明日朝早いのに眠れない、疲れているのに寝付けない、考え事がぐるぐるして止まらない・・・・・・。眠りたいのに眠れない時、焦りが高まって、ますます眠れないことに。
厚労省の調査によれば、日本人の21.7%が慢性的な不眠を訴えており、睡眠で休養がしっかりとれていないと感じる方が多いようです。
今回の記事では、眠れない原因とその対処法についてご紹介いたします。
不眠の4つのタイプ
眠りたいのに眠れない、色々考えすぎて眠れない。例えば大切な試験の前日や、旅行先などで誰しも眠れないという体験はあるかと思いますが、通常は数日のうちに睡眠習慣が元通りになることが多いです。
しかし、1ヶ月以上経過しても不眠が改善せず、日中の日常生活に支障が生じるような場合は不眠症が疑われます。代表的な不眠の症状は4つのタイプがあります。
入眠障害 | 寝付きが悪く布団に入ってもなかなか寝付けない |
中途覚醒 | いったん寝付いても途中で何度も目が覚めてしまう |
早期覚醒 | 起きようと思っていた時間よりも早く目が覚め、その後眠れない |
熟眠障害 | 十分な時間寝ているのに、眠った気がしないと感じる |
代表的な不眠の4つの症状は、いずれかひとつということではなく複合的に起こることもあります。
では次に眠れない原因について見ていきます。
眠れない原因
眠れない原因は人により様々あり、原因によって対処法も異なってきます。
主な原因としては、ストレス、生活の乱れ、就寝時の環境等が挙げられます。
ストレス
ストレスからくる緊張は、不眠の原因となります。出来事を振り返り、「あの時こうすれば良かった」「どうしてあんなこと言ってしまったんだろうか」と色々考えすぎて思考が止まらず、心も体も休まらない状態となります。
生活の乱れ
夜ふかしや不規則な食事、暴飲暴食など生活の乱れから、体内リズムが崩れ、不眠につながることもあります。
また、仕事の関係で夜勤等の交代制勤務による昼と夜との区別がつかないような場合も睡眠のリズムが崩れる傾向があります。
眠る前の食事
お腹いっぱい食べると眠くなることが多いですが、就寝前の食事は睡眠の質を低下させます。満腹状態になると催眠効果があるホルモンが分泌され、実際に眠気を催します。
しかし、このホルモンは食べたものを消化させるための働きを促し、脳と体は休まることなく働き続け、睡眠の質としては浅い眠りになりがちです。
アルコール・カフェインの摂取
寝付きを良くするために飲酒されることもあるかと思います。実際に、適度なアルコール摂取はリラックス効果もありますが、アルコールは睡眠の質を低下させます。
アルコールを飲むと眠りにつくまでの時間は短くなる傾向がありますが、時間がたつと眠りが浅くなり途中で目が覚めたり、早朝に目が覚めることが多くなります。というのも、アルコールが体内で分解されるときに発生するアセトアルデヒドという物質が、深い睡眠を妨げるからです。
また、コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインにも注意が必要です。
カフェインには、交感神経を刺激して神経を興奮させる働きがあります。さらに、睡眠ホルモンの「メラトニン」の働きを抑制するともいわれています。
心の病気
心の病では、不眠を伴うことが少なくはありません。単なる不眠だと思っていたらうつ病だったということもあります。
眠れない日が続いたり、これまで楽しかったことが楽しめなかったりするなど見られましたら、専門医に相談することをおすすめします。
眠れない時に眠る方法
不眠の種類や原因について見てきました。不眠の原因は何かを知り、対処することが重要となってきます。ここではその場ですぐに実践でき効果的といわれている「眠れない時に眠る方法」についてご紹介いたします。
腹式呼吸で気持ちを落ち着かせる
眠りたいのに寝られないと焦るほど、緊張が高まり、ますます眠れなくなってしまうことがよくあります。
まず、すぐに試してほしいのが腹式呼吸です。とても簡単で、呼吸に意識を向けるだけで、気がついたら眠っていたということもあります。
やり方は、楽な姿勢で横になり、「フーッ」と口から息を吐きます。このとき、心の中で「1、2、3」と数えながら3秒間息を吐き、お腹がへこむのを意識します。
次に、ゆっくりと鼻から息を吸い込みます。無理のないペースで数分間続けてみてください。
睡眠前の入浴で入眠ニューロンの活性化
ニューロンとは情報処理と情報伝達に特化している神経細胞です。入眠ニューロンが活性化すると、眠気を引き起こします。
入眠ニューロンは体温の上昇によって活動が高まるため、入眠前の入浴や入眠時に寝室を暖かくすることが自然な眠気を引き起こすことに有効です。
体内時計をリセットする
人間の体は、日中は活動的に、夜間は休息状態に切り替わる体内時計が備わっており、体内時計は1日の始まりに光を浴びることでリセットされ、活動状態に導かれます。日中と夜間が切り替わるとき、体内時計から指令が出て、メラトニンが放出されます。
メラトニンとは松果体から分泌されるホルモンであり自然な眠りを誘う作用があるため「睡眠ホルモン」とも呼ばれています。
メラトニンの生成には、体内時計をしっかりリセットすることが重要です。体内時計のリセットは、光によって行われます。起床時、2,500ルクス以上の光を浴びると体内時計はしっかりリセットされます。
光の強さについて、太陽光の照度はとても高く、太陽光の日平均照度は、32,000ルクスから100,000ルクス程度。曇っていても屋外なら10,000ルクス程度あるため、起床時は、カーテンを開け、太陽の光を感じることをおすすめします。
運動を習慣化する
運動習慣がある人には不眠が少ないことが、国内外の研究で明らかとなっています。1回だけの運動は不眠にとっては効果はあまり期待できず、習慣的な運動が効果的です。
運動量については、激しい運動は睡眠を妨げるため、負担がすくなく継続しやすいウォーキングや軽いランニングなどの有酸素運動をおすすめします。
運動するタイミングは、就寝の3時間程度に完了する夕方から夜が不眠解消に適していると言われています。運動することで深部体温は上昇し就寝時には低下します。
睡眠は深部体温が低下するときに出現しやすく、さらに低下の落差が大きいと深い眠りに繋がりやすいといわれています。そのため寝る3時間前程度に軽い運動で深部体温を少し上昇させることが睡眠に効果的です。
寝る前のリラクゼーション
寝る前に、心身の緊張をほぐし、副交感神経を優位にするようなリラクゼーションを取り入れることも不眠解消に効果的です。
次の項目で紹介する筋弛緩法等の他、ストレッチ、瞑想、気持ちを落ち着かせるアロマ(ラベンダーやベルガモット)など、お気に入りのリラクゼーション方法を見つけてみるのはいかがでしょうか。
筋弛緩法
色々考えすぎて眠れないときの対処法としては、筋弛緩法をおすすめします。筋弛緩法により身体に意識を向け、思考の暴走を抑えることに繋がります。
筋弛緩法は、体の部位ごとにグッと力をいれ、一気に力を抜くことで、体の緊張を緩めるリラクセーション法です。体の疲れがとれたり、眠りやすくなったりします。筋弛緩法のやり方は次の通りです。
- ゆったりと座るまたは横になる
- 軽く目を閉じ全身の力を抜く
- 親指を握るようにこぶしを作り、 10秒ほど力を入れる 一気に力を抜きリラックス そのまま20 秒ほどじっとして緊張が ほどけていく感覚を味わう
- 上腕、背中、肩、首、顔、腹部、足、 全身と順番に行なっていく。
筋弛緩法の他、ヨガやストレッチなどで体の緊張をほぐす方法も、色々考えすぎて眠れないときにおすすめです。
不眠のツボを刺激する
ツボを刺激することで、不眠の原因となる不調が緩和されることがあります。
一般的に不眠によいとされるツボは「労宮」と「失眠」です。
労宮(ろうきゅう)
手を軽く握った時、人差し指と中指の先端の中間にあるツボ
労宮は精神機能を司り、やや強めに押すと全身の緊張が緩み、ゆったりとした気分になるといわれています。
失眠(しつみん)
かかとの中央にあるツボ
失眠は軽度な悩みによる不眠に効果的といわれています。お灸や、湯たんぽなどで温めて刺激を加えます。
米軍採用の2分で寝れる睡眠導入法
この睡眠導入法は、数多くのオリンピック選手を輩出したアメリカ陸上のコーチ、パド・ウィンター氏の著書『Relax and Win』で紹介されたものです。
米軍の要請により、パイロットの睡眠改善のために開発されたもので、
体の部位を呼吸とともに細かく意識するボディスキャン瞑想に似ていると言われています。
この導入方法で、96%のパイロットに効果が見られ、さらにマシンガンの銃声が聞こえる状況でも有効だったといいます。
- ベッドに横たわり、顔に意識を向けます。
額、頬、アゴ、下、鼻などひとつひとつ顔のパーツを意識していきます。 - 次に肩に意識を向け、力を抜き、肩と腕全体の重みを感じます。
肩全体が床に沈み込むようなイメージをします。 - 胸・胴体全体を意識します。
こちらも胴体の重みを感じ、床に沈み込んでいくイメージをしながらリラックスします。 - 足も同様に意識をします。
片方の足の付根、もも、ひざ、すね、ふくらはぎ、足の甲、足の指、足の裏とそれぞれ意識していきます。
もう片方も同様に行い、足全体の重みを感じます。 - 最後の10秒、何も考えず頭を空っぽにします。
考えないようにするために、次の3つの方法が紹介されています。
①暗い部屋の中で、ハンモックに揺られて心地よい気分になっている
②穏やかな湖で、カヌーに揺られ、澄み渡る青い空をぼんやり眺めている
③10秒間「何も考えない、何も考えない」と自分に言い聞かせる
自律神経を整える三行日記
三行日記とは、順天堂大学医学部の小林弘幸教授が著書「『3行日記』を書くと、なぜ健康になれるのか?」(アスコム)紹介している自律神経のバランスを整える方法です。
「3行日記」のやり方は、眠る前に次の3つのことをノートに手書きします。
①今日一番失敗したこと、うまくいかなかったこと、よくなかったこと、
②今日一番感動したこと、うまくいったこと
③明日の目標
次のようにいくつかルールがあります
- 手書きする
- 眠る前に書く
- 必ず日付と曜日を記入
- できるだけ簡潔に
- 1~3の順番で書く
- ゆっくり丁寧に書く
今日1日の出来事を手書きで書き留めることで、客観的に自分をふりかえり、気持ちが落ち着き自律神経のバランスを正常に戻すことができるようです。
明日の予定や気になっていることを紙に書き出す
眠れない原因のひとつとして、思考が働きすぎて、興奮状態になりリラックスできないというものがあります。眠る前にあれこれ考えてしまうと、どんどん思考が加速してしまい、益々眠れないことにもなりかねません。
なにか気になることや、明日の予定など、思い浮かべると次々にいろいろな思考が湧き出しますが、紙に書くことで、冷静になることにつながることがあります。
疑問を抱くと脳はそれに対する答えを探し続けるよう作用するため、眠る前には、自分自身に対して「お疲れさま、今日1日頑張ってくれてありがとう。今日やるべきことは終わったよ」と自分自身を労うことで1日の終わりを脳にも伝えることもおすすめです。
おわりに
不眠の原因と様々な対処法について紹介しました。眠れない夜というのは辛いものです。リラックス方法などを実践してみても不眠症状が続く場合は、専門医への相談をおすすめします。
参考資料
厚労省:2018「国民健康・栄養調査」の結果(2020年公開)
厚労省:e-ヘルスネット「不眠症」
厚労省:e-ヘルスネット「メラトニン」
坪田 聡:なぜ、寝る前の食事は睡眠の「質」を極端に落とすのか?
日本生活習慣予防協会:アルコールにより睡眠の質が低下 夕方以降の飲酒に注意
養命酒:眠れない夜は、ココを押そう!スーッと眠りに誘う「快眠ツボ」
東洋療法学校協会:東洋療法雑学辞典
小林弘幸:「『3行日記』を書くと、なぜ健康になれるのか?」(アスコム)
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