コロナ禍でのメンタルヘルス対策を精神科医が解説

コロナ禍でメンタル不調対策を精神科医が解説 ストレスコーピング

新型コロナウイルスの影響が長期化し、感染への恐怖や外出自粛等で日々行動制限から、ストレスが高まり、メンタルヘルス不調を感じる方は少なくありません。

また、テレワーク等で働き方も変化し、在宅時間が長引くことで孤独感を抱えている方もいるのではないでしょうか。

今回は、コロナ禍におけるメンタルヘルス不調の症状と対策を精神科医が解説します。

新型コロナの影響によるメンタルヘルス不調

「病気になったらどうしよう」
「今の仕事ができなくなったり、解雇されてしまうのでは」
「外出制限やテレワークで在宅時間が長くなり、生活環境の変化に適応できない」など新型コロナの感染拡大の影響による不安や恐怖などによって、心身に様々な反応が生じます。

思考への影響

・どうせうまくいかないと考える
・同じことばかり考える
・悪い結果ばかり考える
・呆然として何も考えられない
・他人の意見が頭に入らない
・大事なことを考えるのを避ける
・集中できない
・自分は役に立たないと考える
・自分を責める

感情への影響

・気持ちが沈む・やる気が出ない
・何をするのもおっくうに感じる
・さみしい、哀しい
・不安でしかたがない
・落ち着かない
・イライラする
・絶望的に感じる
・いなくなりたいと感じる

身体への影響

・眠れない・熟睡感がない
・すぐ目が覚める・食欲がない
・身体がだるい・頭が重い
・疲労感が強い
・動悸や息苦しさがある
・お腹の調子が悪い・ふらつく

行動への影響

・睡眠リズムが崩れる
・生活リズムが崩れる
・家に閉じこもる・ずっと寝ている
・過度に集中、没頭する
・些細なことで腹を立てる
・アルコールや喫煙が増える
・浪費が増える・運転が乱暴になる
・ギャンブルにのめりこむ

このような症状は、生活する上で一時的に生じることはあるかと思いますが、通常は気分転換などでストレス対処が可能です。

しかし強い緊張状態に長期間さらされた場合、うつ病などにつながる可能性もあるため、新型コロナウイルス感染の影響が長期化している昨今においては、日頃のセルフケアがとても重要です。

その上でも、眠れない日が続く普段楽しめることも楽しめないあるいは仕事や日常生活に支障をきたすといった状態になれば躊躇せずに医療機関を受診することが大事です。

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コロナ禍におけるメンタルヘルス

問題焦点型ストレスコーピング

コロナ禍における様々なストレスを緩和するセルフケアについては様々ありますが、まずはじめにWHO(世界保健機構)が提唱する方法を紹介し、次に、コロナ禍をうまく乗り越えるためのストレスコーピングをお伝えします。

友達や家族に連絡を取る

日々のストレスから不安や恐怖を覚えるのは、ごく普通の反応といえます。しかし、自分が今感じている感情を抑圧したり、ないものとすることは、後々大きな反応として現れる危険があります。

特に悩み事がない場合でも日頃から、友達や家族など信頼している人と話す機会を設けるのは大切です。

話すことで気持ちが楽になり、このことがストレスを蓄積しないためのセルフケアともなります。直接会わずとも、メールや電話等で遠方の家族や友達と接点を持ち続けることが重要です。

健康的な生活習慣を心がける

テレワークなど在宅勤務が続くと、生活習慣が乱れる可能性が高まります。特に運動不足や睡眠、食事が不規則になり、生活リズムが崩れやすくなります。

そのため、夜ふかししないよう就寝時間を決める、散歩や軽いジョギングなど無理なく続けられる運動を日常的に取り入れる、野菜を意識的に摂取するなど、健康的な生活習慣を心がけることが大切です。

気分転換をたばこやお酒に頼らない

気分が落ち着かない、眠れない時、お酒やタバコで気を紛らわせようとすることがよく見られます。しかし、眠れないからと言って飲酒する、あるいは落ち着かないからといって喫煙が増えるなどするとますます体調が悪化する結果となります。

精神的、身体的につらくなったら、一人で抱え込まず、誰か相談にのってくれる人はいないか、 身体や心の健康のために、飲酒や喫煙以に何かよい方法がないかを探してみたり、一緒に実行できる仲間を探してみることをすすめします。

厚生労働省による「みんなのメンタルヘルス」では、こころの健康や病気、支援やサービス等、メンタルヘルス情報のポータルサイトです。相談窓口の案内等もあります。

ご案内
「みんなのメンタルヘルス総合サイト」の情報は、令和5年4月より国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」に掲載しています。

不安になる情報を取り込みすぎない

事実を知ることは大切なことです。しかし、いたずらに不安をあおるようなマスコミ報道やSNSなど見すぎてしまうことは、不安や興奮を高め、心身ともに不調を招きかねません。

地域や国の保健機関など、信頼できる情報源を探し、いたずらに不安をあおるようなマスコミ報道を見たり聞いたりする時間を減らし不安や興奮を抑えましょう。冷静で客観的な目を忘れないようにすることが重要です。

これまでに逆境を乗り越えた時に役立ったスキルを活用する

新型コロナの感染拡大で、慢性的な緊張状態にさらされていますが、私たちはそれぞれ人生において大きな困難を経験したことはあると思います。

これまでの逆境をどのように乗り越えてきたかを、役立った方法を思い出し活用することが重要です。

ストレス状況をうまく乗り越えるためのポイント

コロナ禍において、人類は未知なるウイルス感染症に直面し、今まで経験したことがないストレス状況に陥っています。

しかし、この先どうしたらよいかわからないといった未来への不安や、経験したことがないことへの恐怖、困難な現実は、私たちの人生において度々生じます。

コロナ禍をはじめとして、避けられない現実のストレスに直面した時、その状況をうまく乗り超えるためのポイントをお伝えします。

多くのストレス対処方法を持つ

ストレスコーピング|ストレス処理における3つの段階と5つの方法

わたしたちは日常生活の中でも、予想できない出来事や急な状況変化など発生することがあります。

想定外の出来事などは、ひとつのストレス要因となり得ますが、状況に振り回されたままでいると、ストレスは増大していきます。ストレス状況への対処方法として多くの選択肢を持ち、状況に合わせて最も適切な対処方法を選ぶことができるようになることが、ストレスをうまく乗り越えるポイントのひとつです。

ストレスを適切に対処しようとすることを「ストレスコーピング」といいます。

ストレスコーピングにおいて重要なのは、何が問題となっているのか、原因に応じたストレス処理方法をとることです。ストレスコーピングには、主に3つの段階と5つの方法にがあり、詳しくは下記の記事で説明しています。

ストレスマネージメントとは?ストレスにおける3つの段階と5つのストレスコーピング
多くの人を悩ませるストレス。ストレスに対処することについて、まず思い浮かぶのが、気分転換をする、趣味など好きなことに集中するなど、「ストレス解消」が思い浮かぶのではないでしょうか? 確かにそれも有効ではありますが、ストレスの原因から何...

ポジティブシンキング能力を高める

コロナ禍は、私たちにとってネガティブな体験の一つといえます。

「コロナ以前の世界に戻りたい」「こんなことさえ起こらなければ・・・・・・」と後ろ向きな思考になることもあると思います。

コロナ禍に限らず、私たちは様々な嫌な体験や苦しい出来事に遭遇します。またさまざまな失敗も経験します。

このような時に大事なことは、そのネガティブな体験を忘れることではなく生かすことです。つまり、自分にとってマイナスの出来事が生じたときに、将来『あんなことがあったおかげでこうなれた』と言えるようにすることが大切です。

将来そういえるようになるためには、今どうしたらいいか、何をすべきかをしっかり考えて、そのための行動をとること。すなわち、生じたマイナスの体験を将来に生かすための行動をとっていくこと、これが「真のポジティブシンキング」といえます。

「真のポジティブシンキング」や、嫌な体験を意味ある体験にする転換する方法については、下記の記事で詳しく説明しています。

後悔を断ち切る方法は?嫌な体験を乗り越えて成長する思考法
試験に落ちたり、仕事に失敗したり、恋愛が上手くいかなかったり…。 「もっとあのときこうしてればよかった」など 後悔で前向きに人生を生きられない場合、どうしたらよいのでしょうか? 「いやなことは忘れてポジティブになれ」 「後悔した...

良い私的な人間関係を作る

理解しあえる家族や友人、仲間など親しい人間関係があることはとても大事なことです。

支え合う人間関係はエネルギーの基になります。辛いとき、苦しいときに話し合い、気持ちを分かち合えることで、心が軽くなり、前向きな行動をとることに繋がります。

人間のエネルギーの源は、良い人間関係といっても過言ではありません。そのため、良い人間関係を持っていることはストレスへの大きな抵抗力となります。

一人で抱え込まず、他者に相談ができるようになる

「相談する」とは、問題解決に向けて、いろいろな人の意見を聞いてみるということです。

相談してくる方の中には、一人で抱え込み、エネルギーを使い果たし、限界まで頑張ってから、相談に訪れる方もいます。しかし、それは相談ではありません。そのような事態に陥らないために、より良い方法を他者と一緒に見つけるための行動が相談するということです。

相談は、具体的な解決策につながらなかったとしても、相談するということには多くのメリットはあります。

状況などを相手に説明する中で、自分では気が付かなかったことが見え、状況を客観的に把握でき、問題点が整理されてくることも少なくありません。

さらに、相談することは、相手に今の自分の状況をわかってもらえることになります。自分の置かれた状況などを分かってもらえると一体感や安心を感じ、リラックスすることにもつながります。

たとえ、次に行うべき良い方法が見つからなかったとしても、自分の状況を分かってもらうことにより、自身に癒しと同時に新たなエネルギーが生まれてきます。

おわりに

コロナ禍におけるメンタルヘルス不調の症状と対策についてお伝えしました。

生活環境の変化からこれまであった人間関係から切り離され孤独を感じる方は少なくはありません。辛いことや、悩みがあるときは、一人で抱え込むと益々状況が悪化する場合もあります。そのような事態に陥る前に、家族や友人、専門機関等に相談することが重要です。

下記サイトは厚生労働省によるメンタルヘルス情報のポータルサイトです。相談窓口の案内等もあります。

ご案内
「みんなのメンタルヘルス総合サイト」の情報は、令和5年4月より国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」に掲載しています。

(参照)
コロナ禍をうまく乗り越えるために~メンタルヘルスの視点から~
(渡辺洋一郎 機関誌『老健』公益社団法人 全国老人保健施設協会)
『COVID-19流行によるストレスへの対処』(WHO世界保健機構)
『実践!ストレス・マネージメント』(渡辺洋一郎)


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記事監修
渡辺 洋一郎(弊社代表取締役)

精神科医専門医・日本医師会認定産業医。
川崎医科大学卒、1988年渡辺クリニック(2018年改称)を開設。
その後、厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の在り方検討委員会」委員、内閣府「自殺対策官民連携協働会議」委員、公益財団法人日本精神神経科診療所協会会長など歴任。
現在、医療法人メディカルメンタルケア横山・渡辺クリニック名誉院長、大阪大学医学部神経科精神科非常勤講師、一般社団法人日本精神科産業医協会共同代表理事ほか。
ストレスチェック法制化においても、厚生労働省「ストレスチェック制度に関する検討会」「ストレスチェック項目に関する専門検討会」「ストレスチェック制度マニュアル作成委員会」などの委員を務める。

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