ストレスチェックの罰則規定は?50人未満の中小企業に対する実施義務はいつから?

ストレスチェック

2015年12月から労働者50名以上の事業場に年1回の実施が義務付けられているストレスチェック。現在は、50人以上の事業場においてストレスチェックの実施義務はあります。

しかし、政府は2025年3月14日、労働安全衛生法の改正案を決定し、従業員50人未満の企業においてもストレスチェックの実施を義務付けることとしました。もし今国会で 改正法が成立すれば、公布から3年以内に施行される予定です。

なお、50人未満の小規模事業所に対するストレスチェックの義務化の具体的な時期はまだ決まっていませんが、改正法の成立から3年以内、つまり2028年までには施行される見通しです。

実施が義務付けられているストレスチェックですが、罰則規定はあるのでしょうか?
実施や報告、守秘義務違反に対して企業に対する罰則や、
ストレスチェックの受検を拒否した場合の罰則等について説明いたします。

ストレスチェックの実施義務について

現在、ストレスチェックの実施が義務付けられているのは、常時 50 名以上の労働者を使用する事業場です。

「事業場」とは、本社、支店、工場、営業所など同じ場所で作業している組織のことをいいます。

ストレスチェックは、労働安全衛生法第66条の10に基づき、2015 年 12 月から労働者が 50 名以上いる事業場に対して毎年1回実施することが義務付けられました。

この場合の「労働者」には、パートタイム労働者や派遣先の派遣労働者も含まれます。しかし、契約期間が1年未満の労働者や、労働時間が通常の労働者の所定労働時間の4分の3未満の短時間労働者は義務の対象外となっています。

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中小企業には実施義務はある?

中小企業など、常時50名未満の労働者を雇用している事業場には、ストレスチェックの実施義務はありません。そのため、ストレスチェックを実施しなくても、罰則が科されることはありません。

現在ストレスチェックの実施義務の対象は、常時 50名以上の労働者を使用する事業場です。

それ以外の事業場(常時 50 名未満の労働者を使用する事業場)については、ストレスチェックの実施は当分の間、努力義務とされていましたが、2024年10月に厚生労働省は従業員数50名未満の小規模事業所に対してもストレスチェックを義務化するという方針を決定しました。

50人未満の中小企業に対するストレスチェックの実施義務はいつから?

従業員50人未満の中小企業に対するストレスチェックの義務化は、2028年までに実施される見通しです。

政府は2025年3月14日、労働安全衛生法の改正案を決定し、従業員50人未満の企業にもストレスチェックの実施を義務付ける方針を示しました。

ただし、具体的な開始時期はまだ確定していませんが、改正法の成立後3年以内、つまり2028年までには施行される予定です。

従業員50人未満の事業所で働く労働者の数は、従業員51人以上の事業所で働く労働者よりも多く、その数は約3,000万人にのぼるとされています。そのため、中小企業におけるストレスチェックの義務化は、多くの企業に大きな影響を与えると考えられます。

また、従業員数が少ない小規模企業では、ストレスチェックを実施するための体制を整えることが難しいケースも想定されるため、厚生労働省は、中小企業が円滑に運用できるよう、マニュアルの作成などを含めた具体的な支援策を検討していく方針です。

ストレスチェックの義務対象企業の未実施率

2017年7月に厚生労働省が発表した「ストレスチェックの実施状況」によれば、実施義務のある事業所から、実施報告書の提出があった割合は、82.9%という結果になっています。

ストレスチェック実施状況(事業場規模別)

事業場規模 50〜99人 100〜299人 300〜999人 1000人以上
ストレスチェック実施の割合 78.9% 86.0% 93.0% 99.5% 82.9%

ストレスチェック実施状況(業種別)

業種 製造業 建設業 運輸交通業 貨物取扱業 商業
ストレスチェック実施の割合 86.0% 81.1% 80.9% 76.6% 79.9%
金融・広告業 通信業 教育・研究業 保健・衛生業 接客娯楽業 清掃・と畜産
93.2% 92.0% 86.2% 83.7% 68.2% 67.0%

引用:ストレスチェック制度の実施状況 (厚生労働省)

 

上記の結果から、8割以上は実施していますが、残りの17.1%の事業場では、義務化されているにもかかわらずストレスチェックを実施していない可能性があります。

さらに、事業場の規模ごとの実施率を見てみると、50~99人の事業場では78.9%、100~299人では86.0%、300~999人では93.0%、1000人以上の事業場では99.5%と報告されています。

この結果から、事業場の規模が小さくなるほど、ストレスチェックの実施率が低く、報告が提出されていないケースが多いことが分かります。

では、ストレスチェックを実施していない事業場には、何らかの罰則が科されるのでしょうか?

ストレスチェックの罰則規定

ストレスチェックを受けない労働者に対する罰則はありません。これは、ストレスチェックの受検するかどうかは本人の自由であり、受検を強制してはいけないとされているからです。

労働者50名以上の事業場の場合、労働安全衛生法第66条10において実施が義務が義務付けられていますが、ストレスチェックの未実施そのものに罰則はありません。

しかし、未実施であることは、安全配慮義務違反に該当する可能性があります。安全配慮義務は、労働者一人一人の安全と健康を守るための種々の配慮が事業者に課せられており、労働契約法第5条に定められています。

さらにストレスチェック実施後は、所轄の労働基準監督署への報告義務があり、それを怠った場合、罰則が課せられることになります。

労働安全衛生法では、ストレスチェック実施後に報告する義務が規定されています。

労働安全衛生法
(報告等)
第100条 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。
2 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、登録製造時等検査機関等に対し、必要な事項を報告させることができる。
3 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

ストレスチェック実施報告を怠ると罰則金最大50万円

もし、ストレスチェックの実施報告を怠ったり、虚偽の報告をした場合は、労働安全衛生法120条5項に基づき、最大50万円の罰金が課される可能性があります。

労働安全衛生法 第十二章 罰則

第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する
(中略)
五 第百条第一項又は第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者

労働者50名未満の事業場については、ストレスチェックの実施への義務はなく(努力義務)、報告への罰則もありません。

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おわりに

ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止のため創設された制度です。労働者50名以上には実施が義務と報告が義務付けられ、報告を怠った場合は罰則が課せられます。

ストレスチェックの集団分析は職場環境改善に有効的に活用することができます。結果の見方についてはこちらを参考にしてみてください。

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参照 労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル

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