EAPとは?メンタルヘルス対策として企業に導入するメリットや業者選定のポイントをわかりやすく解説!

EAP(従業員支援プログラム)とは?導入のメリットや注意点を解説 EAP

EAPとは、従業員支援プログラム(Employee Assistance Program)の略称であり、企業が従業員の心身の健康を維持・向上のためサポートする様々なサービスのことです。

具体的なサービスとしては、相談窓口やメンタルヘルスケアプログラムの社内研修等が挙げられます。

近年多くの企業で導入されているEAP。今回は、EAPの具体的な内容や導入のメリット・ポイントについてみていきます。

EAP(従業員支援プログラム)とは?

EAPはEmployee Assistance Programの略語であり、従業員支援プログラムと訳されます。

EAPのはじまりはアメリカ

もともとEAPは、1950年代にアメリカにおいてはじまりました。

第二次世界大戦後、主に帰還兵の間において、アルコール依存症・うつ・薬物依存が拡大し、アメリカの労働組合において、アルコール依存症から回復した組合員が、同じ症状の組合員を支援したという活動がその始まりです。

その後、アルコール依存症の他、薬物依存が深刻化したアメリカにおいて、依存症が原因で業務に支障をきたす社員が増加し社会問題となりました。

これら依存症は、従業員の生産性を阻害するものと捉えられ、アルコール依存症などの表面的な症状の根底にあるメンタルヘルスの問題に対応するためにEAPが多くの企業で導入されるようになりました。

現代のEAPと日本での導入

日本においては1980年代から企業において徐々に導入されはじめました。この背景には、過重労働による労災の問題、特に過労死や精神疾患がメディアで取り上げられ、社会的な関心が集まったことがあります。

さらに2000年には過労による自殺は企業の安全配慮義務違反と最高裁が認定したことで、企業のリスク対応としてメンタルヘルス対策が注目され多くの企業でEAPが導入されました。

企業のメンタルヘルス対策が重要である背景

2021年の調査によると、働く人の半数以上がストレスを抱えているという現状が明らかになっています。厚生労働省の調査では、仕事や職業生活に関して強い不安や悩みを感じている労働者の割合が53.3%に達し、企業におけるストレス対策が急務であるとされています(出典:厚生労働省「令和3年 労働安全衛生調査」)。

さらに、2022年の調査では、強い不安やストレスを抱える労働者の割合が82.2%にのぼっています。また、過去1年間にメンタルヘルスの不調により、1か月以上休職または退職した労働者がいた事業場の割合は13.3%となっています(出典:厚生労働省「令和4年 労働安全衛生調査」)。

このように、過半数を超える労働者がストレスを抱えており、その影響で休職や退職するケースも少なくありません。この状況から、企業におけるメンタルヘルス対策の重要性が増しており、その一環としてEAPが多くの企業で導入されています。

4つのケアとEAP

EAPは4つのケアのうちの一つであり、事業外資源によるケアのひとつとされています。

さらに日本においてEAPが注目されるきっかけには、厚生労働省発表の「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」があります。

この指針において、メンタルヘルス対策推進において4つのケアが重要とされ、4つのケアのひとつである事業場外の専門機関の支援を受ける「事業場外資源によるケア」からEAPが注目されるようになりました。

セルフケア 従業員一人一人がストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解を身に着け、自分のストレスに気づいて対処すること。
ラインケア 日頃の職場環境の把握と改善、部下の相談対応など管理監督者が行うケア。
事業場内産業保健スタッフ等によるケア 産業医、保健師や人事労務管理スタッフ等によるケア。
具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案や相談対応など。
事業外資源によるケア 第三者の専門的な機関や専門家を活用し、その支援を受けること。
外部相談窓口(EAP)や外部の専門家による復職支援など。

 

EAP具体的なサービス内容

EAPの具体的なサービス内容は次のようなものが挙げられます。

・相談窓口の設置
・カウンセリング
・医療機関や専門の相談機関への紹介
・メンタルヘルス等に関する教育(一般研修、ラインケア研修など管理職を対象とした研修、webツールによるコンテンツ発信 など)

内部EAPと外部EAP

EAPには、企業内においてEAP専門家を雇用する内部EAPと、外部専門機関に委託する外部EAPがあります。

内部EAPの場合は、社内の問題に速やかに対処することが期待される一方、専門家を常駐させることによる経費が高くなります。

外部EAPの場合は、外部の専門機関ということから社内の問題について従業員が相談しやすくなり、専門家の常駐が必要ないため、コストを抑えることができます。また相談内容に応じてきめ細かく適切に対応することが期待できます。

日本においてはEAPを設置する多くの企業は、外部EAPが利用すること一般的です。

EAP導入のメリット

企業においてEAP(従業員支援プログラム)を導入するメリットは、従業員の心身の不調や様々な悩みに早めに対処し、必要な措置を講じることができることにあります。

このことにより、従業員は安心して仕事に専念できるとともに、次のような効果も期待できます。

・不調者の早期発見と生産性の維持・向上
・職場環境の向上

・ハラスメントの防止
・人材の確保や離職率低下
・企業のイメージの向上

不調者の早期発見と生産性の維持・向上

様々な悩みやストレスについてカウンセラーに相談することで、疾病の早期発見や、適切な対応方法や問題解決につながることで、従業員の生産性の維持向上をもたらします。

またカウンセリングで元気になれたり、人間関係が良くなるきっかけがみえることで、公私ともに従業員がいきいきと働ける環境をサポートできます。

職場環境の向上

EAPを活用することで、従業員のメンタルヘルスの向上につながり、個々のメンタル状態が安定することで、職場全体の環境も自然と改善されます。

また、EAPサービスによっては個人が特定されない形での統計情報として相談報告書が提出されるため、それを参考にすることで職場の問題点や改善点を明らかにし、より良い職場環境を作る手助けができます。

従業員の相談内容を通じて、組織全体の課題を把握し、得られた情報を基に人事施策の見直しや職場環境の改善を行うことが可能です。

ハラスメントの防止

職場におけるストレス要因を放置し続けると、ストレス発散としてハラスメントなどの問題が生じやすくなる傾向があります。日頃のストレスや悩み事を気軽に相談できる窓口を設置することで、適切にストレスに対処する効果が期待できます。

また2022年4月から中小企業も含めて完全義務化されたパワハラ防止法では、相談窓口を設けて相談者に対して適切に対応することが求められています。そのため、パワハラ防止法に対応した相談窓口として機能するサービスを選ぶことで、法令を守りながら、ハラスメントの予防や早期発見・解決に役立てることができます。

人材の確保や離職率抑制

従業員がかかえている問題を早期に解決し、安心して仕事をすることができる環境の整備は、離職率の低下が期待できます。

EAP導入により社内でのメンタルヘルスへの意識が高まり、より働きやすい環境の整備につながります。

企業のイメージの向上

EAPの導入など、メンタルヘルスケアに積極的に取り組むことは、企業のイメージ向上に大きく寄与します。従業員に対するメンタルヘルスの対応が適切でない場合、労災や過労死といった深刻な問題が発生し、企業の信頼を失う原因となります。健康的な職場環境は、従業員が能力を十分に発揮するための基盤となります。心身ともに安心して働ける環境は、生産性の向上や顧客満足度の向上、取引先との良好な関係構築にもつながります。

さらに、従業員を大切にする企業のイメージは採用活動にも良い影響を与え、優秀な人材の採用にもつながります。また、CSR(企業の社会的責任)の観点からも、EAPの導入は高く評価されています。

では、EAPを導入する際、どのような点に気をつけたらよいのでしょうか?ポイントを見ていきます。

EAP導入の際の注意点

EAP導入の目的は何か

EAPのサービスは多岐に渡ります。様々なサービスを見ると、色々と取り入れ、結果的に活用できないということにもなりかねません。

そのため、企業としてEAPを導入する目的を確認し、目的に即したEAPを導入することが大切です。

EAP導入の結果をどのように測定するか

EAPを導入したものの、実際にどのような効果があるのかわからないという声もよく聞かれます。効果的にEAPを運用するためにも、導入した結果、目的は達成されたのか測定できるようにすることが大切です。

EAP導入の目的に応じた結果の計測の仕方について見ていきます。

EAP導入目的 結果の計測方法
メンタルヘルス
不調防止
・EAP導入前後の不調者や休職データの比較
安心して相談できる
体制づくり
・従業員におけるEAPの使いやすさについてのアンケート実施
産業保健体制の強化 ・EAP連携の頻度、連携の質についての確認する
・産業医や保健師によるEAPの使いやすさについてのアンケート実施

EAPについての社内告知

相談窓口などEAP導入後は、利用を促すためにも、従業員に定期的に告知することが大切です。あらゆる問題について、いつでも気軽に利用できるということを伝えてきましょう。

例えば、人事異動の時期など従業員が不安になる傾向のある時期や、ストレスチェックの結果通知のタイミング等に、EAPの存在を伝えます。

おわりに

EAPは従業員のメンタルヘルス不調が深刻化することを防ぐためにも重要な役割を担います。そのためEAPを外部委託する際は、メンタルヘルスの専門家によるバックアップ体制がしっかりしているかどうか確認することが大切です。

(参照)
e-ヘルスネット EAP/社員支援プログラム(厚生労働省)
「EAPの立場から」(島悟,精神経誌(2008)110巻11号)
こころの耳|EAPプログラムの費用対効果について(厚生労働省)


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記事監修

精神科医専門医・日本医師会認定産業医。
川崎医科大学卒、1988年渡辺クリニック(2018年改称)を開設。
その後、厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の在り方検討委員会」委員、内閣府「自殺対策官民連携協働会議」委員、公益財団法人日本精神神経科診療所協会会長など歴任。
現在、医療法人メディカルメンタルケア横山・渡辺クリニック名誉院長、大阪大学医学部神経科精神科非常勤講師、一般社団法人日本精神科産業医協会共同代表理事ほか。
ストレスチェック法制化においても、厚生労働省「ストレスチェック制度に関する検討会」「ストレスチェック項目に関する専門検討会」「ストレスチェック制度マニュアル作成委員会」などの委員を務める。

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