寝たいのに寝れない、明日朝早いのに眠れない、疲れているのに寝付けない、考え事がぐるぐるして止まらない・・・・・・。眠りたいのに眠れない時、焦りが高まって、ますます眠れないことに。
厚労省の調査によれば、日本人の21.7%が慢性的な不眠を訴えており、睡眠で休養がしっかりとれていないと感じる方が多いようです。
今回の記事では、寝たいのに寝れない原因と寝たいのに寝れない時の対処法についてご紹介いたします。
不眠の4つのタイプ
寝たいのに寝れない、色々考えすぎて眠れない。
例えば、大切な試験の前日や旅行先など、緊張や環境の変化から一時的に眠れなくなることは、誰にでもある経験です。このような一過性の不眠は「短期不眠」と呼ばれ、原因が取り除かれれば数日から数週間以内に自然と解消することが多いです。
しかし、1ヶ月以上にわたって不眠の状態が続き、日中の仕事や家事、学業などに支障が出ている場合は、「不眠症(慢性不眠症)」の可能性があり、適切な対処が必要です。不眠症は、単に寝つけないというだけではなく、睡眠の質やリズム全体に問題が及ぶこともあります。
代表的な不眠の症状には、以下の4つのタイプがあります。
入眠障害 | 寝付きが悪く布団に入ってもなかなか寝付けない |
中途覚醒 | いったん寝付いても途中で何度も目が覚めてしまう |
早期覚醒 | 起きようと思っていた時間よりも早く目が覚め、その後眠れない |
熟眠障害 | 十分な時間寝ているのに、眠った気がしないと感じる |
入眠障害(寝付きが悪い)
布団に入ってもなかなか眠れず、眠りにつくまでに30分〜1時間以上かかる状態です。特に、不安やストレス、緊張感が高いときに起こりやすく、「今夜も眠れないかもしれない」という不安そのものが、さらに眠れなくするという悪循環に陥ることもあります。若年層や、神経が過敏な人に多くみられます。
中途覚醒(途中で何度も目が覚める)
夜中に何度も目が覚めてしまい、その後再び寝つけない状態です。特に中高年以降になると、加齢に伴い眠りが浅くなるため、中途覚醒が起こりやすくなります。夜間にトイレに行く回数が増える、周囲の音や明るさに敏感になるなども一因です。日本人の成人における不眠症状の中で最も多く見られるタイプとされています。
早朝覚醒(朝早く目が覚めてしまう)
自分が望む時間よりも2時間以上早く目が覚めてしまい、その後眠れないという状態です。高齢者に多く、また、うつ病の代表的な症状のひとつでもあります。朝の気分の落ち込みや意欲の低下を伴う場合は、早期に専門医への相談が勧められます。
熟眠障害(ぐっすり眠れた気がしない)
睡眠時間は足りているはずなのに、**「眠った気がしない」「疲れが取れない」**と感じる状態です。睡眠の質が浅いため、起きたときにスッキリ感が得られません。睡眠時無呼吸症候群(SAS)や、周期性四肢運動障害(PLMD)など、睡眠中に身体の異常が現れる疾患が原因となっているケースもあります。
これらの不眠症状は、1つだけ現れる場合もあれば、複数が同時に現れるケースもあります。特に高齢者では、入眠障害と中途覚醒が同時に起こるなど、複合的な不眠症状を訴える人が多い傾向にあります。
不眠のタイプによって、適した対処法や治療法は異なるため、まずは自分の不眠がどのタイプに当てはまるのかを把握することが、改善への第一歩となります。
では、このような「眠れない」状態が続いてしまう背景には、どのような原因があるのでしょうか。
なぜ眠れない?──不眠の原因を知る
「眠りたいのに眠れない…」そんな悩みを抱える人は少なくありません。
不眠の原因は人によってさまざまで、原因によって対処法も大きく異なります。
代表的な要因としては、ストレスや生活習慣の乱れ、心や身体の病気、就寝環境などが挙げられます。ここでは、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
ストレス
多くの不眠の背景にあるのが「ストレス」です。
仕事や人間関係、将来の不安など、ストレスを抱えていると、交感神経が優位な状態(緊張モード)になり、心も体も「休息モード」に入れません。つまり、身体はベッドにあっても、脳は戦闘状態にあるのです。
たとえば、こんな経験はありませんか?
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布団に入ってから「あのとき、こうしておけばよかった…」と反省会が始まる
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明日の予定や失敗の予感を想像して、ドキドキしてくる
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「眠れなかったらどうしよう」と考えるほど眠れなくなる
これはまさに「ストレスが原因の不眠」の典型例です。
さらにストレスによって、脳内の睡眠ホルモン(メラトニン)やセロトニンの分泌が乱れ、眠りにくくなることが科学的にもわかっています。
さらに、「眠れないこと自体がストレスになる」という悪循環に陥ると、より眠れなくなり、やがて「睡眠=不安」と条件づけられてしまうこともあります。こうなると、不眠は慢性化しやすく、専門的な介入が必要になることもあります。
生活リズムの乱れ
人間の体は、約24時間周期の「体内時計」によって睡眠・覚醒のリズムを調整しています。このリズムが乱れると、自然と眠れなくなってしまいます。
例えば、以下のような生活習慣は要注意です。
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夜ふかし、スマホやパソコンの長時間使用(ブルーライトが体内時計を狂わせます)
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不規則な食事時間
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昼夜逆転の生活、交替勤務
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寝る直前まで明るい照明の下で過ごす
こうした生活の積み重ねが、「眠るべき時間に眠れない」状態をつくり出してしまうのです。
食事と睡眠の意外な関係
「お腹いっぱいだと眠くなる」と思われがちですが、寝る直前の食事は逆効果になることがあります。満腹になることで一時的な眠気は出ますが、体は食べ物の消化にエネルギーを使っており、内臓はフル稼働のまま。結果として、深い眠りに入りづらく、途中で目覚めやすくなるのです。
理想は、就寝2〜3時間前までに食事を済ませることです。
アルコール・カフェインの落とし穴
「お酒を飲んだ方がよく眠れる」という話を聞いたことがあるかもしれません。たしかに、アルコールには一時的な催眠作用があり、寝つきがよくなることはあります。
しかし実は、アルコールが体内で分解される過程で発生する「アセトアルデヒド」という物質が、深い眠り(ノンレム睡眠)を妨げることがわかっています。結果として、夜中に目覚めやすくなったり、早朝に目が覚めたりするのです。
また、カフェイン(コーヒー・緑茶・紅茶・エナジードリンクなどに含まれる)も要注意です。カフェインは、神経を覚醒させ、寝る前にお茶やコーヒーを飲むと眠れなくなることがあります。特に就寝の6時間前以内の摂取は、眠りの質に悪影響を与える可能性があります。
心の病気が隠れていることも
不眠が続いているとき、「単なるストレスや生活習慣の問題」と思っていたら、実はうつ病や不安障害の一症状だったということも少なくありません。
心の病気による不眠の特徴は以下のようなものです。
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疲れているのに眠れない
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以前は楽しめていたことが楽しめない
- 休日も憂鬱な気分になる
こうした状態が続く場合は、早めに精神科医・心療内科医に相談することが大切です。
身体の病気が眠りを妨げることも
不眠は、身体の不調から起こることもあります。たとえば、
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咳、喘息など呼吸器の病気
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頻尿を伴う前立腺肥大や膀胱炎
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胸の痛みや動悸を伴う心疾患
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腰痛、関節リウマチなどの慢性的な痛み
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睡眠時無呼吸症候群(寝ている間に呼吸が止まる)
これらはすべて、「眠りを妨げる要因」になりうるのです。特に夜間に症状が悪化するタイプの疾患では、眠りの質が大きく低下します。
睡眠環境の見直しも忘れずに
意外と見落としがちなのが、就寝時の環境です。
以下のような点が、睡眠を妨げている可能性があります。
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寝室が明るい、騒音がある
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室温が高すぎる/低すぎる
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寝具が合っていない(硬すぎる、蒸れるなど)
質の高い眠りには、「安心・快適・静かな環境」が欠かせません。
原因を見極めることが、回復への第一歩
不眠は、複数の要因が複雑に絡み合っていることが多いものです。ストレスだけでなく、生活習慣、身体や心の状態、環境など、さまざまな視点から自分自身を見つめ直すことが大切です。
「ただ寝つけないだけ」と軽く考えず、もし不眠が長引いているようであれば、早めに対策をとることが快眠への近道です。
眠れない時に眠る方法
不眠の種類や原因について見てきました。不眠の原因は何かを知り、対処することが重要となってきます。ここではその場ですぐに実践でき効果的といわれている「眠れない時に眠る方法」についてご紹介いたします。
腹式呼吸で気持ちを落ち着かせる
眠りたいのに寝られないと焦るほど、緊張が高まり、ますます眠れなくなってしまうことがよくあります。
まず、すぐに試してほしいのが腹式呼吸です。とても簡単で、呼吸に意識を向けるだけで、気がついたら眠っていたということもあります。
やり方は、楽な姿勢で横になり、「フーッ」と口から息を吐きます。このとき、心の中で「1、2、3」と数えながら3秒間息を吐き、お腹がへこむのを意識します。
次に、ゆっくりと鼻から息を吸い込みます。無理のないペースで数分間続けてみてください。
体温と眠りの深い関係 ― 入眠ニューロンを活性化する“温冷リズム”
眠気は、ただ自然に訪れるもの…と思いがちですが、実は脳と体のあいだには、しっかりとした“眠りのスイッチ”が存在しています。その鍵を握っているのが、「入眠ニューロン」と体温のリズムです。
入眠ニューロンとは、脳の中にある神経細胞の一種で、私たちが眠りに入るための準備を整えてくれる大切な存在です。この入眠ニューロンが活性化すると、覚醒状態を司る神経の活動が抑えられ、脳と身体は「おやすみモード」へと自然に切り替わっていきます。
では、どうすればこの入眠ニューロンを活性化できるのでしょうか?
そのヒントとなるのが、「体温のリズム」です。
人間の身体は、深部体温(=内臓を中心とした体の奥の温度)が少しずつ下がっていくときに、眠気を感じやすくなるという特徴があります。つまり、体の深部体温が“ゆるやかに下がっていく”ことが、眠りのスイッチを入れるサインになるのです。
そのためには、ただ冷やすのではなく、いったん体を温めてから、自然に体温が下がっていく流れをつくることが大切です。これがいわゆる「温冷リズム」です。
たとえば、就寝の1〜2時間前にぬるめのお風呂(40℃前後)にゆっくりと15分ほど入ることで、深部体温はいったん上昇します。そして、お風呂から上がって徐々に体温が下がっていく過程で、入眠ニューロンの働きが活性化しやすくなり、眠気が自然と訪れるようになります。
また、時間がない日には足湯だけでも十分効果的です。足を温めることで末端の血流が促進され、深部体温が穏やかに下がっていく助けになります。逆に、寝る直前に冷たい飲み物を一気に飲むと、体温が急激に下がってしまい、体が「まだ活動する時間」と判断して目が冴えてしまうこともあるので注意が必要です。
さらに、寝室の環境も見直してみましょう。寒すぎる寝室は体を冷やしすぎてしまい、逆に交感神経を刺激してしまうことも。冬場なら16〜20℃程度、夏場はエアコンなどで25〜27℃前後の室温に整えて、眠りに最適な温度と湿度を保つことが大切です。
このように、眠りのメカニズムには「脳」だけでなく「体」も深く関わっています。入眠ニューロンという眠りのスイッチをやさしく押してあげるために、入浴や足湯、快適な室温など、体温を整える工夫を取り入れてみてください。
眠気を誘う食べ物で、やさしく眠りをサポート
眠れない夜に、少しだけ食べ物の力を借りてみるのもひとつの方法です。
「寝る前に食べるのはよくない」と言われることもありますが、実は、食材の選び方やタイミングに気をつければ、眠りを助ける“おだやかなサポート”になってくれます。
眠気を誘う代表的な栄養素として知られているのが、「トリプトファン」や「マグネシウム」、「ビタミンB6」、「メラトニン」などです。たとえば、バナナにはトリプトファンとマグネシウムが豊富に含まれており、脳をリラックスさせて自然な眠りに導く効果が期待されています。ほかにも、ヨーグルトやチーズなどの乳製品、ナッツ類(特にアーモンドやくるみ)、白米や玄米、さらには少量のはちみつなども、眠りのホルモンであるメラトニンの生成を助けるといわれています。
ただし、ここでひとつ大切なポイントがあります。眠気を誘うとはいえ、就寝直前に食事を摂ると、胃腸が活発に働いてしまい、かえって眠りを妨げてしまうのです。そのため、こうした食材を摂る場合は、就寝の2〜3時間前までに、軽く取り入れることがポイントです。あくまで「夜食」ではなく、体と心をゆるめるための“軽いひとくち”という感覚で取り入れるのが理想です。
たとえば、夕食後に少しだけ空腹を感じるときは、バナナを1本食べる、温めた牛乳にはちみつを少し加えて飲む、無糖のヨーグルトにくるみをトッピングして少しつまむ……このような、やさしくて消化に負担の少ないものがおすすめです。
眠れない夜におすすめの飲み物
どうしても眠れない夜、何か飲み物で気分を落ち着けたいと思うことはありませんか?
そんなとき、体を内側からやさしくリラックスさせてくれる飲み物を取り入れるのも、眠りへの良いアプローチになります。選ぶポイントは、カフェインを含まず、体を温め、副交感神経を優位にしてくれるもの。ここでは、眠りをサポートする代表的な飲み物をご紹介します。
ホットミルク
まず最初におすすめしたいのは、やっぱりホットミルクです。温めた牛乳には、眠気を誘うホルモン「メラトニン」の材料となるトリプトファンが含まれています。さらに、温かい飲み物をゆっくり飲むことで、体がぽかぽかと温まり、気持ちも自然とほぐれていきます。甘さが欲しいときは、はちみつを少し加えると、セロトニンの生成もサポートされて、より深いリラックスにつながります。
ハーブティー
また、ハーブティーも眠れないときの心強い味方です。特に、カモミールティーは不安や緊張を和らげてくれる作用があり、昔から「おやすみ前の一杯」として親しまれています。ラベンダーのハーブティーも、優しい香りで気持ちを落ち着かせてくれるため、ストレス性の不眠にぴったりです。
少し意外なところでは、ルイボスティーもおすすめです。南アフリカ原産のノンカフェインのハーブティーで、抗酸化作用に優れ、ミネラルも豊富。クセが少なく飲みやすいので、ハーブティーが苦手な方にも人気です。
眠れないとき、こうした飲み物を「温かく、ゆっくり、丁寧に飲む」ことで、自然と呼吸が深くなり、心も落ち着いてきます。無理に眠ろうとせず、体と心に「そろそろ眠る時間だよ」とやさしく伝えてあげる――そんな夜のひとときを、自分のために用意してみてはいかがでしょうか。
体内時計をリセットする
人間の体は、日中は活動的に、夜間は休息状態に切り替わる体内時計が備わっており、体内時計は1日の始まりに光を浴びることでリセットされ、活動状態に導かれます。日中と夜間が切り替わるとき、体内時計から指令が出て、メラトニンが放出されます。
メラトニンとは松果体から分泌されるホルモンであり自然な眠りを誘う作用があるため「睡眠ホルモン」とも呼ばれています。
メラトニンの生成には、体内時計をしっかりリセットすることが重要です。体内時計のリセットは、光によって行われます。起床時、2,500ルクス以上の光を浴びると体内時計はしっかりリセットされます。
光の強さについて、太陽光の照度はとても高く、太陽光の日平均照度は、32,000ルクスから100,000ルクス程度。曇っていても屋外なら10,000ルクス程度あるため、起床時は、カーテンを開け、太陽の光を感じることをおすすめします。
運動を習慣化する
運動習慣がある人には不眠が少ないことが、国内外の研究で明らかとなっています。1回だけの運動は不眠にとっては効果はあまり期待できず、習慣的な運動が効果的です。
運動量については、激しい運動は睡眠を妨げるため、負担がすくなく継続しやすいウォーキングや軽いランニングなどの有酸素運動をおすすめします。
運動するタイミングは、就寝の3時間程度に完了する夕方から夜が不眠解消に適していると言われています。運動することで深部体温は上昇し就寝時には低下します。
睡眠は深部体温が低下するときに出現しやすく、さらに低下の落差が大きいと深い眠りに繋がりやすいといわれています。そのため寝る3時間前程度に軽い運動で深部体温を少し上昇させることが睡眠に効果的です。
寝る前のリラクゼーション
寝る前に、心身の緊張をほぐし、副交感神経を優位にするようなリラクゼーションを取り入れることも不眠解消に効果的です。
次の項目で紹介する筋弛緩法等の他、ストレッチ、瞑想、気持ちを落ち着かせるアロマ(ラベンダーやベルガモット)など、お気に入りのリラクゼーション方法を見つけてみるのはいかがでしょうか。
「眠れない」ときは、あえて一度“起きてみる”という選択
布団の中で目を閉じたまま、「眠らなきゃ」「もう〇時なのに」と焦ってしまう――そんな経験、ありませんか?でも実は、この“焦り”こそが、脳を覚醒状態にしてしまい、ますます眠れなくなる原因になることがあります。
そんなときに効果的なのが、「いったん布団から出てみる」という逆転の発想です。これは、睡眠医療の現場でもよく推奨されている方法で、「刺激制御療法(Stimulus Control Therapy)」と呼ばれる睡眠改善の行動療法のひとつです。
眠ろうとして布団に入ったのに、20〜30分たっても眠れないときは、一度寝室を出て、間接照明の落ち着いた空間でリラックスできることをしてみましょう。本を静かに読む、ストレッチをする、深呼吸をするなど、心が落ち着くことなら何でもOKです。ただし、スマートフォンやパソコンなど、光が強い画面を見るのは避けましょう。脳がさらに覚醒してしまう原因になります。
ポイントは、「布団の中=眠れない場所」と脳に覚えさせないこと。
眠気が戻ってきたら、改めて布団に入り直せば大丈夫。こうした小さな行動の積み重ねが、少しずつ“眠れる習慣”を整えていくのです。
静けさが気になる人には、「音」の力を借りてみる
夜の静けさがかえって気になってしまう…という方も多いのではないでしょうか?
そんなときは、ホワイトノイズや自然音などの“音の環境”を整えることで、安心して眠れる空間をつくるという方法があります。
ホワイトノイズとは、エアコンの「ゴーッ」というような一定の周波数の音のこと。雑音のように思えますが、この音が周囲の物音をかき消し、脳の覚醒を抑える効果があるとされています。最近では、ホワイトノイズ専用のアプリやYouTube音源も充実しているので、好みに合わせて選ぶことができます。
また、近年話題のASMRもおすすめです。ささやき声や、ゆっくりとした物音などが脳を心地よく刺激し、深いリラックス状態へ導いてくれます。特に「Sleep ASMR」などのジャンルでは、眠気を誘うことを目的に作られた動画や音声がたくさん配信されています。お気に入りの“眠れる音”を探してみるのも、ひとつの楽しみになるかもしれません。
筋弛緩法
色々考えすぎて眠れないときの対処法としては、筋弛緩法をおすすめします。筋弛緩法により身体に意識を向け、思考の暴走を抑えることに繋がります。
筋弛緩法は、体の部位ごとにグッと力をいれ、一気に力を抜くことで、体の緊張を緩めるリラクセーション法です。体の疲れがとれたり、眠りやすくなったりします。筋弛緩法のやり方は次の通りです。
- ゆったりと座るまたは横になる
- 軽く目を閉じ全身の力を抜く
- 親指を握るようにこぶしを作り、 10秒ほど力を入れる 一気に力を抜きリラックス そのまま20 秒ほどじっとして緊張が ほどけていく感覚を味わう
- 上腕、背中、肩、首、顔、腹部、足、 全身と順番に行なっていく。
筋弛緩法の他、ヨガやストレッチなどで体の緊張をほぐす方法も、色々考えすぎて眠れないときにおすすめです。
不眠のツボを刺激する
ツボを刺激することで、不眠の原因となる不調が緩和されることがあります。
一般的に不眠によいとされるツボは「労宮」と「失眠」です。
労宮(ろうきゅう)
手を軽く握った時、人差し指と中指の先端の中間にあるツボ
労宮は精神機能を司り、やや強めに押すと全身の緊張が緩み、ゆったりとした気分になるといわれています。
失眠(しつみん)
かかとの中央にあるツボ
失眠は軽度な悩みによる不眠に効果的といわれています。お灸や、湯たんぽなどで温めて刺激を加えます。
米軍採用の2分で寝れる睡眠導入法
眠れない夜に試してほしい、とっておきの睡眠導入法があります。
それが、「米軍式2分睡眠法」と呼ばれるメソッドです。
この方法は、数多くのオリンピック選手を指導してきたアメリカ陸軍出身のスポーツコーチ、パド・ウィンター氏が著書『Relax and Win』で紹介したもの。過酷な戦場でも短時間で確実に眠れるように、米軍の要請によりパイロットのために開発されたといわれています。
実際にこの方法は、6週間のトレーニングで96%のパイロットが2分以内に眠れるようになったという驚異の成功率を誇り、しかも「マシンガンの音が鳴り響く中でも効果があった」と言われているのです。
この睡眠法の最大の特徴は、「身体の力を抜く→心を鎮める」という2ステップを、意識的に短時間で行うという点にあります。いわば、ボディスキャン瞑想や自律訓練法に近い、科学的なリラクゼーション法と考えてもよいでしょう。
手順:体を順番に「脱力」していく
まずはベッドに横たわり、目を閉じて呼吸をゆっくり整えます。
そこから、次のような流れで身体の各部位に意識を向けながら、ひとつずつ力を抜いていきます。
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顔からスタート
額、まぶた、頬、あご、唇…それぞれに「力が入っていないか」を確認しながら、ふわっと緩めていきます。目や口元に力が入っていると、無意識に緊張が続いてしまうので、意識的に“ふにゃっ”と脱力するのがコツです。 -
肩・腕・胸・お腹へと意識を移動
肩をストンと落とすようなイメージで、腕の重みを感じながら力を抜きます。胸とお腹も、呼吸に合わせてふわっと緩め、身体が布団に沈み込む感覚を味わいます。 -
脚全体の脱力
太ももから足の先まで、順番に力が抜けていくイメージで進めていきます。足の裏や指先まで意識することで、全身の緊張がほぐれ、心地よい“重だるさ”に包まれていきます。
最後に「頭を空っぽにする」10秒
全身をリラックスさせたら、最後の仕上げは「思考を手放す」こと。
ここで意識を静めるために、ウィンター氏は次の3つの方法を紹介しています:
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暗い部屋でハンモックに揺られ、ゆっくりと眠りに落ちるイメージを描く
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静かな湖の上でカヌーに乗り、空を眺めながらただ浮かんでいる感覚を想像する
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「何も考えない、何も考えない…」と10秒間、自分に言い聞かせる
このイメージを使うことで、脳の中で暴走していた思考の波が静まり、副交感神経が優位になっていくのです。
成功のコツは「繰り返し」
最初から完璧にできなくても大丈夫。この方法は、パイロットたちも毎晩6週間トレーニングして身につけたとされています。
最初のうちは、力が抜けているかどうかもよくわからない…ということもありますが、毎晩繰り返すことで、だんだんと身体がコツを覚えてくれるようになります。
「今日はなかなか寝つけないな…」という夜こそ、眠りを“頑張って”つかまえにいくのではなく、“眠りやすい状態”に自分を導いてあげる。
この米軍式のリラクゼーション法は、そのための強力なサポートになるはずです。
自律神経を整える三行日記
三行日記とは、順天堂大学医学部の小林弘幸教授が著書「『3行日記』を書くと、なぜ健康になれるのか?」(アスコム)紹介している自律神経のバランスを整える方法です。
「3行日記」のやり方は、眠る前に次の3つのことをノートに手書きします。
①今日一番失敗したこと、うまくいかなかったこと、よくなかったこと、
②今日一番感動したこと、うまくいったこと
③明日の目標
次のようにいくつかルールがあります
- 手書きする
- 眠る前に書く
- 必ず日付と曜日を記入
- できるだけ簡潔に
- 1~3の順番で書く
- ゆっくり丁寧に書く
今日1日の出来事を手書きで書き留めることで、客観的に自分をふりかえり、気持ちが落ち着き自律神経のバランスを正常に戻すことができるようです。
明日の予定や気になっていることを紙に書き出す
眠れない原因のひとつとして、思考が働きすぎて、興奮状態になりリラックスできないというものがあります。眠る前にあれこれ考えてしまうと、どんどん思考が加速してしまい、益々眠れないことにもなりかねません。
なにか気になることや、明日の予定など、思い浮かべると次々にいろいろな思考が湧き出しますが、紙に書くことで、冷静になることにつながることがあります。
疑問を抱くと脳はそれに対する答えを探し続けるよう作用するため、眠る前には、自分自身に対して「お疲れさま、今日1日頑張ってくれてありがとう。今日やるべきことは終わったよ」と自分自身を労うことで1日の終わりを脳にも伝えることもおすすめです。
おわりに
眠れない夜は、心も身体もどこか緊張していて、「早く寝なきゃ」と思うほど、眠りが遠ざかってしまうものです。でも、そんなときこそ大切なのは、焦らず、自分にやさしくすること。
今回ご紹介したように、呼吸法やストレッチ、音の力やリラックスできる飲み物など、眠りをサポートする方法はたくさんあります。中でも、入浴や寝室の環境づくりなど、“眠れる土台”を整えてあげることが、入眠の第一歩につながります。
そして何より、「眠れない夜があっても大丈夫」と、自分を責めずに受け止める気持ちも忘れずにいたいですね。眠りは、がんばって手に入れるものではなく、心と体が整えば自然と訪れるものです。
すぐに効果を感じられないこともあるかもしれませんが、ほんの少し生活のリズムを見直したり、自分に合うリラックス法を見つけてみたり……できることから、ゆっくり始めてみてください。
リラックス方法などを実践してみても不眠症状が続く場合は、専門医への相談をおすすめします。
参考資料
厚労省:2018「国民健康・栄養調査」の結果(2020年公開)
厚労省:e-ヘルスネット「不眠症」
厚労省:e-ヘルスネット「メラトニン」
坪田 聡:なぜ、寝る前の食事は睡眠の「質」を極端に落とすのか?
日本生活習慣予防協会:アルコールにより睡眠の質が低下 夕方以降の飲酒に注意
養命酒:眠れない夜は、ココを押そう!スーッと眠りに誘う「快眠ツボ」
東洋療法学校協会:東洋療法雑学辞典
小林弘幸:「『3行日記』を書くと、なぜ健康になれるのか?」(アスコム)
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