ストレスチェック50人未満の中小企業にも義務化へ!時期・実施方法について解説【労働安全衛生法改正】

ストレスチェック

2025年5月に労働安全衛生法が改正され、従業員50人未満の中小企業でもストレスチェックが義務化されることが決まりました。施行は公布後3年以内(最長で2028年5月まで)とされており、早ければ前倒しの可能性もあります。

これまで小規模事業場は「努力義務」でしたが、今後は企業規模にかかわらず職場のメンタルヘルス対策が求められるようになります。厚生労働省は50人未満の事業場へのストレスチェック導入に向けて「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」を作成し、令和8年2月25日(水)に公表されました。

本記事では、義務化の時期や具体的な実施方法、今から備えておくべきポイントをわかりやすく解説します。
2028年までに確実に義務化される見込みのため、今のうちに情報収集を進めておきましょう。

ストレスチェックの義務化、従業員50人未満も対象に

2025年5月8日、衆議院で労働安全衛生法の改正法案が可決・成立しました。その中でも注目すべきなのが、従業員50人未満の事業所におけるストレスチェックの義務化です。

2.職場のメンタルヘルス対策の推進【労働安全衛生法】

○ストレスチェックについて、現在当分の間努力義務となっている労働者数50人未満の事業場についても実施を義務とする。
その際、50人未満の事業場の負担等に配慮し、施行までの十分な準備期間を確保する。

これまでとの違いは?

ストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的として、2015年12月から「常時使用する労働者が50人以上」の事業所に義務づけられていますが、それ未満の小規模事業所については、「努力義務」とされていました。

しかし、今回の法改正により、以下のように変更されます。

従業員数50人未満の事業所についても、ストレスチェックの実施が義務に

小規模事業所でも、職場のメンタルヘルス対策をしっかり講じていくことが求められるようになります。

ストレスチェック50人未満の義務化はいつから

ストレスチェック50人未満の義務化は、2025年5月14日に公布された改正労働安全衛生法により、公布後「3年以内」に政令で定める日から施行される予定であり、最長で2028年5月までに義務化される見込みです。ただし、政令によって施行日が早まる可能性もあるため、最新の情報に注意が必要です。

改正法の公布日は2025年5月14日

ストレスチェック義務化の施行日は、

公布後「3年以内」に政令で定める日

とされており、最長で2028年5月までに施行される見込みです。

※ただし、政令により早まる可能性もあるため、最新情報のチェックが必要です。

小規模事業所への配慮も明記

法案では、次のような配慮が明記されています。

50人未満の事業場の負担等に配慮し、施行までの十分な準備期間を確保する

これにより、事業主側にストレスチェック制度への理解を深めてもらい、体制づくりや外部委託の検討といった準備を、段階的かつ計画的に進められるようにすることが目的とされています。急な義務化による混乱や負担の集中を避け、小規模事業場でも無理なく制度を導入できるようにするための措置です。

 小規模事業場向けのストレスチェック実施方法

50人未満の事業場でのストレスチェックの実施方法については、これまで厚生労働省の検討会で議論が進められてきました。そのなかで、小規模事業場の実情に配慮した実施方法が整理され、小規模事業場向けのストレスチェック実施マニュアルが公表されています。

小規模事業場におけるストレスチェック制度はどうなる? 厚労省検討会の傍聴レポートと実務ポイント(50人未満企業向け)

 50人未満の事業場でのストレスチェック実施課題

  • 産業医の選任義務がないため、専門職が不在のケースが多い
  • 従業員数が少ないため、個人のプライバシーの保護が難しい
  • 人的・予算的リソースが限られており、負担感が大きい

これらの実情を踏まえ、厚生労働省は小規模事業場向けの実施マニュアルを作成してします。このマニュアルに基づいて、無理のない体制を整えることが求められます。

new▼小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル が公表されました
厚生労働省:「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」令和8年2月

ストレスチェック制度の大まかな流れ

ストレスチェック制度は、次のような流れで実施されます。制度を理解するために、まず全体像を確認しておきましょう。

引用 小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル 

ストレスチェックとは、労働者自身がストレスの状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした調査票を用いたセルフチェックです。事業者(会社)には、チェック後に面接を希望する高ストレス者に対して医師による面接指導を実施する義務があります。なと、集団分析は努力義務とされています。

実施の流れ(ステップ別)

マニュアルでは以下の手順で実施することが推奨されています。

1. 実施方針の策定・体制の整備

衛生委員会(または労働者代表との協議)で実施方針を決定。実施者や、事業場においての実務担当者を選任する。

労働者数 50 人未満の事業場においては、原則として、労働者のプライバシー保護の観点から、ストレスチェックの実施を外部機関に委託することが推奨されます。
事業者から委託を受けてストレスチェック制度に関する業務を実施する外部機関としては、健診機関やメンタルヘルスサービス機関等があります。
引用 小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル 

2. 実施方法・評価方法の決定

実施時期、評価方法、調査形態(紙/ウェブ)を検討する。
調査票は、国が推奨する「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」または短縮版(23項目)などから選択する。

3.労働者への説明・調査票の配布

実施の目的・個人情報の取扱いについて事前に説明し、対象となる労働者に調査票を配布する。

ストレスチェックの対象となる労働者とは、次の2つの要件を満たす労働者を指します。
(※一般定期健康診断の対象者と同様で、契約名称や国籍は問いません。)

① 雇用期間の要件:次のいずれかに該当する者

・期間の定めのない労働契約で雇用されている者
・契約期間が1年以上の有期契約労働者
・契約更新により1年以上の雇用が見込まれる者
・1年以上継続して雇用されている者

② 労働時間の要件
1週間の労働時間が、同じ業務に従事する通常の労働者の4分の3以上であること

補足(努力義務)
週の労働時間が通常の労働者の4分の3未満であっても、上記①の雇用期間の要件を満たし、労働時間がおおむね2分の1以上である労働者については、ストレスチェックを実施することが望ましいとされています。

4.結果の集計・評価

調査票を回収し、実施者(医師・保健師等)が集計・評価を行い、高ストレス者を選定する。
※未受検者への受検勧奨は可能ですが、業務命令のような形で強要しないよう配慮が必要です。

5.本人への結果通知

結果は必ず実施者から、他者に内容が分からない形で本人に直接通知。事業者への開示は本人同意なしには行えない。

個人結果の通知方法として、内容が分からないように密封された封筒(封書)に入れて事業場に提供され、事務担当者等から個人に配布することは差し支えありません。面接指導の申出を行ったことや面接指導の結果は事業者に伝わることになりますので、面接指導対象者に対してはあらかじめその旨を通知しておくことが必要です。

6.高ストレス者への面接指導

高ストレスと判定された労働者が面接希望した場合、医師による面接指導を実施。面接指導結果の記録は5年間保存しなければなりません。 

労働者数 50 人未満の事業場における医師の面接指導の実施は、最寄りの「地域産業保健センター」に依頼して、無料で受けることができます。
※ なお、地産保では、ストレスチェック自体は実施していません。また、事業者がストレスチェックの実施者を地産保の登録産業医に依頼することもできません。

7.集団分析と職場環境改善(※努力義務)

部署単位で集計し、職場のストレス要因を把握。改善計画を立てて実施する。

実施上の5つのポイント

① 実施者は「医師・保健師等」でなければならない

ストレスチェックを実施できるのは、医師・保健師・一定の研修を受けた看護師・精神保健福祉士・公認心理師です。人事権を持つ者は実施事務従事者になれません。小規模事業場では産業医と契約するか、外部機関に委託するのが一般的です。

② 個人情報の取扱いは厳格に

ストレスチェックの結果は個人情報です。事業者は本人の同意なしに結果を取得することはできません。また、結果を理由とした不利益取扱いは法律で禁止されています。

  • 結果は本人に直接通知する(事業者への提供は同意が必要)
  • 結果を理由に解雇・配置転換・降格などの不利益扱いをしてはならない
  • 高ストレス者への面接指導の申出を理由とした不利益扱いも禁止

③ 受検を強制してはならない

ストレスチェックは労働者が自発的に受けるものです。受検を強制することや、未受検者を不利に扱うことは認められていません。ただし、受検率を高める工夫(周知・説明・匿名性の確保)は事業者の努力義務です。

④ 高ストレス者への面接指導の勧奨を行う

高ストレスと判定された労働者には、面接指導の申出を促す通知を行います。申出があった場合、事業者は遅滞なく医師による面接指導を実施しなければなりません。面接後は医師の意見を踏まえ、就業上の措置を検討します。

⑤ 集団分析の結果を職場改善に活かす

個人の結果だけでなく、部署や職場単位での集計(集団分析)を行うことで、組織全体のストレス要因が見えてきます。集団分析は義務ではありませんが、職場環境の改善に向けた有効な手段として強く推奨されています。

ストレスチェックの目的は「一次予防」

ストレスチェック制度の主な目的は、従業員のストレス状態を早期に把握し、重症化する前に対応する「一次予防」にあります。これは、心や身体の健康に問題が起きてから対応するのではなく、問題をできるだけ早期に発見し、対処するという考え方です。

この一次予防の考え方は、企業規模に関係なく重要です。従業員数が少ない事業所では、ひとりの不調が職場全体に与える影響も相対的に大きくなるため、むしろ早期発見・早期対応の体制づくりはより重要と言えます。

今回の義務化により、小規模事業所においてもストレスチェック制度を「単なる法令対応」にとどまらず、職場のメンタルヘルスへの継続的な取り組みにつなげていくことが重要です。

まとめ

これまでストレスチェックの義務は、常時50人以上の労働者がいる事業場に限られていました。しかし、働く人のメンタルヘルス課題は企業規模に関係なく存在しています。むしろ、小規模な職場ほど人間関係の影響を受けやすく、相談体制も整っていないことが少なくありません。

こうした背景から、小規模事業場においても、従業員のメンタルヘルス不調を早期に把握し、予防につなげる仕組みを整えることが必要とされています。ストレスチェック制度を通じて、職場環境の改善や相談体制の構築が促されることが、期待されます。
準備期間はあるとはいえ、「まだ先の話」ではなく、今から体制づくりを始めておくことが大切です。

今後の政令や厚生労働省からのガイドラインなど、最新情報をチェックしつつ、適切な対応を進めていきましょう。

<参考> 厚生労働省 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案の概要
    厚生労働省 「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表します

 

 

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