高ストレス者への対応・面接指導の流れ【ストレスチェック担当者向け】

高ストレス者への対応・面接指導の流れ【ストレスチェック担当者向け】 ストレスチェック

ストレスチェックの結果から実施者(産業医)が高ストレス者判定を行いますが、職場で高ストレス者が出た場合、どのように対応したらよいのでしょうか。

今回はストレスチェック担当者向けに、高ストレス者への対応方法や面接指導の流れについて解説します。

高ストレス者への対応

高ストレス者対応としては次のことが挙げられます。

  • 医師による面接指導
  • セルフケアのための資料や情報の提供
  • 産業保健スタッフ(看護師、カウンセラーなど)による相談対応や相談窓口の案内

高ストレス者と判定された労働者のうち、面接指導を受ける人は約1割といわれ、所属企業からフォローがされない状態の方が少なからずいます。

そのため、面接指導以外に、高ストレス者が自分のストレス状況に気づき、ケアできるよう措置を講ずる必要があります。

高ストレス者の選定から面接指導までの流れ

高ストレス者の選定から面接指導までの流れは次の通りです。

  1. 実施者(産業医)が高ストレス者を選定
  2. 全受検者に結果の通知+高ストレス者には面接指導申出の案内
  3. 必要に応じて面接指導申出の勧奨
  4. 事業者から医師へ面接指導実施の依頼・日程調整
  5. 医師による面接指導の実施
  6. 医師からの意見聴取
  7. 必要に応じ就業上の措置を実施
  8. 産業医に措置内容を報告
  9. 面接指導の結果記録の保存

それぞれの項目について詳しくみていきます。

実施者(産業医)が高ストレス者を選定

実施者(産業医)が高ストレス者を選定

ストレスチェックの受検期間の終了後、結果は実施者が確認し、高ストレス者・面接指導を受ける必要がある受検者を選定します。

全受検者に結果の通知+高ストレス者には面接指導申出の案内と勧奨

結果の通知については、誰が高ストレス者であるのか、他の従業員がわからないようなかたちで、行わなければなりません。

高ストレス者には結果内容とあわせて、面接指導の申出の勧奨と申出窓口等を通知します。

厚生労働省の「ストレスチェック指針」によれば、面接指導対象者ができるだけ面接指導を申出るよう勧奨することを推奨しています。そのため、面接指導対象者であることの通知後、一定期間をおいても申出がない場合は、面接指導を申出るよう勧奨することをおすすめします。

事業者から医師へ面接指導実施の依頼・日程調整

面接指導対象者から面接指導の申出があった場合、申出から約1ヶ月以内に実施する必要があります。

誰が面接指導を実施するのか

面接指導の実施者は、労働安全衛生法の第66条において医師と規定されています。

ただし、厚生労働省の「ストレスチェック制度実施マニュアル」では、事業場の産業医又は事業場において産業保健活動に従事している医師が推奨されています。

面接指導の対象者と面接指導を担当する医師と調整し、実施日時を設定します。

事業場の産業医が面接を担当してくれない場合

面接指導を実施する医師がいない場合は、外部から産業医資格を有する医師に依頼します。

労働者の状況によっては、専門医療機関への受診勧奨の要否も判断する必要がある場合があるため、メンタルヘルスに関する知識や技術を持つ産業医に依頼することをおすすめします。

面接指導の実施場所について

面接指導を行う場所については、秘密が厳守されるよう配慮する必要があります。周りの目を気にせず、落ち着いて受けることができる場所を選びます。

職場以外の場所で面接指導を行う場合は、対象者の業務に支障がないようにするため、職場から遠くはない場所を選定します。

また、閉鎖性があまりにも高い場所は、トラブルを誘発する可能性も高まるため、そのような場所は避けましょう。

要件を満たせば面接指導はオンラインで実施可能

面接指導は対面で実施するのが原則ですが、要件を満たせばパソコン等を利用したオンラインでも実施することができます。

オンラインでの面接指導実施の留意事項

【医師について】面接を実施する医師が次のいずれかの場合に該当すること
1,面接指導を実施する医師が、対象労働者が所属する事業場の産業医である場合。
2,面接指導を実施する医師が、契約(雇用契約を含む)により、少なくとも過去1年以上の期間にわたって、対象労働者が所属する事業場の労働者の日常的な健康管 理に関する業務を担当している場合。
3,面接指導を実施する医師が、過去1年以内に、対象労働者が所属する事業場を巡視したことがある場合。
4,面接指導を実施する医師が、過去1年以内に、当該労働者に直接対面により指導等を実施したことがある場合。
【機器について】面接指導に用いる情報通信機器が、以下の全ての要件を満たすこと
1,面接指導を行う医師と労働者とが相互に表情、顔色、声、しぐさ等を確認できるものであって、映像と音声の送受信が常時安定しかつ円滑であること。なお、映像を伴わない電話による面接指導の実施は認められない。
2,情報セキュリティ(外部への情報漏洩の防止や外部からの不正アクセスの防止) が確保されること
3,労働者が面接指導を受ける際の情報通信機器の操作が、複雑、難解なものでなく、 容易に利用できること。
(引用:情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について)
 
その他の留意事項については、「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(厚生労働省)のP.164-165をご確認ください。

医師による面接指導の実施

面接指導は医師と面接対象者の従業員の2名で行われます。上司や実施事務従事者など他者は同席することはできません。

担当の医師は、ストレスチェックから得られた情報や事前に事業者から提供される情報等を整理し、ストレス状況について確認します。

事前の資料と面接で聴取した状況から、面接対象の従業員に対して、医学的な観点から具体的な指導・助言を行います。必要に応じて、専門医療機関への受診を勧めます。

面接指導にあたり準備する資料について

面接指導の担当医師に渡す資料内容については、次の内容が具体例として『ストレスチェック実施マニュアル』(厚生労働省)に掲載されています。

  • 対象となる労働者の氏名、性別、年齢、所属する事業場名、部署、役職等
  • ストレスチェックの結果
  • ストレスチェックを実施する直前 1 か月間の、労働時間、労働日数、業務内容等
  • 定期健康診断やその他の健康診断の結果
  • ストレスチェックの実施時期が繁忙期又は比較的閑散期であったかどうかの情報
  • 職場巡視における職場環境の状況に関する情報

必要の資料については、予め担当の医師に確認することをおすすめします。

医師からの意見聴取

ラインケア

面接指導実施後は、遅くとも1ヶ月以内には、医師から意見を聴取します。

面接指導を実施した医師から、就業上の措置の必要性の有無や、講ずべき措置の内容、必要に応じ職場環境の改善に関する意見を聴きます。

事業場で選任されている産業医以外が面接指導を実施した場合には、必ずしも労働者の勤務状況や職場環境など、当該事業場の状況を把握していないことも考えられるので、 事業場で選任されている産業医からも、面接指導を実施した医師の意見を踏まえた意見を聴くことが適当です。

必要に応じ就業上の措置を実施

事業者は医師からの意見を踏まえ、対象となる従業員の実情を考慮し、就業上の措置の実施や実施内容について検討し、必要に応じて実施します。

実施までの期間は、意見聴取後から遅滞なく、概ね1ヶ月以内に行います。

事業者が産業医に措置内容を報告

事業者は措置内容を産業医に報告する必要があります。
措置しない場合は、その理由も産業医に情報提供しなければなりません(労働安全衛生規則第十四条の二「産業医に対する情報の提供」)。

企業によっては産業医がいても面談は外部の医師が行う場合等があります。
また、産業医がいない小規模の企業の場合など、産業医への報告はどのようにしたらよいのでしょうか?

産業医がいるが、外部医師が面談をした場合

この場合の報告先は、外部医師ではなく産業医に行い、面談指導の報告書は保管します。

産業医がいない場合

医師による事後措置に関する意見への対応を事業者側が書類に記載します。

書類の保管は衛生管理者又は衛生推進者が個人情報管理責任者となり5年間保管します。

面接指導の結果記録の保存

面接指導結果の記録は5年間保存し、
記録に記載する内容は次の7項目です。

①面接指導の実施年月日
② 当該労働者の氏名
③ 面接指導を行った医師の氏名
④ 当該労働者の勤務の状況
⑤ 当該労働者の心理的な負担の状況
⑥ その他の当該労働者の心身の状況
⑦ 当該労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見

おわりに

以上、高ストレス者対応と面接指導の流れについて確認してきました。

高ストレス者の多くは面接指導を申出ないと言われていますが、その原因として面接指導について「人事評価に影響があるのではないか」などの誤解があげられます。

高ストレス者への面接指導の目的は、ストレスの高い者を早期に発見し、メンタルヘルス不調を未然に防止し、事業者に対しては職場環境改善等の適切な措置を講じるよう促す一次予防です。

いきいきと働く職場づくりのためにも、多くの従業員がストレスチェックという制度を活用できるよう社内告知等を積極的に行うことが重要です。

(参照)
労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(厚生労働省)
改正労働安全衛生法のポイント(厚生労働省)
医師による長時間労働面接指導実施マニュアル(厚生労働省)


 
ストレスチェック8年間の経験と40万人の実績がある日本CHRコンサルティングでは、精神科産業医のご紹介や、300社以上のストレスチェック支援経験のある組織コンサルタントが職場環境改善をサポートします。全国対応しております。お気軽にお問い合わせ下さい。
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記事監修

精神科医専門医・日本医師会認定産業医。
川崎医科大学卒、1988年渡辺クリニック(2018年改称)を開設。
その後、厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の在り方検討委員会」委員、内閣府「自殺対策官民連携協働会議」委員、公益財団法人日本精神神経科診療所協会会長など歴任。
現在、医療法人メディカルメンタルケア横山・渡辺クリニック名誉院長、大阪大学医学部神経科精神科非常勤講師、一般社団法人日本精神科産業医協会共同代表理事ほか。
ストレスチェック法制化においても、厚生労働省「ストレスチェック制度に関する検討会」「ストレスチェック項目に関する専門検討会」「ストレスチェック制度マニュアル作成委員会」などの委員を務める。

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