
テレビや雑誌で「レジリエンス」という言葉を聞くようになったけど、そもそもレジリエンスってなんだろう?
ストレスがあったら、避けるしかない!と思ってきたけど、もっといい対処法があるなら知りたいな。

(精神科医)
それでは今回は、レジリエンスとは何か?を知ってもらうことで
ストレスに飲み込まれることなく対応する道があるということを説明します。
レジリエンスとは何か?
最近よく使われるようになった言葉であるレジリエンス。レジリエンスとは「外からのストレスを跳ね返す力」という意味です。様々な分野において用いられていますが、心理学の世界では、「精神的な回復力」という意味で使用されます。
具体的には、レジリエンスとは、ショックな出来事やネガティブと思われる状況に直面したとき、心を落ち着かせ精神的な安定を保ち、適切な対応ができる能力のことを指します。

(精神科医)
見方を変えると、レジリエンスとは「障壁を乗り越えるために必要な力」ともいえます。
ビジネスにおけるレジリエンスとは
ビジネスにおけるレジリエンスには、「個人のレジリエンス」と「組織・ビジネスのレジリエンス」という二つの側面があります。
個人のレジリエンスでは、困難な状況を受け入れ、柔軟に対応しながら判断を下し、前向きに行動し続ける心構えや能力が重要です。一方で、組織のレジリエンスについては、環境の変化に適応し、自己改革を促すような組織文化や環境が大切にされています。
ビジネスにおいてレジリエンスが重要視される理由はいくつかあります。
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変化への適応: 現代のビジネス環境は急速に変化しており、企業はその変化に迅速に対応する必要があります。レジリエンスがあることで、困難な状況でも柔軟に適応できるようになります。
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ストレス管理: 多忙な業務や人間関係の複雑さはストレスの原因となります。レジリエンスを高めることで、ストレスを効果的に管理し、精神的な疲労を軽減することができます。
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持続的な成長: レジリエンスが高い人や組織は、逆境を乗り越える力を持ち、長期的な成長や成功を実現しやすくなります。
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チームワークの強化: レジリエンスを育むことで、チーム内のコミュニケーションや協力が促進され、組織全体の結束力が高まります。
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リーダーシップの向上: レジリエンスを持つリーダーは、困難な状況でも冷静に判断し、チームを励ますことができるため、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。
これらの理由から、ビジネスにおいてレジリエンスは非常に重要な要素とされています。
それでは個人においてレジリエンスを高めるにはどうしたらよいのでしょうか?それを知るために、ストレスに強い人、すなわちレジリエンスがある人とストレスに弱い人との違いについて国内外の研究結果から見ていきたいと思います。
ストレスに強い人とストレスに弱い人|その差は何?
例えば、病気と環境との関係について、人々が病気になりやすいという環境があるということは、研究によって明らかになっています。しかし一方では、同じような環境を体験しても、病気にならない人もいます。その差は一体何なのでしょうか?
ストレスに強い人、すなわちレジリエンスがある人の特徴には、次の要因があるようです。
自尊感情
自尊感情とは、自分は価値のある存在だと思える感覚、自己に対する肯定的な感情です。
自尊感情を育てるために次の2つのことが特に重要とされています。
・周りから受け入れられているという体験
・小さくても成功体験を積み重ねていくこと
安定した愛着
安定した愛着とは、良好な母子関係に見られるように、子どもが安心・安全を感じ、そこから発達する他者へつながる力です。
ユーモアのセンス
本当は避けたいけど起きてしまった出来事を拒絶や拒否せず、受け入れざるを得ないものと、視点を変えて笑いを交えて受け入れるようなユーモアのセンスがあることで、深刻さから解放されることもあります。
楽観性
楽観性とは、ネガティブな出来事に直面しても、この状況を受け入れた上で、これを変えるためには何ができるか問い、変えるために適切に行動できるということです。
対人関係能力
対人関係能力とは、社会的なスキルや問題解決能力、欲求を抑制する力などのことを指します。
これら5つの要因がある人は、ストレスに強い傾向があると精神科医のアーミッドは提示しています。
日本の大学生を対象に、ストレスに強い学生と低い学生を比較した研究があり、次にこの研究から、両者の違いについて見ていきます。
レジリエンスがありストレスに強い人の特徴
日本の大学生を対象に、ストレスに強い学生と低い学生を比較した研究があります。
レジリエンスがありストレスに強い人の傾向についてこの研究は次のように提示しています。
- 他者と比べず、自分の悪いところを否定的ではなく改善すべき点として捉える
- 日々の課題や高い目標を肯定的に捉え、積極的に取り組む
- 他者の援助を受け入れたり、悩みを他者に打ち明けたりする
- 努力して目標を達成することが、自分の成長でありそれ自体を楽しいと捉える
ストレスに強い人の傾向が明らかとなりましたが、ストレスに弱いような場合は改善することはできるのでしょうか?
(精神科医)
ストレスに強いという要因は、自分自身で育てることができる能力です。
ストレスに強くなる方法については、本サイトで様々な角度から紹介していきますが、この記事では、すぐに実践できる方法を紹介します。
今すぐできる!ストレスに強くなる方法
レジリエンスがありストレスに強くなるために、今すぐに実践できることは、睡眠と運動です。
ストレスに強くなる方法|睡眠
レジリエンスに関する様々な研究をみてみると、睡眠との関係が指摘されています。
睡眠の質がよい場合、問題が直面したとき、必要以上に深刻に受け取らず、積極的に行動ができます。しかし、睡眠不足や睡眠障害などうまく取れていないと、悲観的に出来事を認識し、適切に行動もとれなくなってしまいます。

ストレスに強くなる方法|運動
運動習慣がある人の方が、ストレスに強くなるという報告があります。ショッキングな出来事があると、思考をフル回転させ、深刻さを加速させることが往々にしてあります。
そのような時は、思い浮かぶアイディアも悲観的になりがちです。身体が自由に動く場合は、散歩や軽い運動でリフレッシュすることがとても重要です。
(精神科医)
散歩や軽いジョギングなど、身体を動かしてみると、自分を幸せにするようないいアイディアが浮かびやすくなります。
おわりに
この記事では、レジリエンスとは「ストレスをはね返す力」であることを説明し、レジリエンスがありストレスに強い人の特徴・要素について明らかにしてきました。
レジリエンスは自分で育てることができます。今後の記事でレジリエンスを育てストレスに強くなる方法について紹介していきます。
(出典:『実践!ストレスマネージメント』渡辺洋一郎 p.3-7)