レジリエンスとは何か?意味・特徴・高め方をわかりやすく解説【メンタルヘルスとの違いも】

精神科医が解説!レジリエンスとは何か?ストレスに強いひととストレスに弱い人との違い メンタルヘルス

テレビや雑誌で「レジリエンス」という言葉を聞くようになったけど、そもそもレジリエンスってなんだろう?

ストレスがあったら、避けるしかない!と思ってきたけど、もっといい対処法があるなら知りたいな。

 

ドクター渡辺 (精神科医)
渡辺先生
(精神科医)
 

それでは今回は、レジリエンスとは何か?を知ってもらうことで

ストレスに飲み込まれることなく対応する道があるということを説明します。

  1. レジリエンスとは何か?
    1. レジリエンスの基本的な意味
    2. ビジネスの現場でレジリエンスが注目される理由
    3. 分野によって異なるレジリエンスの意味
    4. レジリエンスの対義語「脆弱性」との関係
  2. レジリエンスとメンタルヘルスやストレス耐性との違い
    1. メンタルヘルスとの違いをわかりやすく解説
    2. ストレス耐性やストレスコーピングとの違い
    3. ハーディネスとの違いと共通点
  3. レジリエンスの因子とは
    1. 危険因子(ストレスを強める要素)
    2. 保護因子(立ち直りを支える要素)
  4. レジリエンスの尺度
    1. 代表的な尺度の役割・メリット
    2. どんな尺度が使われている?(名称だけ知っておけば十分)
  5. レジリエンスが高い人の特徴
    1. ① 思考に柔軟性がある(こだわりすぎず、切り替えが上手)
    2. ② 感情を適度にコントロールできる(感情に飲み込まれにくい)
    3. ③ 自尊感情(自己肯定感)が健全に保たれている
    4. ④ 自責と他責のバランスが良い
    5. ⑤ 適度な楽観性がある(悲観しすぎず、盲目的にもならない)
    6. ⑥ 周囲との関係づくりが上手い(相談・連携が自然にできる)
    7. ⑦ 事実を受け止め、前に進む行動ができる
  6. レジリエンスが高くない人の傾向
  7. レジリエンスを高める方法
    1.  個人で実践できるレジリエンス向上の方法
      1. ① 思考のクセを整える(認知の再構成)
      2. ② 感情を落ち着かせるスキルを身につける
      3. ③ 周囲に相談する習慣を持つ
      4. 自分の強み・成功体験を活かす(自己効力感の強化)
    2. 健康習慣を整える(睡眠・運動・休息)
    3. 組織としてレジリエンスを高めるための取り組み
      1. ① 心理的安全性の高い職場づくり
      2. ② 適切な業務量と裁量の確保
      3. ③ 上司・リーダーの関わり方(ラインケア)の強化
      4. ④ レジリエンス強化研修の導入
      5. ⑤ 組織全体のつながりを強化する施策
  8. おわりに

レジリエンスとは何か?

レジリエンスとは何か?

レジリエンス(resilience)とは、ストレスや逆境に直面したときに、心の健康を保ちながら回復し、再び前に進むための精神的な強さを指します。
心理学の分野では精神的回復力や心理的な弾力性と表現され、メンタルヘルスを語るうえで欠かせない概念です。

同じような強いストレスを受けても、落ち込みが長引く人もいれば、時間とともに自分を立て直し、元の状態に戻ったり、新しい適応方法を見つけて成長していく人もいます。その違いを説明する力として、レジリエンスは長年研究されてきました。

現代社会はストレス要因が多く、働き方の変化や人間関係の複雑さなど、精神的な負荷が高まりやすい状況が続いています。そのため、メンタルヘルス対策としても、このしなやかに回復する力を高めることが重要視されています。

 

渡辺先生(精神科医)
渡辺先生
(精神科医)

ストレスは誰にでも起きるもの。一時的に落ち込んでも、自然に回復できる力を育てることが大切です。

レジリエンスの基本的な意味

レジリエンスという言葉の語源は、ラテン語の「resilire(跳ね返る)」です。

もともとは物理学で「衝撃を受けて変形しても元に戻ろうとする性質」を表していましたが、現在は心理学・健康分野・教育・ビジネスなど幅広く使われています。

特にメンタルヘルスでのレジリエンスは次のような力を含みます。

  • ストレスやショックを受けても精神的な安定を取り戻す
  • 困難な出来事の中でも自分の感情を調整できる
  • 落ち込みを引きずらず、前を向くためのエネルギーを回復する
  • 逆境の経験を成長へつなげる

折れない心というより、むしろ曲がっても時間とともに戻れる柔らかさを表すイメージに近いものです。

ビジネスの現場でレジリエンスが注目される理由

企業の世界でもレジリエンスへの関心は年々高まっています。背景には、社会や市場の変化が一段と早くなっていることがあります。このような不確実な時代に、企業が柔軟に対応して成長していくためには、外部環境のショックに耐え、素早く回復する組織レジリエンスが欠かせません。

さらに健康経営の観点では、従業員のメンタル不調の予防や生産性向上のために、個人のレジリエンス強化が重要なテーマとなっています。
ストレスに強く、回復できる人材が増えるほど、企業全体の安定性も高まるためです。

分野によって異なるレジリエンスの意味

レジリエンスはメンタルヘルス以外の領域でも幅広く使われています。

種類 意味
組織レジリエンス 企業が危機・市場変動に適応しながら事業を継続する力。
不確実性が高い現代では特に注目されています。
災害レジリエンス 自然災害による損失から、地域や都市が早期復旧する力。
復興のみならず、平時からの備えも含みます。
環境レジリエンス 気候変動や生態系の変化への適応力・回復力を指します。
サイバーレジリエンス サイバー攻撃を完全に防げない前提で、攻撃後も機能を維持・回復する力。

レジリエンスの対義語「脆弱性」との関係

レジリエンスの対義語は「脆弱性(バルネラビリティ)」です。

脆弱性とは、外部からのストレスや衝撃に対して壊れやすい、あるいは適応しにくい心理的傾向を指します。

レジリエンスは「壊れない心」ではなく、「壊れても戻れる心」を意味します。

一度落ち込んでも再び立ち上がる力こそが、真のレジリエンスです。

用語 意味
レジリエンス ストレスや困難から回復・適応する力
脆弱性 ストレスに対して傷つきやすい状態
ドクター渡辺 (精神科医)
ドクター渡辺 (精神科医)

この違いを理解することで、単なる我慢や根性論ではない、科学的な精神的回復の考え方が見えてきます。

レジリエンスとメンタルヘルスやストレス耐性との違い

ここでは、レジリエンスと混同されやすいメンタルヘルス・ストレス耐性・ストレスコーピング・ハーディネスとの違いを整理します。

それぞれの概念を理解することで、レジリエンスの本質的な意味がより明確になるでしょう。

メンタルヘルスとの違いをわかりやすく解説

メンタルヘルスとは、直訳すると心の健康を意味します。

ストレスを減らしたり、精神的な安定を保つためのケア全般を指す言葉です。

つまりメンタルヘルスは健康を守る考え方であり、レジリエンスは「健康を取り戻す力」と言えます。

項目 メンタルヘルス レジリエンス
目的 ストレスや不調を予防する 困難から回復し再び前進する
焦点 健康を維持する 回復・再起する
主なアプローチ ストレスケア、休養、カウンセリング 挑戦、学び、成功体験の積み重ね
渡辺先生(精神科医)
渡辺先生(精神科医)

メンタルヘルス対策が「守り」なら、レジリエンス向上は「攻め」と言えるでしょう。

ストレス耐性やストレスコーピングとの違い

ストレス耐性とは、ストレスを受けても崩れにくい耐える力を指します。

一方、レジリエンスはストレスで一時的に落ち込んでも、そこから回復する力です。

つまり、ストレス耐性が壁なら、レジリエンスはバネと表現することができます。

比較項目 ストレス耐性 レジリエンス
性質 ストレスに耐える力 ストレスから回復する力
方向性 防御的(耐える) 再生的(立ち直る)
多少のミスでも動じない 落ち込んでも早く切り替える

また、ストレスコーピングは対処法を意味し、具体的な行動や考え方の技術にあたります。

レジリエンスはその基盤となる力、つまりストレスから立ち直る土台と考えると分かりやすいです。

ハーディネスとの違いと共通点

ハーディネス(Hardiness)は、高ストレス下でも健康を維持する特性を指します。

どんな状況でも前向きに捉える思考傾向であり、楽観性やチャレンジ精神と関係が深いです。

ハーディネスが「ストレスを受けにくくする心の鎧」だとすれば、レジリエンスは「受けても立ち直る柔軟な筋肉」と言えるでしょう。

用語 特徴 共通点
ハーディネス ストレスを防御する心理的強さ 困難に対して前向きに対処できる
レジリエンス ストレスや失敗から立ち直る回復力

ハーディネスは防御、レジリエンスは再生。この2つを組み合わせることで、より強くしなやかなメンタルが形成されていきます。

レジリエンスの因子とは

レジリエンスとは、ストレスや逆境から元の状態に戻る力、あるいは状況を成長につなげる力のことを指します。働き方の変化や人間関係のストレスが増える今、従業員が健康的に働き続けるための重要な基盤となります。

レジリエンスを理解する際のポイントは、次の2つの視点です。

① 危険因子(ストレスを増やす要素)
保護因子(回復を助ける要素)

危険因子(ストレスを強める要素)

危険因子とは、ストレスの負担を大きくし、立ち直りを難しくする要素のことです。個人要因と環境要因の両方が含まれます。

種類 具体例
個人の状態 ・慢性的な疲労
・自己否定的な考え方
・心配しやすい/落ち込みやすい傾向
・対人ストレスが高い
環境・人間関係 ・職場の人間関係の不和
・相談相手がいない孤立状態
・業務量の過多/裁量の不足
・家庭環境の不調和

危険因子が重なるほど、ストレス反応が強まり、メンタル不調のリスクも高まります。

保護因子(立ち直りを支える要素)

一方で、ストレスがあっても心の回復を助けてくれるのが保護因子です。個人の力や周囲の支援が含まれます。

種類 具体例
個人の力 ・気持ちを落ち着かせる力(感情調整)
・「何とかできる」という自己効力感
・状況に合わせて考えを変えられる柔軟性
・問題解決の進め方が身についている
人間関係・支援 ・家族・友人・同僚のサポート
・相談できる相手の存在
・心理的安全性のある職場環境
企業で活用する際のポイント
危険因子をすべて取り除くことは難しいため、現実的には保護因子をどう増やすかが重要になります。
感情調整・思考のクセの見直し・相談行動の促進など、従業員が日常で使えるスキルを育てることで、職場全体のレジリエンスは着実に高まります。

レジリエンスの尺度

レジリエンスは目に見えにくい力ですが、質問紙(アンケート)によって数値化し、状態を把握することができます。ただし、人事・労務の実務においては、尺度の詳しい名称を覚える必要はありません。

ここでは、企業で活用される代表的な考え方だけを、わかりやすくまとめています。

代表的な尺度の役割・メリット

何がわかる? 実務での活用例
・ストレスへの耐性や回復のしやすさ
・感情調整力や未来志向などの特徴
・研修前後の変化
・レジリエンス研修の効果測定
・従業員アンケートに組み込んで職場の傾向を把握
・個別面談で「強み」「課題」のヒントにする

どんな尺度が使われている?(名称だけ知っておけば十分)

海外:Resilience Scale(RS) など
国内:精神的回復力尺度(ARS)、二次元レジリエンス要因尺度(BRS) など

いずれも信頼性の検証された質問紙であり、必要に応じて組織調査や研修で活用されます。

企業で活用する際のポイント
尺度そのものを詳しく理解する必要はありませんが、質問紙を活用すると「直感ではつかみにくい従業員の傾向」を把握できます。
特に、研修前後の変化や組織全体の課題を可視化する際に役立つため、健康施策の効果検証や人材育成の方向性を決める際に取り入れる企業が増えています。

レジリエンスが高い人の特徴

レジリエンスが高い人には、共通したいくつかの特徴があります。簡単に言うと、ストレスやトラブルがあっても、大きく崩れずに自分らしさを取り戻せる人です。

ポイント
レジリエンスは生まれつきだけで決まるものではなく、考え方やスキル、周囲からのサポートによって高めていくことができます。

① 思考に柔軟性がある(こだわりすぎず、切り替えが上手)

レジリエンスが高い人は、「こうでなければいけない」という考えに固執しすぎず、状況に応じて視点を変えたり、別の方法を試したりできます。

  • うまくいかなかった時も「別のやり方を考えてみよう」と前向きに捉えられる
  • 自分と違う意見を頭ごなしに否定せず、一度受け止めてから検討できる
  • 想定外のトラブルが起きても、必要以上に慌てず対応策を考えられる

このような思考の柔軟性は、変化の大きい今の職場環境では特に重要な要素です。

② 感情を適度にコントロールできる(感情に飲み込まれにくい)

レジリエンスが高い人は、ストレスを感じても感情に振り回されにくく、落ち着いて行動しようとします。感情をなくしてしまおうとするのではなく、うまく扱うイメージです。

  • イライラした時も、すぐに周囲に当たらず、一呼吸おいて話ができる
  • ミスがあっても必要以上にパニックにならず、事実と向き合える
  • 感情の波があっても、業務への影響が比較的少ない

感情のコントロールは、アンガーマネジメントやセルフケアとも深く関わるスキルです。

③ 自尊感情(自己肯定感)が健全に保たれている

ここでいう自己肯定感は、何でも自信満々という意味ではありません。できているところも、うまくいっていないところも含めて、自分を現実的に受け止められるイメージです。

  • 失敗しても自分には価値がないと極端に落ち込まない
  • 他人と比べてばかりではなく、自分のペースで成長を考えられる
  • 自分の強みや得意なことを理解し、仕事に活かそうとする

自尊感情が安定している人は、他者に対しても攻撃的になりにくく、穏やかな関係を築きやすい傾向があります。

④ 自責と他責のバランスが良い

レジリエンスが高い人は、何か問題が起きた時に自分には何ができるかを建設的に考えますが、すべてを自分のせいと抱え込むわけではありません。

  • 結果を振り返り、次に活かすポイントを見つけられる
  • チームや会社の課題も自分とは関係ないで終わらせず、自分事として考えられる
  • 不満や愚痴だけで終わらず、改善のための行動につなげようとする

極端な自責でも他責でもない健全な自責思考は、主体的な行動やPDCAサイクルの推進にもつながります。

⑤ 適度な楽観性がある(悲観しすぎず、盲目的にもならない)

レジリエンスが高い人は、困難な状況でも何とかできる部分があるかもしれないと、一定の希望や可能性を見出そうとします。

  • 失敗やトラブルの中からも、学びや改善のヒントを探そうとする
  • 先のことを過度に悲観しすぎず、必要以上の不安に飲み込まれない
  • 物事を長い目で見て、今はその途中と捉えられる

根拠のないなんとかなるさではなく、できることはやったうえでの楽観性が、回復力を支えます。

⑥ 周囲との関係づくりが上手い(相談・連携が自然にできる)

レジリエンスは一人で頑張る力ではありません。支え合いやつながりの中で発揮される力です。レジリエンスが高い人ほど、周囲との関係づくりを大切にします。

  • 困った時に一人で抱え込まず、必要に応じて相談できる
  • 相手の表情や言葉の裏にある気持ちを汲み取ろうとする
  • 上司・部下・同僚と、安定したコミュニケーションを保ちやすい

こうした人が増えるほど、職場の心理的安全性も高まっていきます。

⑦ 事実を受け止め、前に進む行動ができる

レジリエンスが高い人は、結果の良し悪しにかかわらず、起きた事実と向き合い、次の一歩に結びつけようとします。

  • うまくいかなかった原因を冷静に振り返り、改善案を考える
  • 一度の失敗で諦めず、必要に応じてやり方を変えながら挑戦を続ける
  • 完璧さよりも前進し続けることを大事にする

こうした姿勢は、個人の成長につながるだけでなく、組織にとっても大きな力になります。

レジリエンスが高くない人の傾向

一方で、レジリエンスが十分に高まっていない場合、次のような傾向が見られることがあります。

  • 考え方が一方向に偏りやすく、こうするしかないと視野が狭くなる
  • 感情の波が大きく、仕事にも影響しやすい
  • 自分にも人にも厳しく、完璧を求めすぎて疲れてしまう
  • 人に頼ることが苦手で、一人で抱え込んでしまう
  • 自分の悪いところばかりに目が行き、自己評価が低くなりがち
  • 新しいことや変化へのチャレンジを避けがち

もちろん、これらの特徴がその人のすべてというわけではありません。レジリエンスはトレーニングや支援によって少しずつ高められるスキルであり、適切な関わりや環境づくりによって変化していきます。

ポイント
レジリエンスが高いかどうかは、単に打たれ強いかどうかではありません。
思考の柔軟性、感情の扱い方、周囲との関係づくりなど、いくつかの要素に分解して考えることで、
どこをサポートすれば、その人が働きやすくなるのかが見えやすくなります。
研修や面談、職場環境の改善とあわせて、レジリエンスの視点を取り入れていくことが有効です。

レジリエンスを高める方法

レジリエンスは、生まれつきの性質だけで決まるものではありません。日々の習慣や考え方、周囲の環境によって後から伸ばすことができる育てられる力です。ここでは、個人ができる取り組みと、企業が整えたい環境づくりの両方を、わかりやすく解説します。

ポイント
レジリエンス向上はスキルの積み重ね × 職場環境の支援
個人だけの努力では限界があるため、組織としての後押しも重要です。

 個人で実践できるレジリエンス向上の方法

① 思考のクセを整える(認知の再構成)

ストレスがかかると、人は極端な思考になりやすくなります。認知の再構成は、偏った捉え方を修正し、現実的でバランスの取れた思考に整える方法です。

具体的なコツ

  • 「本当にそうと言える根拠はある?」と一度立ち止まる
  • 悪い面だけでなく、良い面・中立の面にも目を向ける
  • 同じ状況で友人に相談されたら何と言うか、他者目線で考えてみる
  • 「0か100か」で判断しない(完璧じゃなくてもOK)

思考のクセが整うことで、感情や行動にも余裕が生まれ、ストレスに流されにくくなります。

② 感情を落ち着かせるスキルを身につける

感情調整は、怒り・焦り・不安などの感情に飲まれず、一度落ち着いてから動くためのスキルです。これはトレーニングによって高めることができます。

代表的な方法

  • 深い呼吸(4秒吸って → 6秒で吐く)を数回繰り返す
  • 肩・手の力を入れてから一気に抜く「筋弛緩法」
  • その場でできる軽いストレッチ
  • 嫌な気持ちをメモに書いて「見える化」して整理する

感情を整えるだけで、判断ミスが減り、落ち着いた行動が取りやすくなります。

③ 周囲に相談する習慣を持つ

レジリエンスは一人で強くなる力ではなく、必要な時に支えを求められる力。孤立は不調につながりやすいため、相談先の確保が重要です。

相談行動を身につけるポイント

  • 小さな悩みでも早めに人に話す癖をつける
  • 「こんなこと相談して良いのかな?」という壁を下げてみる
  • 家族・友人・同僚・上司など複数の相談先を持つ
  • 相談しやすい人を日頃から見つけておく

研究では、相談相手が多いほどメンタル不調の発生率が低いことが示されています。

自分の強み・成功体験を活かす(自己効力感の強化)

自分ならできるかもしれないという感覚は、レジリエンスの基盤となります。小さな成功体験の積み重ねが、困難を乗り越える力につながります。

強みを育てるためのコツ

  • 1日の中でできたことを3つ書き出す
  • 他者から褒められた点・評価された点を記録する
  • 得意分野を業務上で活かす工夫をする
  • 成功体験を定期的に振り返って自信に変える

 

健康習慣を整える(睡眠・運動・休息)

レジリエンスは心だけではなく、身体の状態からも大きく影響を受けます。睡眠不足や疲労は、判断力・感情の安定・柔軟性すべてを低下させます。

すぐ取り入れられる健康習慣

  • 十分な睡眠(7時間前後を目安)
  • 軽い運動(散歩やストレッチでも効果あり)
  • 栄養バランスを意識した食事
  • PC作業の合間にこまめな休憩を入れる

体が整うだけで、ストレス反応は穏やかになります。

組織としてレジリエンスを高めるための取り組み

個人の努力だけでは限界があるため、組織として「保護因子(支援・つながり・環境)」を整えることが重要です。ここでは、企業で取り組みやすい施策をまとめています。

① 心理的安全性の高い職場づくり

心理的安全性とは、「ミスや弱さを見せても否定されない」「相談しても大丈夫」と思える状態のこと。これが高い組織はレジリエンスも自然と高まります。

企業の取り組み例

  • ミスを責めるのではなく、再発防止につながる対話を行う
  • 上司が「何でも相談して良いよ」とメッセージを明確に伝える
  • 意見を否定せず、一度受け止めてから議論する文化を育てる
  • チーム内のコミュニケーション機会を増やす

心理的安全性は、離職防止やエンゲージメント向上にも直結します。

② 適切な業務量と裁量の確保

どれだけレジリエンスが高くても、過度な業務負荷が続けば限界が来ます。業務量の調整は、レジリエンスを発揮する土台です。

企業で整えたいポイント

  • 業務量の偏りを定期的にチェックする
  • 繁忙期と閑散期のバランスを可視化する
  • 「自分で決められる裁量」を適度に持たせる
  • 非効率な作業を減らす改善活動を進める

③ 上司・リーダーの関わり方(ラインケア)の強化

レジリエンスの高い組織づくりには、上司の関わり方が欠かせません。上司との適切なコミュニケーションは、従業員のストレスを大幅に軽減します。

効果的なラインケアの例

  • 定期的な1on1ミーティングの実施
  • 日常的な声かけ(ねぎらい・状況確認)
  • 承認・フィードバックの質を高める
  • 管理職向けセルフケア・ラインケア研修の実施

上司の支援があると、従業員は安心して挑戦や相談ができるようになります。

④ レジリエンス強化研修の導入

多くの企業が取り入れているのが、レジリエンス強化研修です。実践的なスキルが短時間でも習得でき、セルフケア能力の向上に役立ちます。

研修で扱われる代表的な内容

  • 思考のクセを整えるトレーニング(認知の再構成)
  • ストレスコーピング(対処スキル)の習得
  • コミュニケーション力向上
  • 自己理解・強みの棚卸し

短時間でも実感が得やすく、ストレス対処力の強化につながります。

⑤ 組織全体のつながりを強化する施策

つながりが強い組織ほど、不調者が出にくく、困難時にも助け合いやすくなります。

つながりを作る仕掛け

  • メンター制度・相談窓口の設置
  • チームの振り返りミーティング
  • 何気ない雑談ができる場づくり
  • オンボーディング支援(新入社員の孤立防止)

誰かが見てくれているという感覚は、レジリエンスの大きな支えになります。

レジリエンスは、特別な人だけが持つ力ではありません。考え方・スキル・環境を整えることで、誰でも育てることができます。企業としては、個人のスキル向上に加えて、心理的安全性や業務量の適正化、相談しやすい風土づくりを組み合わせることで、組織全体のレジリエンスが高まり、離職防止や生産性向上にもつながります。
 

おわりに

レジリエンスは、ストレスや困難に直面しても、落ち込みっぱなしにならずに回復して前に進んでいく力です。

思考のクセを整えたり、感情を落ち着かせる方法を身につけたり、周囲に相談したりすることで、誰でも少しずつ高めていくことができます。

ストレスをなくそうと無理をするのではなく、上手に付き合いながら、立ち直る力を育てていくことが、これからの働き方にとって重要になっていきます。

 

(C) Japan Corporate Health Responsibility Consulting Co.,ltd All Rights Reserved.

タイトルとURLをコピーしました