ストレスチェックは意味ない?意味があるものにするための方法を解説!

ストレスチェック

50名以上の従業員がいる事業場には、1年に1回の実施が義務付けられているストレスチェック。

ストレスチェックによって、自身のストレス状況について気づきを得ることができますが、「ストレスチェック、受ける意味あるの?」「結果を具体的にどのように活かし、メンタルヘルスの向上に役立てていいのかわからない」という声も聞かれます。

ストレスチェックは自身のストレス状況について気づきを得る重要な機会です。ストレスチェックの結果は、心の健康の向上につながる資料となります。

今回は、なぜストレスチェックに意味がないと感じられてしまうのかその原因を確認し、ストレスチェックを意味あるものにするための方法についてお伝えします。

ストレスチェックとは

ストレスチェックは、労働者のストレス状況を把握し、自身のストレスに気づくきっかけを提供することで、職場環境の改善につなげる制度です。

これにより、働きやすい職場づくりを推進し、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐこと(一次予防)を主な目的としています。

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
引用:労働安全衛生法(昭和四十七年六月八日法律第五十七号)

具体的には、労働者がストレスに関する質問票(選択回答)に記入し、それを集計・分析することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べます。

この制度は、労働者が50人以上いる事業所では、2015年12月から毎年1回、全ての労働者に対して実施することが義務付けられています。

ストレスチェックの結果、ストレスが高い状態と判定された労働者は、医師の面接指導を受けることができます。また、事業者は、ストレスチェック結果を、部や課、グループなどの一定規模の集団ごとに集計・分析した結果等を踏まえて、職場環境の改善を行うことが努力義務となっています。

このように、ストレスチェック制度は、労働者自身のストレス状態の把握と、職場環境の改善を通じて、メンタルヘルス不調の未然防止を目指す重要な取り組みです。

ストレスチェックに意味ないと感じる理由

従業員が50名以上いる事業場では実施が義務化されているストレスチェックですが、受検者・実施者それぞれで「ストレスチェックに意味ない」と感じる方が少なくはないようです。どのような理由から「ストレスチェックに意味ない」と感じるのか見てみましょう。

結果が十分に活用されていない

ストレスチェックを実施しても、その結果が適切に活用されなければ、従業員にとって「受けるだけで何の変化もない」と感じられてしまいます。結果を有効に活用しなければ、従業員のストレス状態を正確に把握できず、職場環境の改善にもつながりません。特に、高ストレス者へのフォローアップ面談が形式的に終わってしまうと、従業員は「相談しても意味ない」と感じ、今後のストレスチェックへの信頼を失う可能性があります。

また、フォローアップが不十分だと、実際にメンタルヘルス不調を抱えている従業員が適切な支援を受けられず、最悪の場合、休職や退職といった事態に至ることもあります。従業員のメンタルヘルスを本当に改善するためには、ストレスチェックの結果を個別対応だけでなく、組織全体の働き方改革やサポート体制の見直しに活かすことが不可欠です。

受検率の低さ

ストレスチェックの受検率が低いと、集団分析の精度が下がり、職場環境の問題点を正確に把握することが難しくなります。また、受検率の低さは、職場の文化や従業員の意識による影響を受けることが多く、特に「このようなチェックは意味ない」といった認識が広まると、受検を避ける人が増えてしまいます。さらに、ストレスチェックの目的やメリットが十分に説明されていない場合、「受ける必要がない」と考えてしまう従業員も多くなります。

こうした状況を改善するためには、ストレスチェックが従業員の健康維持にどのように役立つのかを具体的に示し、結果の活用方法を明確にすることが重要です。例えば、ストレスチェックの結果をもとに職場環境の改善が実施された成功事例を共有することで、従業員が受検する意義を感じやすくなります。

正直に回答しづらい環境

「結果が会社に知られるのではないか」「評価に影響するのではないか」といった不安から、従業員が本音で回答しにくいケースがあります。特に、過去に個人情報が漏洩した経験がある企業や、職場の雰囲気がオープンでない環境では、このような懸念がより強くなります。従業員が安心して回答できる仕組みを整えることが求められます。例えば、匿名での回答を可能にする、結果の取り扱いについて事前に詳細を説明する、上司や経営陣が率先してストレスチェックの重要性を強調するなどの施策が有効です。

このような心理的な抵抗感があると、ストレスチェックのデータの信頼性が低くなり、実態を正しく把握することができません。その結果、組織としてのストレス対策の精度が低下し、本来の目的である職場環境の改善やメンタルヘルス支援につながらなくなってしまいます。

目的が不明確

ストレスチェックの目的や意義が従業員に十分に伝わっていない場合、「なぜ受けなければならないのか」「受けても意味ないのでは」と疑問を抱くことがあります。その結果、ストレスチェックが形骸化し、実施すること自体が目的になってしまうことも少なくありません。

特に、従業員が「形だけの制度」と感じてしまうと、積極的に活用しようという意識が薄れ、本来の意義が失われてしまいます。また、ストレスチェックがどのように職場環境の改善に結びつくのか、具体的な事例を示さないと、従業員の納得感が得られにくくなります。

企業側は、ストレスチェックの結果をどのように活用するのかを明確に説明し、職場環境の改善に役立てている実績を示すことが重要です。例えば、過去のストレスチェックの結果をもとに、働き方改革を実施し、残業時間の削減や休暇取得率の向上につなげた事例を共有することで、従業員の意識が変わる可能性があります。

このようにストレスチェックは様々な理由から「意味ない」と感じられることがあります。しかし実際にストレスチェックは意味がないのでしょうか?

企業にとってストレスチェックは、従業員のメンタルヘルスを把握し、問題の早期発見と対策が可能になり、従業員の働く意欲や生産性の向上、離職率の低下につながる可能性があります。

受検者個人にとってストレスチェックは、現在の自分自身のストレス状況を客観的に把握し、適切なケアにつながる重要な機会です。

ストレスチェックを意味あるものにするためにも、「そもそもストレスチェックをなぜ行うのか」についてストレスチェックの目的を改めて確認しましょう。

ストレスチェックの目的

それではストレスチェックのそもそもの目的とはどのようなものでしょうか?改めて振り返ってみましょう。

メンタルヘルスの維持・向上

ストレスチェックは、従業員のストレスの程度やその要因を把握するための重要な手段です。定期的に実施することで、従業員が自分のメンタルヘルスの状態を理解し、早期に問題に気づくことができます。

これにより、必要な支援や対策を講じることが可能となり、メンタルヘルスの維持や向上が図られます。具体的には、ストレスの原因を特定し、必要に応じてカウンセリングや心理的支援を提供することが含まれます。

職場環境の改善

ストレスチェックの結果は、職場全体のストレス要因を分析するための貴重なデータとなります。企業はこのデータを活用して、どのような職場環境や業務内容がストレスを生じさせているのかを特定し、改善策を講じることができます。たとえば、業務負担の見直し、コミュニケーションの促進、職場の人間関係の改善などが挙げられます。

これにより、従業員がより働きやすい環境を整えることができ、結果として生産性の向上にもつながります。

従業員の健康管理

 ストレスチェックは、従業員自身が自分の健康状態を見つめ直すきっかけとなります。自分のストレスレベルやその影響を理解することで、自己管理の意識が高まり、ストレス対策を自ら講じることができるようになります。

たとえば、リラクゼーション法や趣味の活動、運動など、ストレス解消のための具体的な行動を取ることが促進されます。また、企業側も従業員の健康を支援するためのプログラムやサービスを提供することができ、健康的な職場づくりを推進することが可能となります。

ストレスチェック制度に対して「ストレスチェックは意味ない」と感じる人もいますが、厚生労働省の調査では、実際に効果があったことが確認されています。では、具体的にどのような効果が報告されているのか、詳しく見ていきましょう。

ストレスチェックの効果についての調査結果

ストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐための一次予防策として導入されています。この制度の効果について、厚生労働省の資料では次の内容が報告されています。

労働者のセルフケア意識の向上

ストレスチェックの実施により、労働者自身が自分のストレス状態を認識し、セルフケアへの関心が高まることが確認されています。具体的には、IT関連企業の労働者を対象とした研究で、ストレスチェック結果のフィードバックを受けた後、ストレス対処の意欲が増し、その意欲は2か月後まで維持されていたと報告されています。

メンタルヘルスに理解のある職場風土の醸成

事業者の27.8%が、ストレスチェック制度の効果として「メンタルヘルスに理解のある職場風土の醸成」を挙げています。このことは、職場全体でメンタルヘルスへの理解と支援の意識が高まる効果を示しています。

メンタルヘルス対策の進展

ストレスチェック制度の導入により、事業場におけるメンタルヘルス対策が進展することが確認されています。具体的には、制度を開始した事業場では、心の健康づくり計画の進捗やメンタルヘルス対策の重要度の増加、早期発見と対応の対策の新規開始などが、未導入の事業場と比較して有意に高い割合で報告されています。

 

参照:ストレスチェックの効果に関する調査研究結果等(厚生労働省)

 

このように、ストレスチェックの効果が実証された調査報告もあります。しかし、ストレスチェックをより有効に活用するためには、どのような工夫が必要なのでしょうか?

ストレスチェックを意味のあるものにするための方法

ストレスチェックを効果的に活用し、従業員のメンタルヘルスを向上させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

ストレスチェックの目的と意義を従業員に周知する

ストレスチェックの目的や重要性を従業員にしっかりと伝えることが大切です。これにより、受検率の向上や正直な回答が促され、より正確なデータを収集することができます。従業員が「なぜストレスチェックを受けるのか」を理解することで、チェックの形骸化を防ぐことができます。

さらに、具体的な事例や過去の成功例を交えて説明することで、ストレスチェックが単なる形式的なものではなく、実際に職場環境の改善につながることを理解してもらうことができます。また、企業側がストレスチェックの結果をもとに積極的な改善策を講じる姿勢を見せることで、従業員の意識も変わりやすくなります。例えば、ストレスチェックの結果を定期的に社内で共有し、職場のストレス要因を改善するためのワークショップ等の場を設けることも有効です。

このように、ストレスチェックが実際の職場改善につながることを明確に伝えることで、従業員の積極的な関与を促し、チェックの本来の意義をより深く理解してもらうことができます。

集団分析の結果を職場環境の改善に活用する

ストレスチェックの結果を集団分析することで、職場の課題や問題点を明確にします。そのデータをもとに、具体的な改善策を立案し、職場環境の向上につなげることが重要です。例えば、業務負担の偏りやコミュニケーション不足が原因となっている場合、それらを改善する取り組みを行うことで、従業員のストレス軽減につながります。

また、ストレスの要因をより詳細に分析し、部署ごとの課題を把握することで、より効果的な対策を講じることが可能になります。例えば、特定の業務プロセスが過度な負担を生んでいる場合、その工程を見直し、合理化を図ることで、ストレスを軽減できます。

さらに、従業員が自由に意見を共有できる場を設け、職場環境の改善策を従業員自らが提案できる仕組みを作ることも有効です。このように、ストレスチェックを単なる診断ツールとしてではなく、職場環境の継続的な向上を目指すための指標として活用することが重要です。

高ストレス者への適切な対応を実施する

高ストレスと判定された従業員には、産業医面談を実施し、適切な支援を行うことが必要です。こ

れに加えて、従業員自身がストレスに対処できるよう、セルフケアのための研修を実施することも有効です。例えば、ストレスマネジメントの手法を学ぶ研修を取り入れることで、従業員が自分のストレス状況を把握し、適切に対応する力を身につけることができます。

また、企業側は、ストレスを抱える従業員が気軽に相談できる窓口を設置し、専門家との継続的なフォローアップを行う体制を整えることが重要です。

さらに、職場環境の改善も同時に進めることで、高ストレス者の発生を未然に防ぎ、より健康的で快適な職場作りにつなげることができます。早い段階で適切なケアを実施することで、メンタルヘルス不調の予防や早期発見が可能となり、従業員が安心して働ける環境を整えることができます。

ストレス解消のための制度やサポート体制を整える

ストレスチェックの結果を受けて、職場全体でストレス解消につながる制度を導入することも重要です。例えば、リフレッシュ休暇の導入、社内カウンセリングの充実、ストレス管理に関する研修の実施などが効果的です。従業員が気軽に相談できる環境を整えることで、ストレスをため込まずに解消できる仕組みを作ることができます。

これらの対策を一度きりではなく、継続的に実施することで、ストレスチェックの本来の目的を果たし、従業員のメンタルヘルス向上と生産性の向上につなげることができます。

ストレスチェックを単なる形式的なものにせず、職場環境の改善に役立てることで、より働きやすい職場を実現することができるでしょう。

おわりに

今回は、なぜ「ストレスチェックは意味ない」と感じられてしまうのかその原因を確認し、ストレスチェックを意味あるものにするための方法についてお伝えしました。ストレスチェックの意味を最大限に引き出すためには、ストレスチェックの結果を活用した職場環境の改善や、労働者への適切なフィードバックが重要です。継続的な取り組みにより、従業員のメンタルヘルス向上と生産性の向上が期待できます。

参考:
「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(厚生労働省)
「ストレスチェック導入マニュアル」(厚生労働省)
『実践!ストレスマネージメント』(渡辺洋一郎)

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