「眠れない」「やる気がでない」「わけもなく不安になったり悲しくなる」「怒りっぽくなった」など、一般的によくみられる症状の原因は、ストレスかもしれません。
私たちは日々さまざまなストレスを抱えて生きています。
ストレスを自覚できていれば、それに対応することもできますが、自分でも気づかぬうちにストレスを溜め込み、ある日突然、心や身体に症状として現れることがあります。
「これくらい大丈夫」「みんなも我慢している」と心や体の不調を放っておくことは、不調の悪化につながる危険があります。
ストレスによる症状やストレスが限界に達したときの症状を知り、適切に対処をしていきましょう。
ストレスによる症状
まずはじめに、ストレスによる一般的な症状について見ていきましょう。
例えば、眠れない、お腹の調子が悪いなどはストレスによる症状として現れることもあります。軽度に思われるかもしれませんが、それらは早めに対処することが大切です。
ストレスによる一般的な症状は、「身体」「考え方」「感情」「行動」に見られます。
ストレスによる症状「身体の症状」
- 眠れない、熟睡感がない、または寝すぎる
- 食欲がない、または食べ過ぎる
- 身体がだるい
- 元気が出ない
- 頭が重い
- 疲労感が強い
- 動悸や息苦しさがある
- お腹の調子が悪い
- ふらつく
- 便秘・下痢
- のぼせや冷え
- 肩こり・腰痛など身体の痛み
ストレスによる症状「考え方」
- どうせうまくいかないと考える
- 同じ事ばかり考える
- 悪い結果ばかり考える
- 呆然として何も考えられない
- 大事なことを考えるのを避ける
- 集中できない
- 自分は役に立たないと考える
- 自分を責める
ストレスによる症状「感情」
- 悲しく憂鬱
- 気持ちが沈む
- やる気が出ない
- 何をするのもおっくうに感じる
- さみしい、哀しい
- 不安でしかたない
- 落ち着かない、イライラする
- 絶望的に感じる
- いなくなりたいと感じる
- 何事にも興味がわかず、楽しくない
ストレスによる症状「行動」
- 睡眠リズムが崩れる
- 生活リズムが崩れる
- 家に閉じこもる、ずっと寝ている
- 過度に集中、没頭する
- 些細なことで腹をたてる
- アルコールや喫煙が増える
- 浪費が増える、ギャンブルに溺れる
- 運転が乱暴になる
このようにストレスによる症状は、さまざまです。
心身や感情に見られる症状は誰しも経験することかと思います。しかし、「誰でもあること」とそのままにしてしまっては、症状が悪化してしまう危険があるため、早めに適切な方法でストレスを処理することをおすすめします。
症状によっては、受診が急がれる場合もあります。次の項目で説明するような症状が見られた場合、ストレスが限界に達していると捉え、早急に医療機関に行く必要があります。
ではストレスが限界に達したときの症状とはどのような症状なのでしょうか?
ストレスが限界に達した時の症状
ストレスが限界に達したときに出る症状というと、例えば突然倒れたり、何もないのに涙が止まらないなど、誰の目からみてもわかりやすい症状を思い浮かべる方が多いかもしれません。
もし突然倒れたり、わけもなく涙が止まらないというようなことがある場合、できるだけ早く医療機関に相談してください。
しかしこのような症状に至る以前に、ストレスが限界に達していることを示す症状というものがあります。
ストレスが限界に達したときに出る症状すなわち、医療機関に行くべき徴候は、自分で気づく変化と、職場や家族など周りが気づく変化があります。
相談に早すぎるということはありません。一人で抱え込まず話をするということが大切です。
ストレスが限界に達した時の症状|自分で気づく変化
■好きなことが楽しめない
この2つの症状が、ほとんど1日中、毎日、1週間以上続く場合は、医療機関への相談が急がれます。
ストレスが限界に達した時の症状|周囲が気づく変化
医療機関へ行くべき徴候について周囲が気づく変化は、次のような感覚で気づく場合が多いです。
■「今まで○○だったのに、最近△△だ・・・」
具体的な様子は人によって様々ですが、ここでは一般的な様子の変化については職場・家族それぞれ次の様子の変化について見ていきます。
家族や友人が気づく変化
・酒を飲むと、性格や言動がまったく変わってしまう
・ささいなことに激しく怒り、乱暴を働く
・考え込むようになり、独り言やイライラすることが多くなる
・とりとめのないことを気にする
・ケガが多くなる
・表情が乏しく、口数が減って行動に正気がなくなる
・好きなことをしなくなる
・家にこもりがちになる
・服装や身だしなみがだらしなくなり、不潔になる
・自信がなくなり、自分の能力の低下を訴える など・・・
職場で気づく変化
・しばしば休んだり、突然休む
・大した理由もなく職場転換を希望したり、退職を訴える
・身体の具合が悪いといったり、とりとめのない訴えが多くなる
・以前はできたルーティンワークができない
・業務中に居眠りが目立ったり、ぼーっとしている
・関係者との言い争いや気分のムラがある
・職務上の義務を怠りがちになり、責任感に乏しくなる
・取引先や顧客からのクレームが多い
・同僚などと話し合うのを嫌がり、付き合いを避ける
・作業にミスが目立ったり、手こずっている など・・・
家族や友人の中に、このようなことが感じられる場合、ストレスへの気付きを促してみることをおすすめします。
ここまでストレスが限界になったときのサインと受診すべき徴候についてお伝えしました。症状として軽い場合も、早めに対処することが重要です。次にストレス解消法についてお伝えします。
ストレス解消法
ストレスを溜め込むと、後々大きな心身症状に繋がることもあります。健康的な毎日を送るためにも、ストレス解消の習慣を身につけることが重要です。
睡眠の質を上げ、しっかり休養する
睡眠は心身の疲労を回復させ、エネルギー充電に繋がり、ストレス解消のためにはとても重要です。質の良い睡眠によって、体内の修復を促す成長ホルモンが多く分泌され、疲労回復が促進されます。また自律神経も整いストレスが軽減されます。
考え事をして眠れない時の他、日中気分がザワザワする時、心を落ち着かせる効果がある自律訓練法もおすすめです。
心が落ち着く自律訓練法
①腹式呼吸を10回ほど行います
ベッドに仰向けになったり、椅子の背もたれにもたれかかったりするなど自分が楽だと感じられる姿勢をとります
②身体の感覚をイメージします
楽な呼吸をしながら次の言葉を心のなかで唱えながら、身体の感覚をイメージしていきます。
「手足が重たい」「手足が温かい」「心臓が静かに脈打っている」「楽に呼吸ができる」「お腹のあたりが温かい」「額(ひたい)が涼しい」
身体の感覚をイメージしていくうちに、思考の活動がおさまり、自然な眠りを導きます。
睡眠についての詳細は下記の記事において、眠れない原因や様々な不眠解消方法をお伝えしています。
食事内容を見直す
食事はメンタルヘルスにも影響を与えることが分かってきています。
メンタルヘルス不調の予防にはビタミン、ミネラル、アミノ酸、脂肪酸などの栄養素を必要量摂取することが大事です。
ビタミンが不足することでうつ病の発症リスクを上げることになるといわれています。したがって、ビタミンB1、B2、B6、B12を多く含む卵や肉、大豆などの摂取が良いと思われます。
また、鉄や亜鉛の不足とうつ病に関連性があるという研究もありますのでミネラルの摂取も大事です。
さらに、うつ病に関係するといわれているセロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンという脳内神経伝達物質はアミノ酸から作られています。したがって、アミノ酸が不足しないようにすることは重要です。アミノ酸はタンパク質から作られますから、たんぱく質をしっかりとることも重要です。
さらに、DHA (ドコサヘキサエン酸)やEPA (エイコサペンタエン酸)などの脂肪酸は魚に多く含まれており動脈硬化の予防効果のほか、神経保護作用や抗炎症作用などもあるとことが分かってきており、魚を多く食べている人は食べていない人に比べてうつ病のリスクが少ないという報告もあります。
継続できる運動を取り入れる
ウォーキングや軽いランニングなど軽度な運動を継続的に行うことは、身体の健康だけではなく、ストレス解消に繋がりメンタルヘルス不調の緩和に効果的です。
外に出るのが難しい場合は、動画配信サイトなどで好みのエクササイズ動画を用いて運動を日常的に取り入れることをおすすめします。
おわりに
以上、ストレスによる症状やストレスが限界に達したときの症状、ストレス解消方法についてお伝えしました。
生きている上でストレスは完全に避けることはできません。そのためストレスを溜めないように、自分にあったストレス対処法を取り入れることをおすすめします。
個人向け相談窓口(厚生労働省)
厚生労働省による「みんなのメンタルヘルス」では、こころの健康や病気、支援やサービス等、メンタルヘルス情報のポータルサイトです。相談窓口の案内等もあります。
出典
『実践!ストレスマネージメント』渡辺洋一郎
『こころに効く精神栄養学』功刀浩 (国立精神・神経医療研究センター)著,女子栄養大学出版部, 2016.3
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