2026年4月1日、改正された女性活躍推進法※が施行されます。
最大のポイントは「情報公表義務の対象企業が拡大」されたこと。
これまで301人以上の企業のみが対象でしたが、101人以上の中小企業にも義務が拡大されます。本記事では改正内容をわかりやすく解説し、実務担当者がすぐ動ける対応チェックリストもご用意しました。
※正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
改正の経緯
女性活躍推進法は2016年に施行された法律で、企業に女性が活躍できる職場環境の整備を義務づけるものです。今回の改正(2025年6月11日公布)では、以下の2点が大きなポイントとなっています。
- 当初は時限立法として制定された女性活躍推進法について期限を10年延長(2036年3月31日まで)
- 中小企業を含むより多くの企業で女性活躍に関する情報公開を求める
🌸 女性活躍推進法の3つの基本原則
採用・昇進等の機会を積極的に提供し、性別による固定的な役割分担が職場慣行に与える影響に配慮すること
職業生活と家庭生活の両立に必要な環境を整備し、継続的に両立できる仕組みをつくること
職業生活と家庭生活の両立について、本人の意思が尊重されること
引用:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の概要|厚生労働省
情報公開の義務が拡大
女性の職業生活における活躍に関する情報公表の強化として、情報公開の義務が拡大します。
| 企業規模 | 改正前 | 改正後(2026年4月〜) |
|---|---|---|
| 301人以上 | 男女間賃金差異+2項目*以上を公表 *項目は次項を参照ください |
男女間賃金差異+女性管理職比率+2項目以上を公表 |
| 101人以上〜300人以下 | 1項目以上を公表 |
男女間賃金差異+女性管理職比率+1項目以上を公表 |
| 100人以下 | 努力義務 |
引き続き努力義務 |
「女性管理職比率」の公表義務化が追加された背景には、日本の管理職における女性割合が国際的に見て低い水準にあるという現状があります。日本の就業者に占める女性の割合は2023年時点で45.2%と、諸外国と大きな差はありません。しかし、管理職レベルになると状況は一変します。
管理職に占める女性割合の国際比較(2023年)
多くの先進国
30%以上
米・英・仏など
日本
14.6%
国際的に低水準
就業者に占める
女性割合(日本)
45.2%
諸外国と同水準
就業者の約半数が女性であるにもかかわらず、管理職になると14.6%にとどまるというギャップは、日本の職場における課題を端的に示しています。今回の公表義務化は、企業の透明性を高めて女性活躍を社会全体へ広げるとともに、求職者が企業を選ぶ際の重要な判断材料を提供する狙いがあります。
何を公表するのか
① 男女間賃金差異(必須)
男性労働者の平均賃金に対する女性労働者の平均賃金の割合をパーセントで示します。以下の3区分すべての公表が必要です。
- 全労働者
- 正規雇用労働者(正社員)
- 非正規雇用労働者(契約・パート・アルバイト)
通勤手当などを除いた賃金で計算し、小数点第1位まで表示します。
② 女性管理職比率(必須)
「管理職」=課長級+課長より上位の役職(役員を除く)の合計です。
「課長級」とは?
- 二係以上 または 構成員10人以上の組織の長(課長相当)
- 呼称に関係なく、課長と同等の職務・責任を持つ者
※「課長代理」「課長補佐」は原則として課長級に該当しません
③ 任意選択項目(1項目以上)
以下の2カテゴリ計14項目から、301人以上は各1項目以上、(計2項目以上)、
101人以上は、どちらか1項目以上を選んで公表します。なお、100人以下は引き続き努力義務となります。
出典:女性活躍推進法が改正されました!男女間賃金差異と女性管理職比率の公表義務が拡大女性の健康上の特性への配慮も盛り込まれました(厚生労働省)
| 女性の活躍機会に関する実績(7項目) | 仕事と家庭の両立に関する実績(7項目) |
|---|---|
|
|
公表のスケジュール
初回の公表タイミングは、改正法施行後に最初に終了する事業年度の実績を、次の事業年度開始後おおむね3か月以内に公表します。
| 事業年度の終了 | 対象期間 | 公表の期限 |
|---|---|---|
| 2026年5月末に事業年度が終了 | 2025年6月〜2026年5月 | 2026年8月末までに公表 |
| 2026年12月末に事業年度が終了 | 2026年1月〜2026年12月 | 2027年3月末までに公表 |
| 2027年3月末に事業年度が終了 | 2026年4月〜2027年3月 | 2027年6月末までに公表 |
初回以降は年1回以上、最新の数値を更新する必要があります。
今回の改正では、女性の健康上の特性への配慮が法律で明確化されました。一般事業主行動計画を策定する際に、以下のような取組みを盛り込むことが推奨されています。
- 生理休暇を取得しやすい環境の整備
- 女性の健康上の特性に配慮した休暇制度・柔軟な働き方(フレックス、テレワーク等)
- 健康相談窓口の設置(産業医・カウンセラー、オンライン相談など)
- 婦人科検診の受診支援
- 健康上の特性に関する研修・啓発活動
具体的な取組みの例
具体的な取組みの例として、次のような内容が挙げられています。
新設「えるぼしプラス」とは
厚生労働省では、女性活躍推進法に基づき、既存の「えるぼし認定」に加え、職場における女性の健康支援に取り組む企業を認定する「えるぼしプラス」認定及び「プラチナえるぼしプラス」認定を2026年4月1日から創設します。今回のプラス認定は、すでに「えるぼし」認定を受けている企業が申請することができる制度です。
認定を受けるには以下の4つの基準をすべて満たす必要があります。
- 女性の健康上の特性に配慮した休暇制度と柔軟な働き方制度のいずれかを設けていること
- 制度の内容を社内に周知していること
- 健康上の特性への配慮に関する研修などを実施していること
- 相談担当者を選任し、社内に周知していること
えるぼし認定は、女性活躍に積極的に取り組む企業であることを示す指標となり、採用力の向上や企業イメージの向上にもつながります。今後は指針の中で具体的な取り組み例が示される予定のため、制度の動向にも注目しておきたいところです。
企業データベースへの登録
女性活躍推進法では、企業が公表する情報について、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」への掲載が推奨されています。このデータベースは、企業の女性活躍に関する取組みや数値データを公表するためのサイトで、求職者や学生、取引先などが企業の情報を確認する際にも参考にされています。
企業は以下のいずれかの方法で情報を公表
-
厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」に掲載
-
自社ホームページに掲載
ただし、実務上は企業データベースへの掲載が推奨されています。同データベースでは、企業規模や業種などで検索できるため、求職者が企業を比較する際にも利用されることが多いためです。
▼女性の活躍推進企業データベース
https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/
また、単に数値を掲載するだけでなく、データベースの「注釈・説明欄」活用することも重要です。
例えば、次のような内容を補足することで、数値の背景が伝わりやすくなります。
-
数値の背景にある組織構成や職種構成
-
改善に向けた具体的な取組み
-
今後の目標や取組み方針
数値の大小だけで企業を評価するのではなく、改善に向けてどのような取組みを行っているかも、求職者にとって重要な判断材料になります。企業データベースは、単なる情報公表の場ではなく、自社の取組み姿勢を発信する機会として活用するとよいでしょう。
実務担当者向け 対応チェックリスト
以下の項目を順番に確認していきましょう。
| □ | 自社の従業員数を確認し、対象規模かチェックする |
| □ | 男女間賃金差異を「全労働者・正規・非正規」の3区分で算出する |
| □ | 女性管理職比率(課長級以上)を集計する |
| □ | 任意公表項目(14項目から1つ以上)を選択する |
| □ | 初回公表のスケジュールを確認し、担当者を決める |
| □ | 「女性の活躍推進企業データベース」にアカウント登録する |
| □ | 一般事業主行動計画に女性の健康支援に関する取組みを盛り込む |
| □ | 「えるぼし」及び「えるぼしプラス」認定取得の可否を検討する |
まとめ
今回の女性活躍推進法改正のポイントは3点です。
・101人以上の企業も「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の公表が義務化
・女性の健康支援が行動計画に盛り込まれることが推奨
・新認定「えるぼしプラス」が2026年4月からスタート
今回の改正は、企業に女性活躍の「見える化」を求める動きとも言えます。まずは自社の現状を把握し、どのような取組みを進めていくのかを整理することが、第一歩です。こうした取り組みを進めながら、真に目指すべき姿は「女性だけが輝く職場」ではなく、性別を問わず誰もが自分らしいキャリアを歩める環境です。
一人ひとりの「働きたい姿」に寄り添う職場づくりこそが、組織の成長と競争力を高める鍵となるでしょう。
参考 : 厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html
