【法改正】いつからはじまる?カスタマーハラスメント対策が企業の義務に

ハラスメント

カスハラ対策法は、企業にカスタマーハラスメント防止の取り組みを義務づける法律で、公布日(2025年6月11日)から最長1年6か月以内、2026年度中の施行が予定されています。

2025年6月4日、カスハラ対策を企業や自治体に義務付ける「労働施策総合推進法」(いわゆるパワハラ防止法の一部改正)が参議院本会議で成立しました。これは、カスタマーハラスメントの防止を明確に法的義務として位置づけた国内初の法律です。

1.ハラスメント対策の強化【労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法】

① カスタマーハラスメント(※)を防止するため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務付け、国が指針を示すとともに、カスタマーハラスメントに起因する問題に関する国、事業主、労働者及び顧客等の責務を明確化する。
厚生労働省「第217回国会(令和7年常会)提出法律案」

 

 職場における顧客等の言動に起因する問題に関して事業主が講ずべき措置等

第33条 ア 事業主は、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(次条第5項において「顧客等」という。)の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの(以下この項及び次条第一項において「顧客等言動」という。)により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。(第33条第1項関係)

事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとする。(第33条第2項関係)

事業主は、他の事業主から当該他の事業主が講ずる第1項の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならないものとする。(第33条第3項関係)

厚生労働大臣は、前三項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとする。(第33 条第4項関係)

職場における顧客等の言動に起因する問題に関する国、事業主、労働者及び顧客等の責務

第34条 ア 国は、労働者の就業環境を害する顧客等言動を行ってはならないことその他当該顧客等言動に起因する問題(以下この条において「顧客等言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、各事業分野の特性を踏まえつつ、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならないものとする。(第34条第1項関係)

事業主は、顧客等言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならないものとすること。(第34条第2項関係)

事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、顧客等言動問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならないものとする。(第34条第3項関係)

労働者は、顧客等言動問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第1項の措置に協力するように努めなければならないものとする。(第34条第4項関係)

顧客等は、顧客等言動問題に対する関心と理解を深めるとともに、労働者に対する言動が当該労働者の就業環境を害することのないよう、必要な注意を払うように努めなければならないものとすること。(第34条第5項関係)

厚生労働省:基発 0611 第1号

カスタマーハラスメントとは

カスタマーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものです。

①顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う、
②社会通念上許容される範囲を超えた言動により、
③労働者の就業環境を害すること。
厚生労働省「ハラスメント対策・女性活躍推進に関する改正ポイントのご案内」

カスハラ対策の義務化で企業に求められること

改正法により、企業が取り組むべき内容は以下の通りです。

  • カスハラに関する方針の明確化と社内周知・啓発

  • 相談窓口の設置など、従業員が気軽に相談に対応できる体制の整備・周知

  • 被害を受けた従業員への配慮とケアの実施

  • カスハラ抑止のため措置(マニュアルの作成、従業員への教育など

いずれも、従業員を守るために企業が積極的に整備すべき事項です。

施行時期について

施行時期は公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日とされています。そのため、2026年度中の施行が予定されています。

施行時期の詳細は今後の政令で確定しますが、企業としては早めの備えが重要です。

企業が今、取り組むべき3つのステップ

施行を待たずに、今から取り組んでおきたいのは次の3点です。

① 社内ルールや対応マニュアルの整備

カスハラに該当する行為や対応フローを文書化し、全社に共有しましょう。

② 相談体制と研修の強化

相談窓口の明確化、現場対応者への教育・研修(ロールプレイなど)も有効です。

③ 記録とエスカレーションの仕組み作り

被害報告の記録方法、エスカレーションルールを決めておくことで、再発防止につながります。

従業員を守る姿勢が企業の信頼をつくる

2026年度中の施行が予定されている改正法により、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策は企業の義務となります。 顧客、取引先、施設利用者などからの社会通念上許容される範囲を超えた言動で従業員の就業環境を害するカスハラから従業員を守るため、企業は必要な措置を検討しましょう。

従業員が安心して働ける環境を整備することは、企業の信頼性を高め持続的な成長にも繋がります。この機会に、改めて職場のハラスメント対策を見直し、強化していきましょう。

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