上司から無視されるのはパワハラ?具体的な対処法を解説!

上司から無視されるのはパワハラ?具体的な対処法を解説! パワハラ

上司から無視されていると感じると、それだけでとてもつらく感じますよね。自分が何か悪いことをしてしまったのかな?嫌われて人事評価に影響したら怖い⋯⋯、など悩みも尽きなくなります。

上司から無視というのはパワハラに該当するのでしょうか?

今回は上司からの無視はパワハラにあたるのか、また上司から無視されていると感じたときの対処法を解説します。

上司からの無視の具体例

職場で上司からの無視の具体例について見ていきます。

1. 挨拶を無視する

上司に挨拶をしても、目を合わせずに無視することがあります。これが繰り返されると、職場でのコミュニケーションが断たれ、孤立感を感じるようになります。

2. 会議での発言を遮る

会議中に発言しようとすると、上司が意図的に話を遮ったり、別の話題に移ることがあります。これにより、無視された側の意見や存在が軽視されていると感じることがあるでしょう。

3. 業務指示を与えない

上司が特定の業務についての指示を特定の部下には一切伝えず、他の社員には指示を出すことがあります。この結果、その部下は何をすればよいのかわからず、業務に支障をきたすことになります。

4. メールやメッセージへの無反応

業務上の重要な連絡をメールやメッセージで送った際に、上司が一切返信をせず、部下からの連絡や確認を無視することがあります。これが続くと、信頼関係が損なわれることがあります。

5. 社内イベントやランチへの不参加

社内のイベントやランチに特定の部下を招待せず、他の社員だけを誘うことがあります。これにより、職場での人間関係が断たれ、孤立感を強めることがあります。

6. フィードバックを与えない

行った業務に対して、上司が一切のフィードバックや評価を行わないことがあります。これにより、無視された部下は自分の業務の進捗や成果を理解できず、モチベーションが低下することがあります。

7. 社内チャットでの無視

社内のチャットツールで質問や業務連絡を送った際に、上司が一切反応しないことがあります。これにより、コミュニケーションが断たれ、業務の円滑な進行が妨げられることがあります。

このように職場で上司に無視されることは、精神的なストレスや孤立感を引き起こし、業務に対する意欲を低下させる要因となります。

これら行為はパワハラに当たるのでしょうか?

パワハラとモラハラの違い

無視という行為はモラハラ(モラルハラスメント)にも感じるかもしれません。

モラハラ(モラルハラスメント)とパワハラ(パワーハラスメント)は、いずれも職場における不適切な行為ですが、その定義や特徴には違いがあります。

パワハラの定義

厚生労働省は、パワハラを「職場における優越的地位を利用した、業務上の関係に基づく行為で、精神的または身体的な苦痛を与えるもの」と定義しています。具体的な行為には、暴力や威圧、過剰な要求、業務の妨害、人格否定、無視・排除などが含まれます。

モラハラの定義

一方で、モラハラは「精神的な苦痛を与える行為」であり、主に言葉や態度を通じて相手を攻撃したり、精神的に追い詰める行為を指します。モラハラは、必ずしも職場の上下関係に基づくものではなく、同僚間や部下から上司への行為も含まれます。

パワハラ・モラハラの主な違い

  1. 優越的地位の有無:

    • パワハラ: 上司などの優越的立場からの行為が特徴。上下関係が重要な要素。
    • モラハラ: 上下関係に依存せず、同僚や部下から上司への行為も含まれる。
  2. 行為の内容:

    • パワハラ: 身体的な暴力や業務に対する不当な要求、無視など、職場の業務に直接関係する行為が多い。
    • モラハラ: 精神的な攻撃や侮辱、嘲笑など、言葉や態度によるものが中心。
  3. 影響の範囲:

    • パワハラ: 職場の業務や業務環境に直接的な影響を与えることが多い。
    • モラハラ: 精神的な苦痛を与えることが主な目的で、業務への直接的な影響は必ずしも伴わない。

モラハラとパワハラは、職場における不適切な行為として共通点がありますが、優越的地位の有無や行為の内容において明確な違いがあります。パワハラは業務上の関係に基づく優位性を利用した行為であり、モラハラは精神的な攻撃に重点を置いているものといえます。

上司からの無視はパワハラに該当するか?

上司が無視する行為は、状況によってはパワハラに該当することがあります。パワハラの要件とパワハラの6類型を参照し、無視がパワハラにあたるかどうかについて見ていきましょう。

パワハラの要件

職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。

上司からの無視はパワハラの要件にあたるか見てみましょう。

①優越的な関係を背景とした言動 上司が無視する行為は、上司と部下の明確な上下関係を利用して行われるため、この要件を満たす可能性があります。特に、無視が継続的に行われ、特定の部下に対してのみ行われる場合、意図的な排除や差別的な扱いと見なされることがあります。
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの 無視という行為は業務上必要とは言えません。業務に関するコミュニケーションが求められる場面での無視は、業務遂行に支障をきたすため、適切な行為とは言えません。無視が一時的なものであれば、業務上のストレスやコミュニケーションの問題として片付けられることもあります。しかし、無視が継続的であり、特定の部下に対してのみ行われる場合、業務上の必要を超えていると見なされることがあります。この場合、無視は精神的な圧迫を与え、業務環境を悪化させる要因となり得ます。
③労働者の就業環境が害される 上司の無視が続くことで、無視された従業員は孤立感や不安感を抱くことが多く、これが職場環境に悪影響を与えることになります。無視されることで、コミュニケーションが円滑に行われず、チームワークが損なわれる可能性があるため、上司からの無視は労働者の就業環境が害される行為といえます。

パワハラの行為について厚生労働省は6つに分類しています。上司からの無視はパワハラ6分類の何にあたるか見ていきましょう。

パワハラ6類型

上司からの無視は、パワハラ6類型の一つである「人間関係からの切り離し」に該当します。

「人間関係からの切り離し」は、特定の個人を意図的に無視したり、コミュニケーションを断つことによって、その人を孤立させる行為を指します。このような行為は、被害者に対して心理的な圧迫を与え、職場での存在意義や自己価値を損なわせることがあります。

上司による無視がパワハラに該当するかどうかは、無視の内容や状況、影響の程度によります。無視が精神的苦痛を引き起こし、継続的に行われる場合は、パワハラと判断される可能性が高いです。

上司が部下を無視することで、以下のような影響が生じます。

  • 孤立感の増大: 無視されることによって、被害者は職場での仲間との関係が断たれ、孤立感を強く感じるようになります。
  • コミュニケーションの断絶: 業務に関する情報や指示が得られず、業務の遂行に支障をきたすことになり、結果として仕事のパフォーマンスが低下します。
  • 精神的ストレス: 無視されることで、被害者は不安感やストレスを抱え、精神的な健康に悪影響を及ぼすことがあります。

上司の無視が継続的かつ意図的に行われる場合、その行為は「人間関係からの切り離し」として明確に認識されます。特定の社員だけを無視することは、職場における人間関係に対する侵害であり、パワハラとしての要件を満たしているといえるでしょう。

上司に無視され、パワハラの可能性がある場合の対処法

それでは継続的に上司に無視され、それがパワハラの可能性がある場合どのように対処したらよいのでしょうか。

何をされたか記録する

どのようなことをされたか、いつ、どこで、誰が、何を、どのように行ったのかを記録しておきましょう。

周囲に相談する

信頼できる同僚や友人に相談してみてください。自分だけで抱え込まず、周囲の意見やサポートを得ることで、状況を客観的に見ることができるかもしれません。

会社の窓口や人事担当者に相談する

上司に相談できない場合や、直接の対話が難しい場合は、人事部門や社内の相談窓口に相談しましょう。企業は、相談者が不利益を被らないよう、プライバシーの保護に配慮することが求められています。

外部の相談窓口に相談する

社内に相談窓口がない場合や、社内で解決できない問題がある場合は、外部の相談窓口に相談しましょう。全国の労働局や労働基準監督署に設置されている総合労働相談コーナーでは、無料で相談を受け付けており、電話での相談も可能です。

相談窓口一覧(厚生労働省)https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/inquiry-counter

 心の健康を保つ

無視が続くことで精神的なストレスを感じ、メンタルヘルス不調に陥る可能性もあります。セルフケアの実践や、必要に応じて専門家のカウンセリングを受けることも検討してください。心の健康を保つことが重要です。

上司から無視され、パワハラを受けているのではないかと感じると、不安や恐怖で気持ちが押しつぶされるような思いになることもあるでしょう。適切な行動をとるためにもまずは、気持ちを落ち着かせることが大切です。また一人で抱え込まずに専門家に相談することもおすすめします。

最後に、ストレスを軽減するため今すぐに実践できるセルフケアの方法をいくつかご紹介いたします。

上司から無視されて不安な時に実践してほしいセルフケア

深呼吸する

深呼吸や腹式呼吸は、心身のリラックスに非常に効果的です。これらの呼吸法は、ストレスや不安を軽減し、問題と自分を切り離す助けとなります。

深呼吸を行うことで、副交感神経が優位になり、心拍数が下がり、リラックスした状態を促進します。また深い呼吸は、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑える効果があります。

深呼吸することで問題と自分を切り離してみることができる

 呼吸に意識を集中することで、現在の状況に対する思考や感情を客観的に観察でき、冷静な判断を促します。また呼吸を意識することで、感情の高まりを抑えることができ、適切な行動を選択しやすくなります。

効果的な腹式呼吸の方法

  1. 3秒かけてゆっくりとお腹をへこませながら口から息を吐きます。
  2. 3秒かけてゆっくりと、お腹をふくらませながら鼻から息を吸います。
  3. 途中でいろんな考えが浮かんできても受け流し、呼吸に意識を戻します。
  4. これを3分ほど繰り返します。

自分のものの見方について振り返って見る

気分は認知によって変わります。

認知とは、現実の見方や受け取り方のことをいいます。

何か出来事が発生したとき、その出来事をネガティブな受け取り方(=認知)をしてしまうと、気分もネガティブになり、そのままネガティブな行動につながってしまいます。

自分がどのように物事を捉えているのか振り返ってみることは、適切な行動をとるためにも重要です。しかし今気持ちに余裕がない場合は、まずは心を落ち着かせることを優先してください。

自分の認知の癖を知る

認知修正型ストレスコーピング

人それぞれ現実に対する見方は異なります。

自分にとって嫌な出来事が生じたとしても、「これは自分を成長させるために起こった意味のあるものだ」と捉え乗り越えようとする人もいれば、「もうだめだ」と絶望し適切な行動を取れなくなる人もいます。

ひとつの出来事に対して様々な受け取り方がある中で、往々にして最悪なストーリーを想定してしまうことがあります。そしてその思い込みのために気分が暗くなり、さらにはその気分がその後の行動に影響を与え、ネガティブな行動につながることになります。

出来事が生じた時、自分はどのようなストーリーを想定しているか、自分自身の認知の癖を知ることがまず大切です。

認知や考え方の傾向が、ストレスの要因となる場合があります。認知の癖を知り修正することができれば、自分自身の考え方に囚われ消耗することなく、適切な行動をとることができます。

これらは認知行動療法といわれ、うつ病や様々な精神疾患の治療・再発防止に効果があるだけではなく、より生き生きと働くための企業研修においても取り入れられています。

「上司から無視されている」と感じる場合

例えばよく相談にある例として、「上司から無視されている」「メールをしても返事がない」などがあります。

業務上の連絡で上司にメールを送ったのに、しばらくしても返信がない。そのため自分は上司に嫌われていると思い、憂鬱な気持ちになる。そして、その上司を避け、できるだけ話をしないようになってしまう。
これは典型的なネガティブな認知です。
【認知】メールの返信がこない=私は嫌われている
この思い込み(認知)により、気分が憂鬱になり、その後の行動にも影響が及びます。ではどのように考えたらよいのでしょうか?
考え方を変えるポイント|事実と解釈を切り離す

このような悪循環を防ぐためのポイントは、事実と解釈を切り離すことです。

起きていることは、「上司からメールの返信がこない」ということです。この事実に対する解釈は様々あるはずです。「自分は嫌われている」というのはひとつの解釈であり、それ以外に、別の考え方はないか考えてみることが必要です。例えば、「単純にメールを見逃してしまっている」「忙しくて返信するのを忘れていた」などが考えられるでしょう。

このように事実を客観的に見て、いろいろな可能性を考えてみることが大切です。そして可能性のある受け取り方について、それぞれの可能性を客観的に検証し、問題となっている事態を解決するために最も適切な行動は何か考え、実行することがポイントです。

よくあるネガティブな受け取り方(認知)の例

よくあるネガティブな受け取り方(認知)の例には次のようなものが挙げられます。

  • 証拠もないのにネガティブな結論を引き出す
  • 良いこともたくさん起こっているのに、ささいなネガティブなことに注意が向く
  • ひとつの出来事を一般化してしまう
  • 失敗など悪いことは大きく考え、良くできていることは小さく考える
  • 白黒つけないと気がすまない
  • 完璧主義
  • 否定的な予測をして行動を制限し、その結果失敗し否定的な予測をますます信じ込む

実際にこのような受け取り方をしてしまうことは少なくありません。

修正のポイントは、まずは自分はこういう場面でこういう風に受け取る傾向があるという「こころのクセ」を知ることにあります。

ネガティブな受け取り方(認知)を修正するポイント
  1. 事実に基づいて考える
  2. 視点を変えて考えてみる
  3. ありうる受け取り方について、可能性を客観的に検証する
  4. そのうえで最も適切な行動を考え実行する

 

おわりに

誰かに無視されるというのはとてもつらいことですよね。今回は上司からの無視はパワハラに該当するのか、上司から無視された場合の対処法について解説いたしました。仕事での悩みがある場合は、一人で解決しようと抱え込まず、産業医や相談窓口に相談することをおすすめします。

厚生労働省による働く人の「こころの耳相談」」では、電話相談、SNS相談、メール相談を実施しています。

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「こころの耳」(厚生労働省サイト)では、全国の労働者の皆様やその家族、企業の人事労務担当者の方々からのご相談をお受けするため、電話相談、SNS相談、メール相談を実施しています。

出典
『実践!ストレスマネージメント』渡辺洋一郎 


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記事監修

精神科医専門医・日本医師会認定産業医。
川崎医科大学卒、1988年渡辺クリニック(2018年改称)を開設。
その後、厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の在り方検討委員会」委員、内閣府「自殺対策官民連携協働会議」委員、公益財団法人日本精神神経科診療所協会会長など歴任。
現在、医療法人メディカルメンタルケア横山・渡辺クリニック名誉院長、大阪大学医学部神経科精神科非常勤講師、一般社団法人日本精神科産業医協会共同代表理事ほか。
ストレスチェック法制化においても、厚生労働省「ストレスチェック制度に関する検討会」「ストレスチェック項目に関する専門検討会」「ストレスチェック制度マニュアル作成委員会」などの委員を務める。

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