ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐための制度として、労働安全衛生法で定められています。
現在は、常時50名以上の労働者を使用する事業場に年1回の実施が義務付けられていますが、「実施しなかった場合に罰則はあるのか?」「報告を怠ったらどうなるのか?」といった不安を持つ企業も少なくありません。
実施が義務付けられているストレスチェックですが、罰則規定はあるのでしょうか?
実施や報告、守秘義務違反に対して企業に対する罰則や、
受検者がストレスチェックの受検を拒否した場合の罰則等について説明いたします。

ストレスチェックの実施義務について
ストレスチェック制度は、労働安全衛生法第66条の10に基づき、2015年12月より常時50名以上の労働者がいる事業場に対して年1回の実施が義務付けられています。
この場合の「労働者」には、パートタイム労働者や派遣先の派遣労働者も含まれます。しかし、契約期間が1年未満の労働者や、労働時間が通常の労働者の所定労働時間の4分の3未満の短時間労働者は義務の対象外となっています。ストレスチェックの対象者についてはこちらにまとめています。
→ストレスチェックの対象者とは?範囲は役員・パート・派遣社員も含むか解説
中小企業には実施義務はある?
一方で、現時点では50名未満の事業場については努力義務にとどまっており、未実施による罰則はありません。
ただし、2025年5月に公布された労働安全衛生法の改正により、50人未満の事業場にもストレスチェックの実施義務が課されることが決定しました。施行時期などの詳細については、今後政令で定められる予定です。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
→50人未満の事業所にもストレスチェック義務化へ!時期・実施方法について解説【労働安全衛生法改正】
ストレスチェックの義務対象企業の未実施率
2017年7月に厚生労働省が発表した「ストレスチェックの実施状況」によれば、実施義務のある事業所から、実施報告書の提出があった割合は、82.9%という結果になっています。
ストレスチェック実施状況(事業場規模別)
| 事業場規模 | 50〜99人 | 100〜299人 | 300〜999人 | 1000人以上 | 計 |
| ストレスチェック実施の割合 | 78.9% | 86.0% | 93.0% | 99.5% | 82.9% |
ストレスチェック実施状況(業種別)
| 業種 | 製造業 | 建設業 | 運輸交通業 | 貨物取扱業 | 商業 |
| ストレスチェック実施の割合 | 86.0% | 81.1% | 80.9% | 76.6% | 79.9% |
| 金融・広告業 | 通信業 | 教育・研究業 | 保健・衛生業 | 接客娯楽業 | 清掃・と畜産 |
| 93.2% | 92.0% | 86.2% | 83.7% | 68.2% | 67.0% |
上記の結果から、8割以上は実施していますが、残りの17.1%の事業場では、義務化されているにもかかわらずストレスチェックを実施していない可能性があります。
さらに、事業場の規模ごとの実施率を見てみると、50~99人の事業場では78.9%、100~299人では86.0%、300~999人では93.0%、1000人以上の事業場では99.5%と報告されています。
この結果から、事業場の規模が小さくなるほど、ストレスチェックの実施率が低く、報告が提出されていないケースが多いことが分かります。
では、ストレスチェックを実施していない事業場には、何らかの罰則が科されるのでしょうか?
ストレスチェックの罰則規定
ストレスチェック未実施でも罰則はある? 「安全配慮義務違反」の可能性
ストレスチェックを実施しなかった場合、労働安全衛生法上の直接的な罰則は規定されていません。
しかし、労働者の安全と健康を確保するための「安全配慮義務(労働契約法第5条)」に違反すると判断される可能性があります。
たとえば、職場のメンタルヘルス不調者が増加したにもかかわらず、事業者がストレスチェックを怠った場合、安全配慮義務違反として損害賠償請求を受けるリスクもあるため注意が必要です。
守秘義務違反には罰則も
ストレスチェックでは、従業員のメンタルヘルスに関する個人情報を取り扱うため、守秘義務の遵守が非常に重要です。
事業者や実施者が検査結果を本人の同意なく上司や人事部に開示した場合、個人情報保護法違反やプライバシー侵害に該当する可能性があります。
また、医師や保健師など実施者には、労働安全衛生法第105条に基づき守秘義務が課されており、違反した場合は同法第119条により「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されることがあります。
労基署への報告義務と罰則|最大50万円の罰金も
さらにストレスチェック実施後は、所轄の労働基準監督署への報告義務があり、それを怠った場合、50万円以下の罰則が課せられることになります。
労働安全衛生法では、ストレスチェック実施後に報告する義務が規定されています。
ストレスチェックの結果報告書について詳しくはこちらにまとめています。
→ストレスチェックの結果報告書は労基署に!記入例・書き方・提出期限・電子申請の方法は?
労働安全衛生法
(報告等)
第100条 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。
2 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、登録製造時等検査機関等に対し、必要な事項を報告させることができる。
3 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。
労働者が受検を拒否した場合の罰則は?
ストレスチェックの受検は、労働者本人の自由意志に基づくものであり、受検を拒否しても罰則はありません。
むしろ、事業者が受検を強制することは法令違反にあたる可能性があります。
企業側は、受検の目的や意義を丁寧に説明し、安心して受けられる環境を整えることが求められます。

ストレスチェック制度では、未実施に直接の罰則はないものの、報告漏れや守秘義務違反には罰金や法的責任が発生する可能性があります。
制度を形式的な義務」として扱うのではなく、職場のメンタルヘルス対策の一環として、適切な運用と情報管理を行うことが重要です。
おわりに
ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止のため創設された制度です。労働者50名以上には実施が義務と報告が義務付けられ、報告を怠った場合は罰則が課せられます。
ストレスチェックの集団分析は職場環境改善に有効的に活用することができます。結果の見方についてはこちらを参考にしてみてください。



