メンタルヘルス不調とは?原因や症状・ケア方法を解説

メンタルヘルス不調とは?原因や症状・ケア方法を解説 メンタルヘルス

日本においてメンタルヘルス不調で通院する方たちは約420万人にも上り、また生涯を通じて5人に1人が心の病にかかるといわれています。そのためメンタルヘルス不調は誰にでも起こりうる身近なことといえます。

日常的によく使われる「メンタルヘルス」。心の健康状態を示す言葉ですが、具体的にはどのような内容となるのでしょうか。

今回は職場におけるメンタルヘルスについてお伝えします。

メンタルヘルスとは

世界保健機関(WHO)はメンタルヘルスを次のように定義づけています。

メンタルヘルスとは、人が自身の能力を発揮し、日常生活におけるストレスに対処でき、生産的に働くことができ、かつ地域に貢献できるような満たされた状態(a state of well-being)である。

すなわち、メンタルヘルスとは、日々のストレスをうまく乗り越え、自らの能力を発揮し世界に貢献できる状態のことを示します。単に心身共に健康な状態を示すだけではなく、自己の可能性を実現し、職場や地域などのコミュニティに貢献できるほど十分に満たされた健康状態を示します。

仕事などの職業生活のみならず、生きていくうえでメンタルヘルスは重要です。心の健康状態を保つにはどうしたらよいのでしょうか。

メンタルヘルス不調の原因

私たちは様々な出来事がきっかけとなりストレスが引き起こされます。

例えば、職場においては、昇進や昇格・配置転換などによる役割・地位の変化、上司や部下との対立・パワハラ・セクハラなどの人間関係のトラブル、長時間労働や人事異動などによる仕事の質・量の変化などが挙げられます。

また職場以外においては、家庭や人間関係などのトラブル金銭問題、大切な人の病気などの自分以外の出来事住環境や生活の変化などが挙げられます。

しかし、このような環境や出来事による外的な要因は、誰にとってもストレスを引き起こすとは限りません。同じ環境においても、ある人にとっては問題なく、別の人にとっては大きなストレスとなる場合もあります。

そのためストレス要因には、ストレス耐性の強弱やストレス対処法の知識など個人的ストレス要因もあります。

①個人的要因
・ ストレス耐性が低い(素因、性格、年齢、病気、適応能力など)
・ ストレス対処能力が低い
・ 専門知識や専門技術が不足している
・ 人間関係のもち方が下手
・ 生活管理が悪い
②職場のストレス要因
1) 心理的ストレス要因
・心理的な仕事の負担(質)
・職場の対人関係でのストレス
2) 物理的ストレス要因
・物理的な仕事の負担(量)
・自覚的な身体的負担度
・職場の物理的環境によるストレス 

以上のように日常生活により引き起こされるストレスは、個人的な要因と相まって、心身に様々な影響を及ぼしメンタルヘルス不調を引き起こします。

メンタルヘルス不調の徴候

メンタルヘルスの不調の徴候には「本人が気づく変化」と「周りが気づく変化」があります。

本人が気づく変化

・よく眠れない​
・疲れやすくて食欲がない
・身体の調子が何となく悪い
・気力がなく何をするにもおっくうに感じる
・何をしても楽しくない
・いつも楽にできることができなくなった
・考えがまとまらず、堂々巡りばかりして判断できなくなった
・失敗、悲しみ、失望などから立ち上がれない
・生きていく自信がない
・電車に乗ったりすると、心臓が苦しく、今にもどうにかなりそうに感じる​
・いつも緊張していて、手が震える
・他人が自分を監視しているように感じる
・自分が変わってきて、今までの自分とは別の自分がいるような気がする

周りが気づく変化

・遅刻や早退が多くなる
・しばしば休んだり、突然休む
・大した理由もなく職場転換を希望したり、退職を訴える
・不平不満が多くなる
・ケガが多くなる
・職務上の義務を怠りがちになり、責任感に乏しくなる
・同僚などと話し合うのを嫌がり、付き合いを避ける
・身体の具合が悪いといったり、とりとめのない訴えが多くなる
・表情が乏しく、口数が滅って、行動に生気がなくなる
・自信がなくなり、取り越し苦労をしたり,自分の能力の低下を訴える
・金づかいが荒くなり、借金を多くするようになる

このような症状が現れた場合は、ストレスを緩和するための方法を考え実施することが必要になります。ストレスを緩和する方法としては、いくつかの方法がありますので、それらを知っておき、必要に応じて使い分けることがストレスの緩和に役立ちます。

ストレスを緩和する方法はこちら

ただし、身体の病気と同じく、自分の努力だけではどうにもならず、医療の手助けを受けなければならないことも少なくありません。

この点については、次項、「医療レベルの対峰が必要なメンタルヘルス不調」の項をしっかり確認してください。

医療レベルの対応が必要なメンタルヘルス不調

メンタルヘルス不調は自分でも周囲からも気づかぬうちに進行している場合があります。次のような症状がある場合は、セルフケアなどでの対処可能なレベルは超えており、医療機関の受診が急がれます。

■疲れているのに眠れない
■好きなことが楽しめない

この2つの症状が、ほとんど1日中、毎日、1週間以上続く場合は、医療機関への相談が急がれます。

また周りの人が気づく変化として「いつもと違う」という徴候が挙げられます。

ラインケア|医療が必要なメンタルヘルス不調の見分け方

「気の持ちよう」など心のレベルの対応だけでは改善がはかれないメンタルヘルス不調の代表として「うつ病」が挙げられます。

うつ病

うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレスなどの影響により、感情や意欲を司る脳機能がうまく働かなくなっている状態で、そのために、精神的・身体的活動のもとになるエネルギー自体が低下してしまう状態です

うつ病の症状は心身共にあらわれ、日常生活に支障をきたします。

精神症状:一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめない、悪い方ばかりに考えてしまう など
身体症状:眠れない、疲れやすい、食欲がない など

うつ病の発症の原因は正確にはわかっていません。うつ病を引き起こす要因として、精神的身体的ストレスや、辛い出来事や体験、結婚や就職、引っ越しがきっかけとなって発症する場合があります。

「疲れているのに眠れない」「好きなことが楽しめない」という2つの症状が、ほとんど1日中、毎日、1週間以上続く場合は、一人で解決しようとせず、医療機関を受診してください。

医療レベルの対応が必要なメンタルヘルス不調には至っていない場合も、日々のストレスケアは重要です。次の項では、ストレスを緩和する方法をご紹介します。

ストレスを緩和する方法

ストレスは適切に対処すれば緩和され、メンタルヘルス不調を未然に防止することができます。ストレスに対処するにあたり、重要なのは何がストレスを引き起こしているかを知ることです。

既にお伝えしたように、ストレスの要因は様々あり、環境などの外的な要因もあれば、個人的な要因もあります。ストレスチェックなどを利用しストレス要因を把握することで、効果的にストレスに対処することが可能です。

個人的な要因がストレスになっている場合も周囲からのサポート、生活や仕事の満足度、生きがいなどがあれば緩和される場合が多いです。そのため、ストレスに対処するには、個人による努力だけではなく、周囲からの支援も重要です。

ストレスコーピング|ストレス処理における3つの段階と5つの方法

図表:渡辺洋一郎 作成

ストレスの段階や原因に応じたストレス対処法についてはこちらの記事で詳細に説明しています。

しかし、このようなストレス対処方法だけでは十分な改善がはかれず、前項の「医療レベルの対応が必要なメンタルヘルス不調」で解説したように医療の手助けが必要な場合もあります。

おわりに

メンタルヘルス不調を未然に防ぐには、まずは自分自身のストレス状況を理解し、心身共に日常的にコンディションを整えることが大切です。悩みなどある場合は一人で抱え込まず周りに相談することも大切です。

厚生労働省による「みんなのメンタルヘルス」では、こころの健康や病気、支援やサービス等、メンタルヘルス情報のポータルサイトです。相談窓口の案内等もあります。

みんなのメンタルヘルス|厚生労働省
このサイトは、こころの健康や病気に関する総合サイトです。こころの病気についての知識や病気になったときの治療法、身近にある様々な相談先、生活への支援やサポートなどを掲載しています。

参照
精神保健医療福祉のデータと政策』(厚生労働省)

メンタルヘルス アクションプラン』(WHO)


 

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記事監修
渡辺 洋一郎(弊社代表取締役)

精神科医専門医・日本医師会認定産業医。
川崎医科大学卒、1988年渡辺クリニック(2018年改称)を開設。
その後、厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の在り方検討委員会」委員、内閣府「自殺対策官民連携協働会議」委員、公益財団法人日本精神神経科診療所協会会長など歴任。
現在、医療法人メディカルメンタルケア横山・渡辺クリニック名誉院長、大阪大学医学部神経科精神科非常勤講師、一般社団法人日本精神科産業医協会共同代表理事ほか。
ストレスチェック法制化においても、厚生労働省「ストレスチェック制度に関する検討会」「ストレスチェック項目に関する専門検討会」「ストレスチェック制度マニュアル作成委員会」などの委員を務める。

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