラインシステムを使用する際は、データの取り扱いについて適切な契約を締結する。
このような対策を講じることで、労働者が安心してストレスチェックを受けられる環境を整えることができます。
集団分析の実施について
集団分析の実施は義務ではなく努力義務となっています。先述したように、実施するか否かについては衛生委員会で審議します。
実施する場合は、集団分析の活用方針や、職場環境改善に生かすための集団集計の単位等(部単位か、課単位かなど)を決定します。

以上の準備を適切に行うことで、ストレスチェックを効果的に実施し、労働者のメンタルヘルスの維持や職場環境の改善に役立てることができます。次に、実際のストレスチェックの実施手順について詳しく解説します。
ストレスチェック受検対象者への周知
ストレスチェックを効果的に実施するためには、受検対象者への適切な周知が不可欠です。従業員がストレスチェックの目的や重要性を理解し、安心して受検できる環境を整えることで、制度の効果を最大限に引き出すことができます。従業員への周知に関する詳細と、受検対象者について説明します。
受検対象者への周知
ストレスチェックを実施する際には、以下のポイントを従業員に周知することが重要です
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実施の目的と意義:ストレスチェックが労働者のメンタルヘルス不調の予防や職場環境の改善を目的としていることを伝えます。これにより、労働者が制度の意義を理解し、積極的に参加する意欲を高めることができます。
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実施方法とスケジュール:ストレスチェックの実施方法(紙媒体やオンライン形式など)や実施期間、回答期限などの詳細を明確に伝えます。具体的なスケジュールを提示することで、従業員が計画的に受検できるようになります。
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プライバシーの保護:労働者の回答内容や結果が厳重に管理され、本人の同意なしに第三者(上司や人事担当者など)に開示されないことを保証します。また、ストレスチェックの結果は人事評価に影響しないこともしっかり伝えます。このことにより、従業員が安心して正直に回答できるようにします。
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結果の活用方法:個人の結果は本人にのみ通知され、集団的な結果は職場環境の改善に活用されることを説明します。これにより、従業員に自分の回答が組織全体の改善にも繋がることを理解してもらいます。
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高ストレス者への対応:高ストレスと判定された場合の対応(医師による面接指導の機会提供など)について事前に説明します。これにより、従業員は必要なサポートを受けられることを知り、安心感を持つことができます。
これらの情報は、メールや社内報、説明会などを通じて周知することが効果的です。特に、説明会を開催し、従業員からの質問や不安に直接対応することで、理解を深め、協力を得やすくなります。
ストレスチェックの受検対象者
ストレスチェックの受検対象者は、労働安全衛生法に基づき、以下の要件を満たす労働者とされています:
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常時使用される労働者:期間の定めのない労働契約、または契約期間が1年以上の労働契約により雇用されている者。契約更新により1年以上の雇用が予定されている者や、1年以上継続して雇用されている者も含まれます。
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労働時間の要件:1週間の労働時間が、同事業場の同種業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3以上である者。
これらの要件を満たす労働者は、正社員だけでなく、契約社員、パートタイム労働者、アルバイトなどの雇用形態に関わらず、ストレスチェックの対象となります。一方、役員や社長、派遣労働者は基本的に対象外ですが、派遣労働者については派遣元事業者にストレスチェックの実施義務があります。
ストレスチェックの受検対象者についてはこちらの記事も参照ください。

従業員への周知を徹底し、受検対象者を正確に把握することで、ストレスチェック制度を効果的に運用し、従業員のメンタルヘルスの維持・向上と職場環境の改善を実現することができます。
ストレスチェックの実施
準備が整った後、実際の受検を行います。紙媒体で実施する場合は、事前に用意した質問票を配布し、従業員に記入してもらいます。オンライン形式の場合は、受検者に対して事前に配布したURLやログイン情報に沿って専用のストレスチェック画面にアクセスし、指定された方法で回答を行います。
紙媒体で実施する場合、回答の回収方法にも十分な配慮が必要です。記入済みの調査票が他者に見られないよう、封筒に入れて提出する、もしくは折りたたんで回収ボックスへ投入するなどの工夫を行いましょう。特に、ストレスチェックの実施に関わらない第三者が回答内容を確認できないような環境を整えることが重要です。
また、ストレスチェックの結果については、従業員本人の許可なく人事権を持つ人物が閲覧することは禁止されています。そのため、適切な管理体制を整え、個人情報の保護を徹底することが求められます。これにより、従業員が安心して受検できる環境を確保することができます。
ストレスチェックの実施は、従業員のメンタルヘルス状況を正しく把握し、職場環境の改善につなげるための重要な機会です。適切な環境を整え、回答の匿名性を確保することで、より正確な情報を得ることができます。
ストレスチェックの受検は従業員にとっては義務ではありません。しかし受検者自身のストレス状況を確認する機会であるため多くの方に受検してもらえるよう、未受検者へは受検勧奨を実施することも可能です。その場合は、従業員に対する不利益な取扱いが行われないことを確保した上で行われることが重要です。
結果を受検者に通知
調査結果を回収し、質問表を元にストレス状況を判定し、実施者から受検者に結果を直接通知します。
また、従業員のメンタルヘルスへの意識を高めるために、ストレスチェックの結果と併せて、セルフケアに関するアドバイスや相談窓口の案内などの情報を提供することをおすすめします。
高ストレス者の選定方法
「ストレスチェック指針」において、高ストレス者の選定方法は、次のいずれかの要件を満たす者と示されています。選定基準について実施者の助言を受けながら、決定します。
- 調査票のうち、「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が高い者
- 調査票のうち、「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が一定以上の者であって、かつ、「職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目」及び「職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目」の評価点数の合計が著しく高い者

面接指導の通知について
高ストレス者が面接指導を申出た場合、ストレスチェックの結果を事業者へ報告することになります。このことについて該当する受検者にはしっかりと伝える必要があります。
個人情報の開示を拒否する方もいますが、その場合は改めてストレスチェックの目的と法の定めるところで情報開示をしなければならない旨を説明することが重要です。
しかし、事業者への報告を拒否し続ける場合は、ストレスチェック実施後の面接指導から、産業保健活動の一環としての相談に切り替えることをおすすめします。産業医の面談の場合は、事業者へ情報開示をする必要はありません。
高ストレス者への医師による面接指導
事業者は、高ストレス者と選定された受検者から申出があった場合は、医師による面接指導を行わなければなりません。
2017年に公開された『ストレスチェック制度の実施状況』によれば、ストレスチェックを受けた労働者のうち、医師による面接指導を受けた労働者は0.6%。面接指導の申出がなされにくい実情が明らかとなりました。
表5 医師による面接指導を受けた労働者の状況
事業場規模 | 50~99 人 | 100~299 人 | 300~999 人 | 1000 人以上 | 計 |
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医師による面接指導を受けた 労働者の割合 |
0.8% | 0.7% | 0.6% | 0.5% | 0.6% |
『ストレスチェック制度の実施状況』(厚生労働省)
面接指導の申出が無い場合は、面接指導の申出の勧奨や、最終的な意思確認をとることも可能です。しかしその場合、第三者にその社員が面接指導の対象者であることが知られることがないよう配慮する必要があります。
面接指導実施においての重要事項
面接指導の実施においては、プライバシー保護等様々な場面で注意が必要です。
- 面接指導は面接を希望した日から1か月以内に実施することが望ましい
- 必ず勤務時間内に行われるように調整する
- プライバシーが保たれる場所で実施をする
- 事業場以外で実施する場合は、移動時間のかからない等の配慮が必要
- 従業員の誤解なく面接指導の重要性を理解してもらうことが大切
- 面接指導に関わる費用は、事業者が負担
ストレスチェックを職場環境改善につなげる
ストレスチェックを実施する目的は、職場環境をチェックし職場環境改善が目的です。従業員のストレス状況をチェックすることがその目的ではありません。
現在は努力義務となっており、職場環境改善に後ろ向きな企業も少なくはありません。しかし、職場環境改善に取り組むことは、企業にとっても大きなメリットがあります。

職場環境改善することのメリット
職場環境改善することは、従業員、企業双方にとってメリットがあります。従業員の健康度が高まることで全体の生産性のアップや、コスト低下が期待できます。
もし職場環境が悪い場合、従業員のパフォーマンスが低下し、それに伴い生産性も下がる可能性があります。また、従業員の健康リスクを見過ごしてしまうと、休職者の増加に繋がり、復職後も再発のリスクがある状態となります。このことにより会社にとってコストが大きくなってしまいます。
働きやすいよう職場環境改善を行うことは、従業員の健康度がアップすることによる会社にとってのコスト低下や、従業員のパフォーマンス向上による生産性のアップが期待できます。
職場環境改善にとって有用であるストレスチェックは、事業経営にとって重要といえます。
職場環境改善につなげるための集団結果の見方についてはこちらをご参照ください。

結果報告書の提出
ストレスチェックを実施した後、常時50人以上の労働者を雇用する事業場は、1年以内ごとに1回、所轄の労働基準監督署に報告書を提出する義務があります。この報告を怠ったり、虚偽の報告を行った場合、労働安全衛生法第100条に違反し、同法第120条に基づき、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
報告書の提出期限は、前回の提出日から1年以内です。
報告書の提出を怠ると、罰則の対象となるだけでなく、企業の信頼性の低下や労働者からの訴訟リスクを高める可能性があるため、ストレスチェック後は報告書を提出しましょう。
報告書の書き方、見本、電子申請の方法や提出先等の詳細についてはこちらの記事をご参照ください。

ストレスチェックを実施する際の注意点
以上、ストレスチェックの実施の流れについて説明いたしました。ストレスチェックを実施する際には、適切に運用するための重要なポイントがいくつかあります。ここでは、特に注意すべき点について詳しくまとめました。
個人情報の保護
ストレスチェックの結果は、労働者のプライバシーに関わる重要な情報です。そのため、結果の管理や保存は厳重に行い、個人情報が漏洩しないよう細心の注意を払う必要があります。また、結果を事業者に提供する際には、必ず労働者本人の同意を得ることが求められます。
不利益な取り扱いの防止
ストレスチェックの結果や、面接指導を希望したことを理由に、解雇や降格などの不利益を受けることがあってはなりません。労働者が安心して受検できる環境を整えることが、企業の責任として重要です。
実施体制の整備
ストレスチェックを適切に実施するには、医師や保健師などの「実施者」と、事務手続きを担う「実施事務従事者」の役割を明確にし、適切な体制を整えることが必要です。
労働者への周知と教育
ストレスチェックの目的や意義、受検の流れについて、労働者に十分な説明を行い、理解を深めてもらうことが大切です。これにより、受検率の向上や、結果の効果的な活用につながります。
結果の活用と職場環境の改善
ストレスチェックの結果を集団ごとに分析し、職場のストレス要因を明確にすることで、適切な改善策を講じることができます。これにより、労働者のメンタルヘルスの向上や、業務の生産性向上が期待できます。
これらのポイントを踏まえ、適切にストレスチェックを実施し、その後の対応をしっかり行うことで、労働者の健康維持と職場環境の改善につなげていきましょう。
参照
ストレスチェック実施マニュアル(厚生労働省)
令和5年労働安全衛生調査(実態調査)(厚生労働省)
ストレスチェック実施後の報告書の提出について(厚生労働省)