健康経営は何から始める?具体的な取り組み方法を解説!

健康経営は何から始める?具体的な取り組み方法を解説! 健康経営

近年、企業が従業員の健康を経営課題として捉え、積極的に取り組む「健康経営」が注目を集めています。従業員の健康が向上することで、業務のパフォーマンスが上がり、結果的に企業の生産性や業績向上にもつながるため、多くの企業が導入を進めています。

しかし、「健康経営を始めたいけれど、具体的に何をすればいいのかわからない」「どこから手をつければいいの?」と悩む経営者や担当者も少なくありません。

健康経営を導入するためには、以下の4つのステップを順番に実施することが大切です。

健康経営の4つのステップ

  1. 経営理念・方針への位置づけ – 経営層が健康経営の重要性を認識し、経営理念として明文化する
  2. 組織体制の整備 – 推進担当者を決め、健康管理を支援する体制を整える
  3. 具体的な施策の実施 – 健康診断の受診促進、メンタルヘルス対策、生活習慣改善支援などを行う
  4. 取り組みの評価と改善 – 実施した施策の効果を検証し、継続的に改善する

この記事では、これらのステップを実際にどう進めていくのか、具体的な取り組み方法を詳しく解説します。健康経営の導入を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてみてください。

健康経営とは

健康経営とは、企業が従業員の健康維持・増進を経営の重要な要素として位置づけ、積極的に取り組むことを指します。従業員の健康を守ることで生産性が向上し、企業の持続的な成長につながるため、多くの企業が導入を進めています。特に近年、働き方改革や労働人口の減少に伴い、健康経営の重要性が一層高まっています。

さらに、企業が健康経営を実践することで、職場の雰囲気が改善され、社員のエンゲージメントが向上するというメリットもあります。健康経営は、単なる福利厚生の一環ではなく、組織全体の生産性や創造性を引き出す重要な経営戦略として位置付けられるべきです。また、健康的な職場環境を提供することは、企業ブランドの向上や採用力の強化にもつながります。

実際に、多くの企業が「従業員の健康管理=経営戦略の一環」として捉え、社内の健康支援プログラムを拡充したり、健康に配慮したオフィス環境の整備を進めています。健康経営の導入によって、業績向上だけでなく、企業の社会的責任(CSR)を果たすことにもつながり、社会全体に良い影響を与えることができます。

健康経営を始めるメリットとは?

健康経営は単なる福利厚生ではなく、企業の成長戦略の一環として大きなメリットをもたらします。従業員の健康を守ることは、企業の生産性向上やコスト削減、組織の活性化につながり、結果的に競争力の強化にも寄与します。

では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、健康経営を導入することで得られるメリットを詳しく解説します。

生産性の向上

健康的な従業員は集中力が高まり、業務効率が向上します。適切な健康管理が行われることで、仕事のパフォーマンスが向上し、チーム全体の生産性アップにも寄与します。

また、健康な従業員は病気による欠勤が少なく、長期離脱のリスクも軽減されます。さらに、健康促進施策によって社員同士のコミュニケーションが活発になり、職場の活気やチームワークの向上にもつながります。

企業のブランド価値向上

健康経営に取り組む企業は、社会的評価が高まり、優秀な人材の採用や顧客からの信頼を獲得しやすくなります。特に、健康経営を実施している企業は福利厚生の充実度が高く、求職者にとって魅力的な職場として認識されやすくなります。

また、企業のイメージ向上は従業員の誇りや帰属意識を高める効果もあり、結果として定着率の向上にもつながります。さらに、企業が健康経営を積極的にアピールすることで、投資家やビジネスパートナーとの関係強化にもつながる可能性があります。

医療費の削減

健康管理が進むことで、従業員の医療費負担が軽減され、企業の負担も軽くなります。健康診断の受診率向上や生活習慣病予防の取り組みが進むと、慢性的な病気の発症リスクを減らし、医療費の長期的な抑制につながります。

また、従業員の健康が維持されることで、労災や休業補償の発生を抑えることができ、企業の財務面でも大きなメリットをもたらします。さらに、従業員の健康意識を高めることで、家族や地域社会にもポジティブな影響を与え、広範な健康促進活動の波及効果が期待できます。

従業員満足度の向上

健康への配慮がある職場環境は、従業員のモチベーション向上につながり、離職率の低下にも貢献します。特に、健康プログラムの導入や、ストレスマネジメントのサポートがある職場では、従業員が安心して働くことができるため、仕事への満足度が向上します。

また、職場の健康文化が根付くことで、チームのエンゲージメントが高まり、職場全体の雰囲気がより良いものへと変化します。さらに、健康的な働き方を推進することで、ワークライフバランスが向上し、長期的に見ても従業員の定着率が向上する可能性が高くなります。

では健康経営を導入するには何から始めたら良いのでしょうか?

健康経営の導入ステップ:何から始めるべきか

企業が健康経営を実践するためには、経営戦略の一環としてその重要性を理解し、体系的に取り組むことが求められます。健康経営は、経営トップから現場の施策まで幅広いレベルで連携することが大切であり、大きく分けて以下の4つのステップに分類されます。

  1. 経営理念・方針

  2. 組織体制の構築

  3. 制度・施策の実行

  4. 評価・改善

【経営理念・方針】健康経営の理念と方針を明確にする

健康経営を進めるうえで、まず重要なのは、企業全体の方針としての健康経営の推進を位置づけることです。経営層がその意義を理解し、具体的な指針を策定することで、従業員に対するメッセージが明確になります。企業文化の一環として健康経営を根付かせるための第一歩となります。

健康経営の理念と方針を確立する

健康経営を成功させるためには、まず経営トップがその意義を深く理解し、企業の理念として明文化することが重要です。これにより、従業員や投資家をはじめとする関係者に対して、企業として健康経営に取り組む姿勢を明確に示すことができます。

行動指針の策定と全社的な推進

設定した経営理念をもとに、具体的な行動指針を策定し、組織全体での取り組みを推進していきます。従業員が健康経営の方針を理解し、積極的に参加できる環境を整えることが求められます。

組織体制の構築

健康経営を成功させるには、実行を支える組織体制の確立が不可欠です。専任の担当者や部署の設置、社内外のリソースを活用した連携など、持続可能な健康経営のための仕組みを作ることが求められます。

健康経営推進のための専門部署の設置

健康経営を効果的に進めるためには、組織全体が協力し、体系的に取り組むことが重要です。そのためには、経営トップの強いリーダーシップのもと、健康経営を推進する体制をしっかりと整える必要があります。まず、企業内に健康経営を専門的に担当する部署を設置することが考えられます。

例えば、人事部門内に「健康推進室」を新設し、専門スタッフを配置することで、健康経営に関する施策の立案と実行を一貫して行うことができます。この専門部署は、従業員の健康管理を支援し、健康に関する情報提供、予防施策の企画・運営など、多岐にわたる業務を担当します。

既存部署との連携と担当者の配置

次に、既存の人事部や総務部などに専任・兼任の健康経営担当者を配置する方法も有効です。全社的な体制を整えるためには、特定の部署に健康経営を任せるのではなく、複数の部署が連携して取り組むことが望ましいです。

例えば、産業医や保健師と連携しながら、従業員の健康データを分析し、個別の健康サポートプランを策定することが求められます。

専門知識を持つスタッフの育成

また、健康経営の推進には、専門知識を持つスタッフの育成が欠かせません。従業員の健康保持・増進を担当する職員には、健康管理に関する専門資格を取得させるなど、継続的な研修を実施することが重要です。

例えば、保健指導に関する資格を持つスタッフを増やし、社内での健康相談体制を強化することが考えられます。

経営層の積極的関与

健康経営を全社的に推進するためには、経営トップおよび経営層全体がその必要性を認識し、積極的に関与することが求められます。各部門が一丸となって取り組むためには、経営会議で健康経営に関する議題を定期的に取り上げ、具体的な施策や目標について議論することが有効です。

例えば、従業員の健康診断結果やストレスチェックの分析を報告し、それに基づいた新たな健康施策を検討する場を設けることができます。

社内コミュニケーションと健康意識の向上

さらに、従業員の健康意識を高めるための社内コミュニケーションも重要です。社内報やイントラネットを活用して、健康経営に関する情報を定期的に発信することで、全従業員が健康維持・向上に積極的に取り組む環境を整えることができます。例えば、健康週間を設けて、歩数競争や禁煙チャレンジなどのイベントを実施し、楽しみながら健康意識を向上させる施策を展開することも一案です。

このように、健康経営を成功させるためには、明確な組織体制を構築し、専門的なサポート体制を整えるとともに、全従業員が健康維持に関与できる仕組みを作ることが不可欠です。

制度・施策の実行

健康経営を具体的に実践するためには、健康診断の結果の活用、メンタルヘルス対策、生活習慣改善など、実際の施策を導入することが必要です。従業員の健康維持・増進に向けた取り組みを継続し、職場環境の改善を図ることが重要です。

健康診断とデータ分析による課題の把握

まず、従業員の健康診断を実施し、その結果を分析することで、企業全体の健康状態を把握します。健康診断の実施は法律で義務付けられていますが、それを単なる年1回のルーチンワークにするのではなく、診断結果をもとに従業員の健康課題を明確にすることが大切です。

たとえば、特定の年代で高血圧や肥満の割合が高い場合は、生活習慣の改善が必要だと判断できます。また、ストレスチェックを活用し、メンタルヘルスの状況も把握することで、心身両面から健康課題を分析することが可能になります。

生活習慣改善プログラムの導入

健康診断の結果を踏まえ、生活習慣の改善に向けた具体的な施策を導入します。例えば、社内に栄養士を配置したり、外部の専門家と提携して食事指導を行うことで、従業員の食生活を見直す機会を提供できます。社食のメニューを健康的なものに変更したり、ヘルシーな選択肢を増やすことも有効な方法です。

また、運動不足を解消するために、オフィス内に運動設備を設置したり、ジムの法人契約を結んで利用を促進する取り組みも考えられます。さらに、歩数計アプリを活用し、歩数や運動量を競うイベントを実施することで、楽しみながら健康増進に取り組める環境を作ることもできます。

メンタルヘルス対策と職場環境の改善

身体的な健康だけでなく、メンタルヘルスの維持・向上も健康経営において重要なポイントです。職場のストレスを軽減するために、産業医やカウンセラーと連携し、従業員が気軽に相談できる体制を整えます。また、定期的にストレスチェックを実施し、結果をもとに職場環境の改善を図ることが求められます。

たとえば、長時間労働の是正や、リモートワークの導入、フレックスタイム制度の活用など、働き方の柔軟性を高める施策を検討することができます。さらに、管理職に対してメンタルヘルス研修を実施し、部下のストレスサインを早期に察知し適切に対応できるようにすることも効果的です。

禁煙・感染症対策の推進

企業として、従業員の健康リスクを低減するために、禁煙推進や感染症対策にも積極的に取り組む必要があります。禁煙については、社内での喫煙スペースを撤去したり、禁煙外来の受診を支援することで、禁煙を促すことが可能です。

喫煙率の低下は、従業員の健康改善だけでなく、医療費の削減や生産性の向上にも寄与します。また、インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症対策として、職場内の消毒や換気の徹底、ワクチン接種の費用補助などの制度を整えることも重要です。

健康経営に関する社内の意識向上

制度を整えるだけではなく、従業員が積極的に健康管理に取り組めるよう、社内での意識向上を図ることも大切です。そのためには、健康経営に関する研修やセミナーを定期的に開催し、健康の重要性を理解してもらう機会を提供することが有効です。

また、健康に関する社内ニュースレターを配信し、従業員の健康に関する知識を深めることもできます。加えて、経営層が率先して健康活動に参加することで、健康経営への取り組みが企業文化として根付くよう促すことも重要なポイントです。

健康経営を実行する際には、従業員の健康状態を正しく把握し、それに基づいた施策を展開することが求められます。健康診断の結果を活用し、生活習慣の改善、メンタルヘルス対策、職場環境の見直し、禁煙・感染症対策といった具体的な施策を実施することで、従業員の健康維持・向上が可能になります。加えて、健康意識を高めるための社内活動を継続的に行うことで、健康経営が企業文化として根付き、従業員の生産性向上や組織の活性化に繋がることが期待できます。

取り組みの評価と改善

導入した健康経営の施策が実際に効果を上げているのかを定期的に評価し、必要に応じて改善を行うことが重要です。数値データや従業員のフィードバックをもとに、より効果的な施策へと進化させていくことが求められます。

健康経営の評価指標の活用

企業が従業員の健康を大切にし、それを経営戦略の一環として進めるために、以下の3つの評価指標を活用します。

ストラクチャー指標(基盤評価)

「ストラクチャー指標」は、企業が健康経営を実践するための基盤が整っているかどうかを見ます。たとえば、会社の方針として健康を重視しているか、健康管理を担当する部署や担当者がいるか、従業員の健康データを適切に管理しているかといった点を評価します。

  • 健康経営を支える組織体制や方針の整備状況を確認
  • 健康管理担当者の配置、健康データの管理体制など

プロセス指標(施策評価)

「プロセス指標」は、実際にどんな健康づくりの取り組みが行われているかを評価します。具体的には、健康診断をしっかり実施しているか、ストレスチェックやメンタルヘルス対策を行っているか、職場の環境を改善する活動があるか、健康に関する研修や啓発活動をしているかなどをチェックします。

  • 健康診断やストレスチェックの実施状況を測定
  • 研修や啓発活動の実施回数、職場環境の改善施策など

アウトカム指標(成果評価)

「アウトカム指標」は、こうした取り組みがどんな成果を生んでいるかを測るものです。たとえば、従業員の健康状態が良くなったか、病気やケガによる欠勤が減ったか、医療費が削減されたか、生産性が向上したかなどを確認します。

  • 従業員の健康状態の変化、医療費の削減、欠勤率の改善
  • 業務生産性の向上、従業員満足度の向上

継続的な評価と改善のためのPDCAサイクルの実施

定期的に施策の成果を分析し、効果が低い場合は迅速に改善策を検討することで、より効果的な健康経営を実現します。

健康経営の取り組みを進める3つのポイント

健康経営を成功させるためには、まず「できることから始める」ことが重要です。計画を立てるだけではなく、実際に行動を起こし、企業の規模やリソースに応じた施策を少しずつ積み重ねることで、従業員の意識も変わっていきます。さらに、コストを最小限に抑えながら実施可能な取り組みを選び、継続的に評価と改善を行うことで、健康経営の効果を高めることができます。ここでは、健康経営を進めるための3つのポイントを解説します。

計画よりもまず実行!できることから始める

健康経営を導入する際、「まずは綿密な計画を立てなければ」と考える企業も多いですが、実際には完璧な計画よりも、小さなことから実行することが大切です。企業ごとに抱える健康課題は異なるため、最初から大規模な施策を実施するよりも、自社の状況に合った簡単な取り組みからスタートし、徐々に拡大していく方が効果的です。

例えば、まずは社内に健康情報を掲示する、ウォーキングイベントを開催する、昼休みにストレッチを取り入れるなど、すぐに実行できる施策から始めることで、健康経営の第一歩を踏み出すことができます。こうした取り組みを継続することで、従業員の意識が高まり、組織全体の健康文化が自然と根付いていきます。

コストゼロ・低コストで実践できる施策を活用する

健康経営には費用がかかるというイメージがあるかもしれませんが、必ずしも大きな投資をしなくても実施できる施策は数多くあります。特に中小企業の場合、限られた予算の中で健康施策を展開する必要があるため、コストゼロまたは最小限の費用で実行できる取り組みを活用することがポイントです。

例えば、

  • 職場に血圧計を設置し、従業員が自由に測定できる環境をつくることで、日々の健康管理を意識する習慣を促せます。
  • 企業が主催するウォーキングキャンペーンを実施し、歩数を競う仕組みを導入すれば、楽しみながら運動習慣を身につけることができます。
  • 健康診断の受診率を向上させるために、就業時間内の受診を認めることで、受診のハードルを下げ、早期の健康リスク発見につなげることができます。

また、健康保険組合や自治体が提供する無料の健康プログラムや補助金を活用することで、費用を抑えながら効果的な施策を実施することも可能です。

施策を定期的に見直し、柔軟に改善する

健康経営の取り組みは、一度始めたらそれで終わりではなく、定期的に評価し、必要に応じて改善を加えていくことが重要です。最初に導入した施策がうまく機能しなかった場合、すぐに見直しを行い、より効果的な方法を模索する柔軟な姿勢が求められます。

例えば、

  • 健康診断の受診率向上を目指して補助制度を導入したものの、受診率が思ったほど上がらない場合は、受診の負担を軽減するために、事前予約のサポートや集団受診の機会を増やすなどの施策を検討する。
  • 運動促進のためにウォーキングイベントを実施したが、参加者が少なかった場合は、チーム制を導入して競争要素を加えることで、楽しみながら継続できる環境をつくる。
  • メンタルヘルス対策としてカウンセリング窓口を設置したものの、利用者が少ない場合は、利用のハードルを下げるために匿名相談を可能にするなど、従業員が気軽に活用できるような仕組みを整える。

このように、PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を回しながら、実施した施策の成果を定期的にチェックし、柔軟に軌道修正を行うことが、健康経営を持続的に発展させるポイントとなります。

健康経営の取り組みを効果的に進めるためには、「まずは小さなことから実行する」「低コストでできることを活用する」「定期的に施策を見直して改善する」 の3つのポイントを押さえることが重要です。

健康経営は、決して大きな予算がないとできないものではありません。企業の状況に応じた工夫をしながら、できることから少しずつ取り組むことで、従業員の健康意識を高め、企業全体の活性化につなげることができます。

まずはできる範囲で取り組みをスタートし、継続的に改善を加えながら、従業員が健康で長く働ける環境を整えていきましょう。

まとめ

健康経営を実践するには、経営トップのリーダーシップのもと、組織全体で健康への取り組みを推進することが重要です。理念の明確化、組織体制の整備、効果的な施策の実施、そして継続的な評価と改善を行うことで、企業としての競争力向上にもつながります。

今後、健康経営の実践を進めるにあたり、自社の課題を明確にし、実行可能な施策を検討しながら、継続的な取り組みを行っていくことが求められます。

参照:
企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~(経済産業省)
「健康経営」を始めましょう!(経済産業省)

 

※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。 

 

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