従業員50名以上の職場では毎年行われるストレスチェック。
ストレスチェックを受けられた方の不安として、「個人結果は上司に見られるのだろうか?」「ストレスチェックの結果が、人事評価に影響があるのでは?」と心配される方もいるかもしれません。
今回は、ストレスチェックの個人結果は上司に見られるのか、閲覧範囲や同意取得等の開示のポイントについて解説します。
ストレスチェックの個人結果は上司に見られる?
ストレスチェックの個人結果とは、「ストレスの程度の評価結果」「高ストレスか否か」「医師の面接指導が必要か否か」という内容です。これら全てについてストレスチェックの個人結果は、本人の同意なくして上司見られることはありません。
ストレスチェックの個人結果は、検査を実施した医師、保健師等の実施者から直接本人に通知され、本人の同意なく企業側に提供することは禁止されています。
人事権を持つ者はストレスチェックの実施に携わってはいけない
労働安全衛生法において、ストレスチェックの受検者について人事権を持つ者は、ストレスチェックの実施事務に携わってはいけないと明記されています。ここでいう人事権を持つ者とは、直接的に人事を決定する権限を持つことや、人事について一定の判断を行う権限を持つことをいいます。しかし、人事課等の人事を担当する部署に所属している場合であっても、このような権限を持たない場合はストレスチェックの実施事務に携わることができます。
ストレスチェックの実施事務に人事権を持つ者は携わることができないのは、ストレスチェック結果が受検者の意に反して人事上の不利益な取扱いに利用されることがないようにするためです。
ストレスチェックの目的は、従業員のメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)であり、実施にあたっては全ての段階において、受検者にとって不利益な取扱いは禁じられています。
(検査の実施者等)
2 検査を受ける労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事してはならない。引用:労働安全衛生規則 第一編 第六章 健康の保持増進のための措置(第四十二条の二-第六十一条の二)
ストレスチェックの結果は「実施者」と「実施事務従事者」が取り扱う
ストレスチェックを実施するにあたり、その責任は「事業者」にあります。
ストレスチェック制度の実施計画は「ストレスチェック制度担当者」が策定し、通常は企業のメンタルヘルス推進担当者や衛生管理者がこの役割を担います。
その策定をうけて、産業医や保健師などが「実施者」となりストレスチェックを実施します。
実施者の指示に従い、ストレスチェックに関する事務を行うのは、産業保健スタッフや事務職員の「実施事務従事者」です。
ストレスチェックの実施者と事務従事者の役割等については下記の記事をご参照ください。
https://chr.co.jp/blog/stresscheck-office/
ストレスチェックの結果|閲覧範囲
ストレスチェックの結果の閲覧範囲や権限は次のようにまとめられます。
個人結果の閲覧範囲
「ストレスの程度の評価結果」「高ストレスか否か」「医師の面接指導が必要か否か」というストレスチェックの個人結果の閲覧範囲は、本人と実施者のみです。
ストレスチェックの個人結果は、検査を実施した医師、保健師等の実施者から直接本人に通知され、本人の同意なく企業側に提供することは禁止されています。
高ストレス判定は会社に伝わる?
高ストレス判定の結果が出た時点では、会社にその結果は伝わることはありません。もし高ストレスと判定後、医師との面接を希望する場合は、どうなるのでしょうか?
面接指導を申し込んだ場合は?
ストレスチェック制度上の面接指導の申し込みをした場合は、ストレスチェックの結果を事業者に開示することになります。面接内容については、就業上の措置の必要性の有無等について担当医から会社側に「意見書」として伝えられます。
この結果を受けて、会社側は従業員に必要な対策や職場環境や就業内容の改善を行わなければなりません。面接の希望の有無や面接内容について受検者にとって不利益な取扱いは禁じられています。
面接時に同意書がない場合は?
面接を希望した際、同意書がない場合があります。その場合は、同意書面がなくても、面談を申し込むことによって開示に同意したこととみなされます。
ストレスチェックの守秘義務違反は刑罰対象
ストレスチェックや面接指導で個人の情報を取り扱った者(実施者とその補助をする実施事務従事者)には、法律で守秘義務が課されており、違反した場合は刑罰の対象となります。
集団結果の閲覧範囲
集団ごとの集計・分析結果については、従業員の同意を取ることなく、実施者から企業側に結果を提供することができます。その理由は、通常集団結果からは個人を特定することができず、結果が個人の評価に影響を及ぼすことがないためです。
しかし、集計の単位が10名未満の場合は個人が特定される可能性があるため、原則として企業側へ結果を提供することができませんが、工夫次第では実施することができます。
ストレスチェック結果の開示規定と同意を取得するには
ストレスチェック結果の開示には受検者本人の同意が必要
ストレスチェック結果の開示には従業員である受検者本人の同意が必要となります。
事業者は、本人の同意を得て提供されたストレスチェックの結果を、従業員の健康を維持するための就業上の措置等に活用することが求められます。
ただし、業務上の対策に必要な範囲を超えて、その従業員の上司や同僚などにストレスチェックの結果を共有することは認められていません。
ストレスチェックを受検したかどうかの情報は個人情報にはあたらない
受検対象者がストレスチェックを受けるかどうかは自由です。受検したかどうかに関するデータは個人情報には当たらないため、従業員の同意なしに事業者に提供可能です。
ただし、衛生委員会などで調査をして、その受検状況を提供する目的を明確にすることや、未受検者が不適切に扱われることを防ぐ対策や社内のルールが必要です。
ストレスチェックの結果開示について同意取得に関するルール
それではストレスチェックの結果開示についてどのように従業員から同意を取得したらよいのでしょうか。
まず、結果開示のタイミングについては、まず受検者本人に結果を通知したあとで、事業者への提供の同意を取得することが必要であると厚生労働省の労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアルにおいて示されています。
同意取得の方法は次の通りです。
① ストレスチェックを受けた労働者に対して当該ストレスチェックの結果を通知した後に、事業者、実施者又はその他の実施事務従事者が、ストレスチェックを受けた労働者に対して、個別に同意の有無を確認する方法。
② ストレスチェックを受けた労働者に対して当該ストレスチェックの結果を通知した後に、実施者又はその他の実施事務従事者が、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた労働者に対して、当該労働者が面接指導の対象であることを他の労働者に把握されないような方法で、個別に同意の有無を確認する方法。
同意の取得について強要してはならず、また同意しなかったことを理由に受検者に対する不利益な取扱を防止するために社内規定を策定することが重要です。
おわりに
ストレスチェックの結果の閲覧範囲について説明してきました。個人結果の閲覧は、本人と実施者のみとなり、本人の同意なくして会社側に提供されることは禁止されています。
ストレスチェックの結果を業務で知り得る立場にある者には、法律で守秘義務が課されており、違反した場合は刑罰の対象となります。
ストレスチェック8年間の経験と40万人の実績がある日本CHRコンサルティングでは、厚労省ストレスチェック制定委員メンバーの精神科産業医が運用を整備し、300社以上のストレスチェック支援経験のある組織コンサルタントが職場環境改善をサポートします。全国対応しております。お気軽にお問い合わせ下さい。