適応障害とは?原因・症状・うつ病との違い

適応障害とは?原因・症状・うつ病との違い メンタルヘルス

職場や学校などの社会生活だけではなく、新型コロナの拡大の影響により、私たちは様々なストレスに晒されています。このような状況において、ストレスが原因となり、心身のバランスを崩し、生活に支障をきたす適応障害で苦しむ方も多くみられます。

今回は、適応障害の原因や症状等についてお伝えします。

PR|ストレスマネージメント書籍紹介 (弊社代表・医師 渡辺洋一郎 著)

適応障害とは?

適応障害とは、日常生活や仕事などで経験するストレスにうまく対応できず、その結果として精神的・身体的な症状や、行動面での変化が現れ、日常生活に支障をきたすような状態を指します。

具体的には、不安感、抑うつ気分、イライラ、不眠、食欲不振、集中力の低下、無気力といった精神的な症状のほか、頭痛や腹痛、動悸、疲れやすさといった身体症状が見られることもあります。また、人によっては遅刻や欠勤、引きこもり、過剰な飲酒や買い物など、行動に現れることもあります。

ただし、うつ病などの本格的な精神疾患とは異なり、適応障害は「ある特定のストレス要因」がはっきりしているのが特徴で、そのストレスが軽減・解消されると、症状も比較的短期間で改善する傾向があります。早期の対応とサポートがあれば回復も見込みやすいといわれています。

適応障害は甘えではない

「適応障害なんて、気の持ちようじゃないの?」「甘えているだけでは?」
そんなふうに誤解されることもありますが、これは大きな間違いです。

適応障害は、明確なストレス要因に対する心の反応であり、医学的にもれっきとした診断名がつく精神疾患です。たとえ周囲からは些細に見えることでも、本人にとっては強い負荷となっていることがあります。ストレス耐性や感じ方には個人差があり、誰もが同じように対応できるわけではありません。

また、適応障害の症状は「本人の努力不足」ではなく、「環境への過度な適応を試みた結果」現れることも少なくありません。むしろ、まじめで責任感が強く、周囲の期待に応えようと無理をしがちな人ほど、発症しやすい傾向にあるとされています。

適応障害は、特別な人に起こるものではありません。誰にでも起こりものです。だからこそ、自分自身や周囲の人が適応障害に気づき、受け止め、サポートしていくことが求められます。

「がんばりすぎていないかな?」「無理していないかな?」
そう自分自身に問いかけながら、こころに耳を傾けてみてください。

では、適応障害はなぜ起こるのでしょうか?
次の項目では、適応障害の原因について詳しく見ていきます。

適応障害の原因

適応障害は、どのようなきっかけで発症するのでしょうか?
ここでは、主な原因や背景について詳しく見ていきましょう。

適応障害は、環境の変化や日常生活における出来事などによる心理的ストレスに対して、うまく対処できなかったり、適応が難しくなったときに生じる心の不調です。

ストレスの要因は多岐にわたります。たとえば、以下のようなライフイベントがきっかけになることがあります。

  • 入学・入社・転勤・異動・転居など、新しい環境への適応が求められる場面
  • 離婚、病気、ケガ、大切な人との死別など、喪失や不安を伴う経験
  • 新型コロナウイルスの感染拡大のように、社会全体の大きな変化による生活スタイルの変容

一見するとネガティブな出来事ばかりに思えるかもしれませんが、実は、昇進や結婚、出産、マイホームの購入など、一般的には「おめでたい」とされる出来事も、適応障害の引き金となることがあります。
なぜなら、こうした変化には新たな責任やプレッシャー、生活のリズムの変化がともなうからです。嬉しいはずなのに、なぜか気持ちが重くなる。それはごく自然な反応でもあるのです。

また、何をストレスと感じるか、どの程度つらく感じるかは人それぞれ異なります。
同じ部署への異動でも、ある人は「チャンス」と前向きに捉えられても、別の人にとっては「人間関係が不安」「業務量が心配」とプレッシャーを感じることがあります。

そのため、適応障害の背景には、単なる外的なストレス要因だけでなく、次のような個人内の要素が複雑に絡み合っていることが多いです。

適応障害になりやすい人の特徴とは?

適応障害の背景には、外からのストレス(環境の変化や出来事)だけでなく、それを受け取る「その人自身の感じ方」や「性格傾向」など、内的な要素も深く関係しています。では、どのような人が適応障害になりやすいのでしょうか?代表的な傾向を見ていきましょう。

責任感が強くまじめな人

「しっかりやらなければ」「失敗してはいけない」と、自分に対して高いハードルを課す人は、プレッシャーを感じやすく、無理を重ねてしまいがちです。
周囲からは「優秀で頼れる人」と見られていても、内心ではかなり無理をしているケースも少なくありません。

完璧主義傾向がある人

物事を「100点でなければ意味がない」と考えるタイプの人は、ほんの少しの失敗やミスでも強いストレスを感じやすくなります。
また、「こうあるべき」という理想とのギャップが大きいと、現実に適応することが難しくなり、自分を責めてしまう傾向もあります。

他人の評価を気にしやすい人

「嫌われたくない」「迷惑をかけたくない」と常に周囲の目を気にして行動する人は、自分の本音や感情を抑え込みがちです。
無理に笑顔で対応したり、自分の気持ちにフタをして頑張りすぎた結果、心が限界を迎えてしまうことがあります。

環境の変化に敏感な人

新しい環境や人間関係、役割の変化に対して不安を感じやすい人は、その適応に時間がかかることがあります。
「慣れるまで少し時間が必要なタイプ」と自覚していれば対策もしやすいですが、それを「自分はダメだ」と責めてしまうと、悪循環に陥りやすくなります。

ストレスをため込みやすい人(相談が苦手)

「誰にも迷惑をかけたくない」「弱音を吐きたくない」と、悩みを一人で抱え込んでしまう人も要注意です。
適応障害は、我慢を続けて限界が来たときに一気に症状として現れることが多く、表面上は「いつも通り」でも、内面では大きなストレスを感じていることがあります。

支援が得にくい状況にある人

家庭や職場、友人関係など、困ったときに助けを求められる相手がいない、または相談しにくい環境にいる場合は、ストレスに対する回復力(レジリエンス)が下がりやすくなります。
「ひとりで何とかしないと」と思い込んでしまい、孤立感が強まると、さらに適応が難しくなる傾向があります。

自分を責めず、まずは「気づくこと」から
上記の傾向は「なりやすい人の傾向」であり、必ずしも適応障害になるというわけではありません。
むしろ、これらの特徴を持っている人は、真面目で責任感があり、周囲への気配りができる人でもあります。

しかし、そのぶん心のエネルギーを消耗しやすく、無意識のうちに自分を追い込んでしまうことがあります。
大切なのは、「自分は弱いからこうなった」と責めるのではなく、「そうなりやすい傾向がある」ということに気づき、早めに立ち止まること、そして必要なサポートを受けることです。

適応障害の症状

適応障害の症状は様々ありますが、「からだの症状」「こころの症状」「行動の問題」について一般的な症状を見ていきます。

からだの症状

・睡眠の問題がある (寝つきが悪い、眠れない、途中で何度も目が覚める、熟睡感がない、寝すぎる)
・疲れが取れない、肩こり、 頭痛が続く
・動悸、息苦しさ、めまい、ふるえ

心の症状

・気分が落ち込む
・原因不明な不安が続く
・なぜか涙が出て止まらない
・今まで楽しかったことが楽しめない
・気が焦る、怒りっぽくなる
・仕事や作業に集中できない、 考えがまとまらなくなる

行動の問題

・食欲不振、暴飲暴食
・遅刻・欠勤が増える
・人と会いたくなくなる(電話やメールのやりとりも億劫になる、会話が苦痛に感じられるようになる)
・喧嘩や暴言など攻撃的になる

適応障害が疑われたら

適応障害はストレス要因を取り除いたり、見方を変えてみたり、相談や支援をうけて対処したり、あるいは、上手にストレスを発散することなどから症状が緩和されるケースが多く見られます。

そのため、適応障害についてはストレス状況を把握し、ストレスにうまく対処することがポイントになります。

ストレス対処についての具体的な方法についてはこちらの記事を参照してください。

このような症状がある場合は注意が必要

ストレスの原因が明確にあったとしてもそれがきっかけとなってうつ病になってしまっていることもあります。また、はじめは適応障害であってもその後うつ病に移行することがあります。適応障害はうつ病の一歩手前の危険なサインと考え、そのままにせずしっかり対処することが重要です。

以下のような症状のいずれかがある場合は、うつ病などのレベルに至っている可能性がありますので、医療機関の受診が急がれます。

●何も楽しめない(休日も楽しめない)、眠れない状態が 2 週間以上続く場合
●遅刻・欠勤が増える、あるいは家事も困難となり、社会生活や日常生活に相当支障をきたしている

症状が軽い場合

症状が軽い場合は、運動や趣味、お気入りのリラックス方法を取り入れ、気分転換することも有効的です。

深呼吸をする

呼吸を整えることで血中の酸素を増やし、筋肉の緊張を緩めるので、リラックスに効果的です。5 分ほど同じテンポで深呼吸することでセロトニン (心のバランスを整える神経伝達物質)が分泌されて気分がすっきりします。

ウォーキングなどの軽い運動

体を動かすことで緊張を和らげ、心身をリラックスさせます。また定期的な運動はメンタルヘルス問題の予防にも役立つことが示されています。

友人などとの会話

人に話すことで、ネガティブな気持ちが和らぎ、新しい視点を得るかもしれません。仲の良い友人とのおしゃべり等は、オキシトシン (不安を減らしたりストレスを和らげたりするホルモン)、セロトニン(心のバランスを整える神経伝達物質)の分泌を増やし、心のバランスを整えます。

適応障害とうつ病との違い

適応障害とうつ病は同じような症状のこともあり、混同される場合があります。適応障害とうつ病の大きな違いは、症状の程度にあります。

適応障害はストレスになっていることから離れると速やかに症状が落ち着きます。一方、うつ病に至ってしまっているとストレスから離れてもなかなか改善しません。

うつ病は、ストレスによる影響が心のレベルを通り越して、感情や意欲を司る脳機能までがうまく働かなくなっている状態なのです。したがって、うつ病の場合には環境を変えただけでは症状が回復し難く、医療的ケアが必ず必要となります。

適応障害とうつ病の違い

適応障害はうつ病などの病気の前段階の可能性も

このように適応障害とうつ病は似たような症状を持つことがありますが、適応障害からうつ病に進行してしまう人も多い傾向があります。また、適応障害と診断された後に、経過を観察しているうちにうつ病と再診断されることもあります。

実際、適応障害と診断された人の中で、5年後には40%以上がうつ病などの別の診断名に変更されるという厚生労働省による調査結果もあります。

このことから、適応障害はその後に治りにくい病気に移行する可能性があるため、症状が現れた場合は早めに医療機関を受診することが重要です。

おわりに

ストレスの多い現代社会において適応障害は誰にでも起こりうる身近な心の病です。しかし、ストレスに対して適切に対処せず、「我慢しなければ」「自分の努力で乗り越えよう」とすれば、症状は慢性化し、さらに重篤な疾患を引き起こしかねません。悩みは一人で抱え込まず、相談することが大切です。

厚生労働省による「みんなのメンタルヘルス」では、こころの健康や病気、支援やサービス等、メンタルヘルス情報のポータルサイトです。相談窓口の案内等もあります。

ご案内
「みんなのメンタルヘルス総合サイト」の情報は、令和5年4月より国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」に掲載しています。

 


CHRでは企業の従業員様向けの24時間365日相談受付の専門相談窓口サービス『ハートの窓』を提供しています。(ご契約者は企業、従業員様のご利用は無料です)

従業員の方には、
●職場・仕事の悩み、家庭からの悩み
●健康(精神面)の悩み、健康(身体面)の悩み
●消費者問題、借金問題 等など、従業員の方からのあらゆる問題解決をサポート。

管理監督者の方には、
●部下のメンタルヘルス対応
●職場環境改善についての悩み
●安全配慮義務
●部下とのコミュニケーション など管理監督者の方のあらゆる悩みをサポート。

人事労務ご担当者の方には、
●従業員の健康管理対策
●職場のメンタルヘルス対応
●相談システムの構築
●場環境改善のきっかけ 等など、人事労務ご担当者の方からのあらゆる問題解決をサポートします。

「メンタルヘルス予防」+「ラインケア支援」で職場環境改善につながる健康経営時代の新しい外部相談窓口『ハートの窓』の導入について、どんなことでもお気軽にご相談ください。

お問い合わせはコチラ

 

(C) Japan Corporate Health Responsibility Consulting Co.,ltd All Rights Reserved.

タイトルとURLをコピーしました