ストレスチェック後の職場環境改善|集団分析の見方や活用方法を解説!

ストレスチェック後の職場環境改善|集団分析の見方や活用方法を解説! ストレスチェック

従業員50名以上の事業場に年1回の実施が義務付けられているストレスチェック。しかし、ストレスチェックの集団分析結果をどのように生かせばいいのか、職場環境改善へ繋げる方法等わかりづらく感じる企業の担当者の方は多いようです。

実施が義務付けられているストレスチェック。毎年行わなければならないなら、その結果を活用し意味あるものにしたいですよね。

今回はストレスチェックの集団分析結果の見方を解説し、その活用方法・職場環境改善への活用についてお伝えいたします。

ストレスチェックを実施する目的とは?

ストレスチェックを実施する目的は、職場環境をチェックし職場環境改善が目的です。従業員のストレス状況をチェックすることがその目的ではありません。

ストレスチェック制度指針には制度の基本的な考え方が明記されています。

新たに創設されたストレスチェック制度は、これらの取組のうち、特にメンタルヘルス不調の未然防止の段階である一次予防を強化するため、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個々の労働者のストレスを低減させるとともに、検査結果を集団ごとに集計・分析し、職場におけるストレス要因を評価し、職場環境の改善につなげることで、ストレスの要因そのものを低減するよう努めることを事業者に求めるものである。

(中略)

事業者は、ストレスチェック制度が、メンタルヘルス不調の未然防止だけでなく、従業員のストレス状況の改善及び働きやすい職場の実現を通じて生産性の向上にもつながるものであることに留意し、事業経営の一環として、積極的に本制度の活用を進めていくことが望ましい。

(引用:ストレスチェック制度指針)

職場環境改善することのメリット

職場環境改善することは、従業員、企業双方にとってメリットがあります。従業員の健康度が高まることで全体の生産性のアップや、コスト低下が期待できます。

もし職場環境が悪い場合、従業員のパフォーマンスが低下し、それに伴い生産性も下がる可能性があります。また、従業員の健康リスクを見過ごしてしまうと、休職者の増加に繋がり、復職後も再発のリスクがある状態となります。このことにより会社にとってコストが大きくなってしまいます。

働きやすいよう職場環境改善を行うことは、従業員の健康度がアップすることによる会社にとってのコスト低下や、従業員のパフォーマンス向上による生産性のアップが期待できます。

職場環境改善にとって有用であるストレスチェックは、事業経営にとって重要といえます。

集団分析結果の見方

ストレスチェック集団分析量ーコントロール判定図

ストレスチェック集団分析職場の支援判定図

ストレスチェックを職場環境改善に繋げるには、集団分析の結果を活用します。集団分析の結果は、「仕事のストレス判定図」を見ます。

仕事のストレス判定図からわかること

仕事のストレス判定図は次の4つの仕事上のストレス要因に注目し、ストレスの大きさと健康への影響を判定します。

仕事のストレス判定図からわかるストレス要因

仕事のストレス判定図からわかるストレス要因は次の4つです。

  1. 仕事の量的負担
  2. 仕事のコントロール
  3. 上司の支援
  4. 同僚の支援

仕事のストレス判定図の見方

仕事のストレス判定図は「量ーコントロール判定図」と「職場の支援判定図」2つの図からなります。

さまざまな企業の従業員計約 3 万人の平均を全国平均とし、それを基準に集計部署のストレス度を相対的に評価します。

量ーコントロール判定図

量ーコントロール判定図では、「仕事の量的負担」と「仕事のコントロール」をストレス要因としたストレス度がわかります。

ストレスチェック集団分析量ーコントロール判定図

量ーコントロール判定図からは、仕事の量的負担と、仕事の裁量権・自由度をストレス要因としたストレス度がわかります。

縦軸は仕事のコントロール、横軸は仕事の量的負担を示しています。

【ストレスが高い】
仕事のコントロールが低く、仕事の量的負担が高いほど、ストレスが高い状態を示します。すなわち、右下に表示されるほど、ストレスが高いということになります。

【ストレスが低い】
仕事のコントロールが高く、仕事の量的負担が低いほど、ストレスが低い状態を示します。すなわち、左上に表示されるほど、ストレスが低いということになります。

 

職場の支援判定図

職場の支援判定図からは「上司の支援」「同僚の支援」をストレス要因としたストレス度がわかります。

ストレスチェック集団分析職場の支援判定図

「上司の支援」(横軸)と「同僚の支援」(縦軸)の点数から、同様に健康問題の危険(リスク)を 判定しています。同僚および上司からの支援度が低いほど、すなわちプロットが左下にあればある ほど、リスクが高くなります。

職場の支援判定図からは、上司の支援と、同僚の支援をストレス要因としたストレス度がわかります。

縦軸は同僚の支援、横軸は上司の支援を示しています。

【ストレスが高い】
上司の支援が低く、同僚の支援が低いほど、ストレスが高い状態を示します。すなわち、左下に表示されるほど、ストレスが高いということになります。

【ストレスが低い】
上司の支援が高く、同僚の支援が高いほど、ストレスが低い状態を示します。すなわち、右上に表示されるほど、ストレスが低いということになります。

ストレスチェックの集団分析結果の見方はこちらでも詳細に説明しています

ストレスチェックの集団分析結果の見方・職場環境改善方法を厚労省の検討会メンバーが解説!
従業員50名以上の事業場に1年に1回実施が義務付けられているストレスチェック。 実施後、所轄の労基署にストレスチェック報告書を提出することで実施完了となりますが、ストレスチェックの結果を職場環境改善等に有効活用するには、集団分析結果が重要...

健康リスクとは何か

仕事のストレス判定図を点数で表現したものが健康リスクです。健康リスクから、仕事のストレスに関するリスクがどの程度あるのか一つの目安として確認することができます。

例えば、次のような結果が出た場合、具体的に何に着目したらよいか健康リスクとともに見ていきます。

ストレスチェックの集団分析の具体例

上記の判定図を点数化すると健康リスクがわかります。

尺度 平均点数 健康リスク(全国平均=100とした場合)
量的負担 7.0 量-コントロール判定図(A) 100 総合健康リスク
(A)×(B)/100

110

コントロール 6.0
上司の支援 7.6 職場の支援判定図(B) 110
同僚の支援 7.0

健康リスクには「健康リスクA」「健康リスクB」「総合健康リスク」があります。

健康リスクA

健康リスクAとは、「量-コントロール判定図」で表現されるストレス要因の「仕事の量的負担」「仕事のコントロール」から評価された業務的負荷に関するリスクを示しています。

健康リスクB

健康リスクBとは、「職場支援判定図」で表現されるストレス要因の「上司の支援」「同僚の支援」から評価された職場支援に関するリスクを示しています。

健康リスクはいずれも、数値が高いほどリスクが高い状態を表しています。

総合健康リスク

総合健康リスクは「健康リスクA」「健康リスクB」総合的に評価し、従業員の健康にどの程度影響を与えるかの指標となります。

総合健康リスクは、全国平均を100とし、仕事のストレスの特徴から予想される心理的ストレス反応や検査の異常値、病気の発生などの健康問題の危険度を見ることができます。

算出式は次の通りです。

総合健康リスク=「健康リスクA」×「健康リスクB」÷100 

総合健康リスクも、数値が高いほどリスクが高い状態を表しています。

改めて、先程の健康リスクの表を見てみましょう。

尺度 平均点数 健康リスク(全国平均=100とした場合)
量的負担 7.0 量-コントロール判定図(A) 100 総合健康リスク
(A)×(B)/100

110

コントロール 6.0
上司の支援 7.6 職場の支援判定図(B) 110
同僚の支援 7.0

上記の結果は、総合健康リスクが110点となっています。
これが意味することは、従業員の健康への悪影響が10%高まっているということです。

健康リスクの点数については次のようなケースが見られる傾向があります
120点以上・・・・・・潜在的な問題があることが考えられストレス要因を探り対応が必要
150点以上・・・・・・健康問題が表面化し早急な対応が必要

上記はあくまでもひとつの指標であるため、数字には現れない問題がある可能性も考える必要があります。

集団分析結果を活用する方法

それでは、仕事のストレス判定図や健康リスクはどのように職場環境改善に生かせばいいでしょうか。

集団分析結果から、どの分野で職場環境改善を行うべきか、その優先度の判断や、組織全体のマネージメント状態等がわかります。それぞれ確認するポイントを見ていきます。

健康リスクAが高い場合

「仕事の量的負担」「仕事のコントロール」から評価された業務的負荷に関するリスクを示す「健康リスクA」が高い場合、職場支援等の労務管理に関することの改善が必要ということがわかります。

数値が高いほどリスクが高い状態を表しています。

労務管理の改善具体例

  • 個人のスキルを上げる研修を行う
  • 適切な配置転換を行う
  • 人員の増員
  • 物品と資材の整理
  • 対応をマニュアルにまとめる
  • 特定の個人やチームに業務の偏りがないか確認をする

健康リスクBが高い場合

「上司の支援」「同僚の支援」から評価された職場支援に関するリスクを示す「健康リスクB」が高い場合は、職場環境に関することの改善が必要ということがわかります。

数値が高いほどリスクが高い状態を表しています。

職場環境の改善具体例

  • ミーティングを定期的に行う
  • 打合せスペースを作る
  • 上司が在席する時間を決める
  • スケジュール共有表を活用する
  • 社内イベントを活用する
  • 適切な助言や励まし
  • 方針や見通しを共有する

総合健康リスクについて

総合健康リスクは健康リスクAと健康リスクBを総合した結果です。全国平均を100として、それよりも高い場合はリスクが高いということになります。

先に述べたように、健康リスクの点数については次のようなケースが見られる傾向があります
120点以上・・・・・・潜在的な問題があることが考えられストレス要因を探り対応が必要
150点以上・・・・・・健康問題が表面化し早急な対応が必要

健康リスクの数値は一つの目安です。それぞれ検証する必要があります。

ストレスチェック後の職場環境改善の具体的な取り組み

上記に挙げたもの以外に、職場改善のための具体的な取り組みをご紹介します。

上司に相談しやすい環境を整える

従業員が必要なときに上司や責任者に問題を報告しやすくするためには、日常的に職場の環境を整えることが大切です。

具体的には、1on1など上司に相談する機会を定期的に設けたり、サブリーダーを配置したり、相談しやすい職場のレイアウトを工夫することが挙げられます。

職場や個人的な悩みや健康について相談できる窓口の設置

心の健康や悩み、ストレス、さらには職場内の人間関係について、気軽に相談できる窓口や体制を整えることが大切です。

例えば、社内にメンタルヘルス相談窓口を設けることが考えられます。

セルフケア・ラインケア研修の実施

日々のストレスを緩和するためのセルフケア研修や、管理監督者が部下のメンタルヘルス不調に気づき適切なコミュニケーションをとる管理職のためのラインケア研修を実施します。

メンタルヘルスについて正しい知識を持つことで、自分自身や部下の異変に気づきやすくなります。

おわりに

ストレスチェックの結果を職場環境改善に生かすための集団分析の見方について解説してきました。仕事のストレス判定図から計算される健康リスクは重要な指標です。

また集団分析の結果は、産業保健スタッフや専門知識を有する第三者を交えることで客観的に評価し、職場環境改善につなげることが重要です。

ストレスチェックの集団分析の他、健康診断の集計結果などの情報も考慮して総合的にリスク評価を行うことで、職場環境改善をさらに効果的に行うことができます。

ストレスチェック8年間の経験と40万人の実績がある日本CHRコンサルティングでは、厚労省ストレスチェック制定委員メンバーの精神科産業医が運用を整備し、300社以上のストレスチェック支援経験のある組織コンサルタントが職場環境改善をサポートします。全国対応しております。お気軽にお問い合わせ下さい。

ストレスチェック

記事監修

精神科医専門医・日本医師会認定産業医。
川崎医科大学卒、1988年渡辺クリニック(2018年改称)を開設。
その後、厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の在り方検討委員会」委員、内閣府「自殺対策官民連携協働会議」委員、公益財団法人日本精神神経科診療所協会会長など歴任。
現在、医療法人メディカルメンタルケア横山・渡辺クリニック名誉院長、大阪大学医学部神経科精神科非常勤講師、一般社団法人日本精神科産業医協会共同代表理事ほか。
ストレスチェック法制化においても、厚生労働省「ストレスチェック制度に関する検討会」「ストレスチェック項目に関する専門検討会」「ストレスチェック制度マニュアル作成委員会」などの委員を務める。

ストレスチェック 人事労務担当者向け 職場環境改善
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