ストレスチェックでの高ストレス者の選定基準は、実施者の助言や衛生委員会での審議を踏まえて、各事業場で決定します。
厚生労働省の『ストレスチェック実施マニュアル』には一般的な基準が示されていますが、職場環境が異なる各事業場においては、「どの基準を採用したらよいのか」と戸惑う場合も多いのではないでしょうか?
今回は、ストレスチェックの高ストレス者の選定基準や点数の決め方についてわかりやすく解説します。
ストレスチェックにおける高ストレス者とは
「高ストレス者」とは、自覚症状を強く感じている人や、一定以上の自覚症状がある人を指し、さらにストレスの原因や周囲からのサポートが非常に不足している状態の人を意味します。
ストレスチェックはこのような高ストレス者がメンタルヘルス不調に陥ることを未然に防ぐためのものです。
ストレスチェックは、労働者が自分のストレスの状態を理解し、過度なストレスをため込まないようにするための手段です。ストレスが高いと感じる場合には、医師の面接を受けてアドバイスをもらったり、会社に対して仕事の負担を軽減してもらうよう措置の実施依頼をしたり、職場環境の改善を図ったりすることで、「うつ」などのメンタルヘルスの問題を未然に防ぐことを目的としています。
高ストレス者を放置することのリスク
高ストレス者が面談を受けるかどうかは本人の意思によりますが、高ストレス者を放置することは企業と従業員の双方にリスクをもたらす可能性があります。
企業側のリスク
従業員の健康状態が悪化していることを知りながら放置することは、民法に基づいて罰せられる可能性があります。
『労働契約法』第5条では、企業には従業員の身体の安全を守り、労働環境を適切に配慮する“安全配慮義務”が課されています。
ストレスチェックの結果を提供しない、または面接指導の申し出がないからといって、この義務が免除されるわけではありません。
さらに、高ストレス者を放置し安全配慮義務に違反した場合、『民法』第415条に基づく債務不履行責任により損害賠償を請求される可能性もあります。
従業員側のリスク
高ストレス状態をそのままにしてしまうと、心身に過度のストレスがかかり、うつ病などの深刻なメンタルヘルスの不調を引き起こすリスクがあります。
従業員のメンタルヘルスの不調を防ぐためには、高ストレス者に対する企業の適切な対応が欠かせません。
高ストレス者|2つの判定基準
ストレスチェックでは、A群:仕事のストレス要因、B群:心身のストレス反応、C群:周囲のサポートという領域におけるストレスを数値化します。
A群:仕事のストレス要因(17項目)
職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
B群:心身のストレス反応(29項目)
心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
C群:周囲のサポート(9項目)
職場における他の労働者による当該労働者への支援に 関する項目
高ストレス者の判定基準については、厚生労働省の『ストレスチェック実施マニュアル』では次のように示されています。
② 調査票のうち、心身のストレス反応の評価点数の合計が一定以上の者であって、かつ、仕事のストレス要因及び周囲のサポートの評価点数の合計が著しく高い者
(参照:厚生労働省『ストレスチェック実施マニュアル』)
高ストレス者とする基準となる点数は、実施者の意見及び衛生委員会等での調査審議を踏まえて、事業者が決定します。
判定基準については、2つの判定方法があります。
①設問合計点数による判定
②尺度合計点数による判定
次にそれぞれの特徴や目安となる点数を見ていきます。
高ストレス者判定基準|設問合計点数による判定
設問合計点数による判定は、回答の点数を単純に合計して判定する方法です。
特徴
・特別な手順によらず算出することが可能
・個人プロフィールとの関係が分かりづらい
・心身のストレス反応のうち,身体症状の占める割合が高い(
目安としての点数
② 仕事のストレス要因と周囲のサポートの合算の合計点数が76点以上(最高点は4×17+4×9=104点)であり、かつ心身のストレス反応の合計点数が 63 点以上であること
(数値参照:厚生労働省『ストレスチェック実施マニュアル』)
高ストレス者判定基準|尺度合計点数による判定
尺度合計点数による判定とは、ストレスチェックの各質問項目への回答点数を、尺度ごとに5段階評価に換算し、その評価の合計点数を基準とします。
特徴
・個人プロフィールとの関連がわかりやすい。
・心身のストレス反応のうち、身体症状の占める割合は低い(
判定するには、分析ツールが必要となりますが、個人結果と関連性があり、尺度ごとに評価された判定方法です。
目安としての点数
② 仕事のストレス要因と周囲のサポートの合算の合計点数が26点以下であり、かつ心身のストレス反応の合計点数が 17点以下であること
(数値参照:厚生労働省『ストレスチェック実施マニュアル』)
面談を併用する場合
以上のようなストレスチェックの数値から高ストレス者を選定する
その場合の面談は、ストレスチェックの一環として行われ、
ただし、面接指導対象者の選定に関する判断は、
高ストレス者の割合
厚生労働省によれば高ストレス者と選定される割合は過去の調査よ
高ストレス者判定は実施者が確認
制度上、必ず実施者が調査票の結果を確認したうえで高ストレス者および面接指導対象者を選定することになっています。
実施者の眼を通さずに調査票の結果のみで高ストレス者であることを通知することはできません。
おわりに
以上、ストレスチェックの高ストレス者の選定基準と点数はどのように決めたらいいのかについて解説しました。
基準となる目安は厚生労働省の『ストレスチェック実施マニュアル』に明記されていますが、それぞれの事業場の状況に応じ、実施者の助言や衛生委員会での意見を踏まえて決めていくことが重要です。
参照:厚生労働省の『ストレスチェック実施マニュアル』
ストレスチェック8年間の経験と40万人の実績がある日本CHRコンサルティングでは、厚労省ストレスチェック制定委員メンバーの精神科産業医が運用を整備し、300社以上のストレスチェック支援経験のある組織コンサルタントが職場環境改善をサポートします。全国対応しております。お気軽にお問い合わせ下さい。