5月病とは?多くは適応の障害・・・症状・原因と対策・抜け出し方を精神科医が解説

5月病とは?多くは適応の障害・・・症状・原因と対策・抜け出し方を精神科医が解説 メンタルヘルス

進学、就職、転勤や異動など、春は生活環境が大きく変わる季節です。期待や不安で緊張が続き、ゴールデンウィークの連休でその緊張が緩み、「なんとなくだるい」「やる気がでない」「物事を悲観的に考えてしまう」という気分の落ち込みは、一般的に5月病と言われています。5月病は医学的には、「適応障害」あるいは「うつ病」と診断されます。

なぜ5月病になるのでしょうか?その原因を理解することで、5月病を未然に防ぐための対策をとることができます。また、5月病になってしまった場合、どのように抜け出したらよいのでしょうか?

5月病の症状、原因と対策、なってしまった場合の抜け出し方についてお伝えします。

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5月病とは?多くは適応の障害

5月の連休後に、「気分が落ち込む」「なんとなく体調が悪い」「気力がわかない」「眠れない」「食欲がない」などの心身の症状が現れることがあります。これは一般的に5月病と呼ばれています。

5月病は医学用語ではなく、医学的には「適応障害」や「うつ病」と診断されます。4月に進学や就職、転勤や異動など大きな環境の変化を経験した人に起こりやすいため、一般的に5月病と呼ばれています。

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5月病の症状

5月病の症状は心身ともに現れます。具体的には次の症状が挙げられます。

身体の症状

 

  • 眠れない
  • 疲れる
  • 食欲がない

こころの症状

 

  • 気分が落ち込む
  • なんとなく不安
  • 何もしたくない
  • 焦る

行動の問題

  • 仕事を休む
  • 人と会いたくない
  • やる気が出ない

5月病で受診すべきか?(うつ病レベルが疑われる場合)

5月病の症状は誰にでも生じることがあります。新年度は環境の変化に適応するため、いつも以上に疲れやすかったり、気持ちの落ち込みを経験する方が多いと思います。

しかし、次のような症状がある場合は、受診することをおすすめします。

●何も楽しめない(休日も楽しめない)、眠れない状態が 2 週間以上続く場合
●遅刻・欠勤が増える、あるいは家事も困難となり、社会生活や日常生活に相当支障をきたしている

このような症状がある場合、うつ病のレベルに至っている可能性があるため、医療機関の受診が急がれます。

なぜ5月病は倦怠感やだるさを引き起こすのか

5月病と呼ばれている主な症状は、だるさや倦怠感ですが、この原因の一つとして考えられているのは、自律神経である交感神経と副交感神経のバランスの崩れです。

通常、身体を活発に動かす時に働く交感神経と、身体を休める時に働く副交感神経は、互いにバランスを取りながら身体の状態を調節しています。

しかし、環境の変化などが原因でストレスがかかると、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、だるさや倦怠感、眠れない、疲れが取れない、イライラする、不安になるなどの症状が現れることがあります。

5月病の原因

5月病の原因としては、環境の変化による新しい環境や人間関係から生じるストレスが挙げられます。

環境の変化

4月は、進学や就職、転職や転勤、異動など環境に変化が伴う時期であり、新しい環境に適応できないこと5月病と言われる精神的な症状が生じることがあります。

新しい人間関係への適応

環境の変化によって人間関係も大きく変わります。周囲になじめなかったり、新しい人間関係をうまく築けないことが5月病の原因となることがあります。

理想と現実のギャップに直面

進学や就職等など新生活のスタートは、希望や期待に満ち溢れるものです。

特に新入生や新入社員は、慣れない環境に緊張しながらも、周囲からの期待や自分自身が掲げた理想に近づこうと懸命に取り組む傾向があります。また、新たに身を置く環境が、自分が想像していたものと違うという現実に直面することも少なくありません。

このように思い描いていた理想と現実のギャップにストレスを感じ、5月病の症状が生じる場合もあります。

5月病になりやすい人とは?

ストレスとは何か

5月病の症状は誰にでも生じる可能性がありますが、特に次のような方は注意が必要です。

  • 変化に対応するのが難しい
  • 他人の機嫌や周囲の変化を敏感に感じ取る
  • 他人に気を遣いすぎる
  • 悩みを一人で抱えがち
  • 悩みや愚痴を相談できる相手がいない
  • 完璧主義  など・・・・・・

普段からこのような傾向がある場合は、新年度など環境が変わる時期はいつも以上にセルフケアを行い自分自身を労ることが大切です。

また悩みや不安は一人で抱え込まず、親しい友人に話したり、カウンセリングなどを利用することをおすすめします。

5月病対策

5月病を未然に防ぐための対策として次のこと意識して日常を過ごすことが大切です。

睡眠の質を上げ、しっかり休養する

質の良い睡眠によって、体内の修復を促す成長ホルモンが多く分泌され、疲労回復が促進されます。また自律神経も整いストレスが軽減されます。

寝付けないときにおすすめ! 筋弛緩法

筋弛緩法

体の部位ごとにグッと力をいれ、一気に力を抜いて緊張がほどける感覚を味わうことで、体の緊張を緩めるリラクゼーション法です。

  1. ゆったりと座るまたは横になる
  2. 軽く目を閉じ全身の力を抜く
  3. 両肩をすぼめて力を入れる … 一気に力を抜きリラックスそのまま 20 秒ほどじっとして緊張がほどけていく感覚を味わう
  4. 体の緊張を感じている各部分も同様に ~ ふくらはぎ、太もも、お腹、背中など ~

リラックス法を取り入れる

緊張状態が続くと心身ともに疲弊し、環境への適応が益々難しくなり、通常では問題ないストレスにも耐えられなくなってしまう場合があります。

リラックス法を取り入れ、疲労を蓄積させないことが大切です。その場でできるリラックス法としては深呼吸があげられます。呼吸を整えることで血中の酸素を増やし、筋肉の緊張を緩めるので、リラックスに効果的です。5 分ほど同じテンポで深呼吸することで心のバランスを整えるセロトニンが分泌されて気分がすっきりします。

バランスのとれた食生活を意識する

食事はメンタルヘルスにも影響を与えることが分かってきています。

メンタルヘルス不調の予防には、ビタミン、ミネラル、タンパク質、DHA・EPAの摂取が重要といわれています。

 

【ビタミン】
ビタミン B1、B2、B6、B12(卵、肉、大豆)

【ミネラル】
鉄( レバー、カツオ、小松菜、納豆)亜鉛(肉、卵、納豆)

【タンパク質】
鶏肉、牛肉、豚肉、魚

【DHA・EPA】

 

継続できる運動を取り入れる

ウォーキングや軽いランニングなど軽度な運動を継続的に行うことは、身体の健康だけではなく、ストレス解消に繋がりメンタルヘルス不調の緩和に効果的です。外出を控えている場合は、動画サイトなどでお気に入りのエクササイズを見つけ、継続的に取り組むことをおすすめします。

人と話す・相談する

人に話すことで、ネガティブな気持ちが和らぎ、新しい視点を得るかもしれません。仲の良い友人とのおしゃべり等は、不安を減らしたりストレスを和らげたりするホルモンであるオキシトシン 、心のバランスを整えるセロトニンの分泌を増やし、心のバランスを整えます。

5月病から抜け出す方法

なんとなくだるい、やる気が出ないなど「5月病かな?」と思った時、軽い症状の場合は、上記の5月病対策で挙げたことを取り入れてみることをおすすめします。

  • 睡眠の質を上げ、しっかり休養する
  • リラックス法を取り入れる
  • バランスのとれた食生活を意識する
  • 継続できる運動を取り入れる
  • 人と話す・相談する

しかし、次のような症状がほとんど1日中、毎日、1週間以上続く場合は、医療機関への相談が急がれます。

■疲れているのに眠れない
■好きなことが楽しめない

上記の症状は、医療的なケアが必要である可能性が高く、早急に医療機関へ相談することをおすすめいたします。

おわりに

新年度の始まりから5月にかけて、環境が大きく変わることを原因に生じる5月病は誰にでも生じる可能性があります。5月病を予防するためには、ストレスを溜めないように、自分にあったストレス対処法を取り入れることをおすすめします。しかし、何も楽しめない(休日も楽しめない)、眠れない状態が 2 週間以上続く場合は、医療的なケアが必要である可能性が高いため、専門機関を受診されることをおすすめします。

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ご案内
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相談窓口案内|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
「こころの耳」(厚生労働省サイト)では、仕事やキャリア、こころの健康など、様々な悩みに関する専門の相談機関・相談窓口を紹介しています。

 

出典
『実践!ストレスマネージメント』渡辺洋一郎 
『こころに効く精神栄養学』功刀浩 (国立精神・神経医療研究センター)著,女子栄養大学出版部, 2016.3


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記事監修

精神科医専門医・日本医師会認定産業医。
川崎医科大学卒、1988年渡辺クリニック(2018年改称)を開設。
その後、厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の在り方検討委員会」委員、内閣府「自殺対策官民連携協働会議」委員、公益財団法人日本精神神経科診療所協会会長など歴任。
現在、医療法人メディカルメンタルケア横山・渡辺クリニック名誉院長、大阪大学医学部神経科精神科非常勤講師、一般社団法人日本精神科産業医協会共同代表理事ほか。
ストレスチェック法制化においても、厚生労働省「ストレスチェック制度に関する検討会」「ストレスチェック項目に関する専門検討会」「ストレスチェック制度マニュアル作成委員会」などの委員を務める。

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