ストレスマネージメントとは?ストレスにおける3つの段階と5つのストレスコーピング

ストレスマネージメントとは?ストレスにおける3つの段階と5つのストレスコーピング ストレスコーピング

多くの人を悩ませるストレス。ストレスに対処することについて、まず思い浮かぶのが、気分転換をする、趣味など好きなことに集中するなど、「ストレス解消」が思い浮かぶのではないでしょうか?

確かにそれも有効ではありますが、ストレスの原因から何が問題なのか、それに対応する方法をとることが重要です。

精神的・肉体的に負担となるストレスをいかに処理したらよいのか、その対策が「ストレスマネージメント」といいます。

今回はストレスとは何かを明らかにし、ストレスマネージメントの方法について説明します。

ストレスとは

ストレスとは何か

「ストレスがかかる」の「ストレス」とは、外部の刺激によって心理的・身体的に緊張状態が生じることです。

外部からの刺激をストレッサーといい、ストレッサーに適応しようとして、こころや体に生じた様々な反応をストレス反応と言います。

ストレッサーは主に次の4つに分けることができます。

【物理的ストレッサー】 温度による刺激、騒音などによる刺激
【化学的ストレッサー】 酸素の欠乏・過多、薬害、栄養不足など
【生物的ストレッサー】 病原菌などによる病気によるもの
【精神的ストレッサー】 人間関係のトラブル、精神的な苦痛、怒り、不安、憎しみ、緊張など

このようなストレッサー、すなわちストレスの基に対処することを、ストレスコーピングといいます。

ストレッサーのうち、一般的に「ストレスがたまる」と感じ、人を悩ませている原因のほとんどは「精神的ストレッサー」によるものです。このような精神的・肉体的に負担となるストレスをいかにして処理したら良いのでしょうか。次にストレスマネージメントやストレスコーピングについて説明します。

ストレス処理における3つの段階と5つの方法

ストレスコーピング|ストレス処理における3つの段階と5つの方法

ストレスマネージメントにおいて重要なのは、原因は何なのか、問題解決のターゲットに応じた処理方法をとることです。ストレス処理における3つの段階と5つの方法について説明します。

1段階|問題の解決を図る

問題焦点型ストレスコーピング

まず、1段階目としては、ストレスの原因となっている問題の解決を図ることです。例えば人間関係が悪化し、ストレスを感じている場合、その人との関係を改善することが、ストレス状況が解決することに繋がります。

この段階で有用なのはストレスの基になっている問題そのものに向き合う問題焦点型ストレスコーピングです。

問題焦点型ストレスコーピング

問題焦点型ストレスコーピングとは、ストレスの原因となっている問題そのものの解決を試みることです。

何が問題となっているのか明らかにし、それに対応する対策をたて、問題解決のために積極的に行動し解決をはかろうとする方法です。

例えば、むし歯になった場合、痛み止めで症状を緩和し続けていては、むし歯そのものは悪化してしまいます。治療をすることで根本的な解決となります。

本質的な対応は苦痛を伴うことが多く、避けてしまうことも少なくないです。特に人間関係のストレスにおいては、関係が悪化している相手と向き合う必要があります。しかし、お互いが理解し合うところまで話し合ってお互いが相手を理解し受け容れることができるようになれば、その相手との関係はストレスではなくなります。

2段階|認知を変える

認知修正型ストレスコーピング

2つ目の段階は、認知を変えるということです。

自分にとってストレスでありネガティブだと思っている状況は、本当にそうであるか、意味づけを改めて考えてみるということです。

例えば、自分にとって無意味なものと思っていた仕事が、別の角度からみたら自分にとって成長につながると認識を転換できれば、嫌だと感じていた仕事がストレスではなくなります。

このように自分にとっての意味付け、受け取り方を認知といい、それを修正するストレスコーピングを認知修正型ストレスコーピングといいます。

認知修正型ストレスコーピング

認知修正型ストレスコーピングの「認知」とは、「出来事」に対する見方や受け取り方のことをいいます。

何か出来事が生じた時、ネガティブな受け取り方(=認知)をすると、そのあとネガティブな気分になり、ネガティブな行動につながってしまいます。

ひとつの出来事に対して、様々な解釈が可能です。しかし、自分にとって嫌な解釈を採用してしまえば、その結果として、不安、抑うつ、怒り、嫉妬などネガティブな感情が生じその後の行動に影響を与えます。

例えば職場で上司に無視されたような気がするというケースをみてみましょう。自分はその上司に嫌われていると受け取ってしまうと憂うつな気分になります。そして、上司から距離をとり、さらに上司に対してネガティブな感情をいだき、仕事自体も嫌になってしまうということにもなりかねません。

このようなネガティブなスパイラルに陥らないためにも物事の受け取り方(認知)に関して改めて検証してみるというのが、認知修正型ストレスコーピングの基本です。

現状を客観的に把握し、自分の認識が思い込みかもしれないと気付き、そこから他の考え方ができれば、気持ちや感情も変わってきます。

冷静になれば、適切な行動をとることができ、それにより状況も改善していきます。

3段階|ストレス反応の軽減を図る

3つめの段階の「ストレス反応の軽減を図る」とは、一般的にいわれる「ストレス解消行為」です。

ストレスと感じられる状況から生じるストレスを緩和するような行動をとることで、大きくわけて、2つの方法があります。

ひとつは、「感情処理型ストレスコーピング」。もうひとつは、「充電・活性化型ストレスコーピング」です。それぞれ見ていきます。

感情処理型ストレスコーピング

感情処理型ストレスコーピング

ストレス反応の軽減を図る方法のひとつは、感情処理型ストレスコーピングです。感情処理型ストレスコーピングは、自分の気持ちを話し、他者に聴いてもらうことによって気持ちを発散させることで怒りや不安などの情動の低減する方法です。「愚痴を聞いてもらってすっきりしました」といったことが代表的なものです。

話を聴いてもらって楽になった、あるいは愚痴を聞いてもらって元気が出たといったことはよく言われることで、誰しも経験のあることだと思います。

人間は、自分の気持ちを理解してくれた感じることで楽になったり、元気が湧いてくるというのは事実です。そのため、自分の気持ちを話せる相手がいることはストレスの軽減につながり、同時に意欲の活性化につながります。

充電・活性化型ストレスコーピング

充電・活性化型ストレスコーピング

ストレス反応の軽減を図るもうひとつの方法は、「充電・活性化型ストレスコーピング」です。

これは一般的にいわれるストレス解消行為にあたります。ストレスの解消方法は様々ですが、エネルギーを充電して、活力の活性につながる3つの方法を紹介します。

充電・活性化型ストレスコーピングの3R
Rest(休息)

休息によって、エネルギーの充電とバランスの回復を促します。特に重要なのは睡眠です。睡眠は精神的・肉体的な疲れを回復し、それにより気持ちも落ち着くことは少なくありません。

Relaxation(リラックス)

リラックスするとは、身体と精神の緊張緩和につながる行動をいいます。リラックス方法は人それぞれ様々ありますが、たとえば、のんびり散歩する、音楽を聴く、あるいは、ヨガ、ストレッチなどにより、身体の緊張と同時に精神的な緩和を図ることが挙げられます。身体の緊張の緩和は、精神的な緊張の緩和にもつながります。

Recreation (活力の回復)

活力の回復のためには、「楽しむ」ことが大事です。楽しむことにより、活力が活性化し、ストレス状況への抵抗力やチャレンジする気力が湧いてくることに繋がります。

以上、「問題の解決を図る」「認知を変える」「ストレス反応の軽減を図る」という3つのストレス処理の段階と、それに応じたストレスコーピングについて見てきました。

最後に、3つのストレス処理の段階のすべてにおいて用いることができる「支援探索型ストレスコーピング」について説明します。

支援探索型ストレスコーピング

支援探索型ストレスコーピング

支援探索型ストレスコーピングとは、自分のストレスになっている問題を解決するために、友人や家族の他、関係機関や専門家への相談や、情報の収集、助言を受けるという行動をいいます。

困難な状況から脱却するためには、1人で悩み背負うことは、時に誤った方向に進みかねません。専門家や専門機関から適切な支援を受けることが重要です。

おわりに

以上、ストレスにおける3つの段階と5つのストレスコーピングを中心に、ストレスマネージメントについて説明してきました。

仕事でもプライベートでも私たちの暮らしには、様々なストレッサーが存在します。ストレスを感じるのは当然のことであり、ストレスの原因に応じたストレスコーピングを活用し、心身ともに健康に過ごすことが大切です。

また、楽しめることがない、眠れないなどが続く場合はひとりで悩まず専門医に相談することをおすすめします。

(出典:『実践!ストレスマネージメント』渡辺洋一郎 p.57-67

ストレスチェック8年間の経験と40万人の実績がある日本CHRコンサルティングでは、厚生労働省ストレスチェック制定委員メンバーの精神科産業医によるストレスマネージメント・ストレスコーピング等の研修を実施しております。オンライン開催も実施しており、全国対応しております。お気軽にお問い合わせ下さい。

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記事監修

精神科医専門医・日本医師会認定産業医。
川崎医科大学卒、1988年渡辺クリニック(2018年改称)を開設。
その後、厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の在り方検討委員会」委員、内閣府「自殺対策官民連携協働会議」委員、公益財団法人日本精神神経科診療所協会会長など歴任。
現在、医療法人メディカルメンタルケア横山・渡辺クリニック名誉院長、大阪大学医学部神経科精神科非常勤講師、一般社団法人日本精神科産業医協会共同代表理事ほか。
ストレスチェック法制化においても、厚生労働省「ストレスチェック制度に関する検討会」「ストレスチェック項目に関する専門検討会」「ストレスチェック制度マニュアル作成委員会」などの委員を務める。

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