年末年始の休みが終わった途端、「体が重い」「やる気が出ない」「仕事に集中できない」と感じていませんか。しっかり休んだはずなのに、なぜか不調が続くと、不安になってしまう人も多いと思います。
こうした正月明けの体調不良や無気力感は、いわゆる正月病と呼ばれる状態かもしれません。正月病は医学的な病名ではありませんが、年末年始の生活リズムの乱れやストレスの蓄積によって、心と体のバランスが崩れているサインとして多くの人に見られます。
一時的な疲れであれば心配はいりませんが、不調が長引く場合は、放っておかないことも大切です。原因を知り、正しい整え方を意識することで、回復はぐっと楽になります。
今回は、正月病とはどのような状態なのかを整理したうえで、年末年始の体調不良や正月明けにやる気が出なくなる原因、そして日常生活の中で無理なくできる対処法について、わかりやすく解説していきます。
正月病とは?〜年末年始の休み明けに起こる心と体の不調
年が明けた途端、理由ははっきりしないのに気持ちが沈み、普段なら気にならないことまで重く感じてしまう。そんな状態に心当たりはないでしょうか。年末年始明けは、心身の調子を崩しやすいタイミングでもあります。
この時期に見られる不調は、「正月病」と呼ばれることがあります。医学的な病名ではありませんが、季節的なストレス反応のひとつとして知られており、毎年多くの人が似た感覚を経験しています。
医学的な病名ではないが、多くの人が経験する季節性ストレス
正月病とは、年末年始の休暇を経て生活リズムや心のバランスが乱れた結果、心身の疲労やストレスが表面化する状態を指します。
病気というより、非日常から日常へ戻るときの適応反応に近いものです。
特に日本では、年末年始に仕事・家庭・人間関係などの行事が重なりやすく、精神的にも肉体的にも負荷が大きくなりがちです。これにより、自律神経やホルモンバランスが乱れ、さまざまな体調不良を引き起こすことがあります。
なぜ年末年始に体調を崩しやすいのか⋯自律神経とホルモンの関係
自律神経は、私たちの体温・心拍・消化・睡眠などを自動でコントロールしています。年末年始は、夜更かしや飲みすぎ、睡眠不足、気温の変化によってこのリズムが乱れやすい時期です。
さらに、日照時間の減少によって気分を安定させるセロトニンの分泌も低下しやすくなります。その結果、倦怠感や無気力、落ち込みといった症状が現れやすくなるのです。
このように、正月病は単なる気分の問題ではなく、自律神経の乱れやホルモンバランスの変化が深く関係しています。
「正月疲れ」「正月うつ」との違い
正月疲れは、主に身体的な疲労や睡眠不足からくるものです。一方で正月うつは、気分の落ち込みや意欲低下など精神的な側面が中心です。
いずれも根本には「生活リズムの乱れ」「過度なストレス」「休暇明けのギャップ」があり、放置すると本格的なメンタル不調に発展することもあります。
正月病とは、年末年始の生活リズムの乱れやストレスの蓄積によって心身が不調をきたす状態です。病気ではなく一時的な反応のことが多いですが、放置すると長期化する場合もあります。心と体のバランスを取り戻すためには、まず自分の状態に気づき、無理をせず整えることが大切です。
正月病の主な症状
正月病では、心の不調と体の不調が同時に現れることが多く、「休んだはずなのに疲れが抜けない」「なぜかやる気が出ない」と感じる人が少なくありません。ここでは、精神的な症状と身体的な症状の両面から整理します。
精神的な不調(メンタル面)
年末年始のイベント続きで生活が不規則になったり、社会的な緊張状態に戻るストレスを感じたりすると、心にも負担がかかります。次のような変化が見られたら注意が必要です。
- 気分が落ち込みやすくなる
- やる気が出ない、仕事や家事への集中力が下がる
- イライラしやすくなる
- 孤独感を感じる、何もしたくなくなる
- 物事を悲観的に考えるようになる
これらは一時的なストレス反応であることが多いですが、2週間以上続く場合は「適応障害」や「うつ病」のサインである可能性もあります。心の疲労は見えにくいため、早めにセルフケアや休息を取り入れることが大切です。
身体的な不調
体のだるさや睡眠の乱れ、消化不良など、身体的な不調も正月病の特徴です。自律神経が乱れることで、体がリラックスしにくくなり、回復が遅れがちになります。
- 体が重い・だるい・疲れが取れない
- 肩こりや頭痛が続く
- 胃もたれや便秘・下痢などの消化器症状
- 朝起きられない、または早朝に目が覚める
- 眠っても疲れが取れない、日中の強い眠気
- むくみや冷えを感じる
これらの症状は、暴飲暴食や運動不足、睡眠リズムの乱れによってさらに悪化することがあります。特に、アルコールの取りすぎや夜更かしは、自律神経を刺激して回復を遅らせる要因になります。

体と心はつながっている
心の疲れは体にも影響し、体の疲れは心にも影響します。どちらか一方を整えるだけでは十分とはいえません。正月病を乗り越えるためには、メンタルケアと身体ケアの両方を意識することが大切です。
正月病では「やる気が出ない」「体がだるい」など、心と体の両方に不調が現れます。多くの場合は一時的ですが、2週間以上続く場合は注意が必要です。生活リズムを整え、十分な睡眠と栄養を意識することで、多くの症状は回復していきます。
正月病の原因
正月病の背景には、年末年始という特別な時期に起こりやすい生活リズムの乱れやストレスの蓄積があります。休暇中は楽しい時間が多い一方で、体や心への負担も見えない形で積み重なっています。
ここでは、主な原因をいくつかの側面から整理して解説します。
① 年末年始のイベント疲れと過密スケジュール
年末年始は、仕事納め、大掃除、帰省、忘年会、新年会など、イベントが目白押しです。楽しみながらも「やることが多すぎて休まらない」という人は少なくありません。結果として、十分な睡眠や休息が取れず、慢性的な疲労が溜まりやすくなります。
また、職場復帰直前まで予定を詰め込むと、休暇明けにその反動から疲労が起こり、気持ちを切り替えにくくなります。
② 暴飲暴食と栄養バランスの乱れ
おせち料理やお酒の機会が増える年末年始は、どうしても塩分・脂質・糖質が多く、野菜やたんぱく質が不足しがちです。ビタミンB群や鉄分が不足すると、エネルギー代謝が落ちて「だるい」「集中できない」と感じやすくなります。
さらにアルコールを摂りすぎると、肝臓がフル稼働して疲労感が増し、睡眠の質も低下します。栄養と睡眠の乱れが重なると、心身ともにリセットが難しくなります。
③ 不規則な生活リズムと体内時計の乱れ
長期休暇中は夜更かしや朝寝坊が習慣化しやすく、体内時計がずれてしまいます。人の体は朝日を浴びることで1日のリズムをリセットしますが、昼夜逆転が続くとホルモン分泌のバランスが崩れ、日中の眠気や無気力につながります。
このような状態は社会的時差ボケ(ソーシャルジェットラグ)と呼ばれることもあり、旅行による時差ボケと同じように、仕事や学校が始まった直後に強いだるさを感じやすくなります。
④ 寒さ・日照不足によるセロトニン低下
冬は日照時間が短く、太陽光を浴びる時間が減少します。太陽光を受けることで分泌されるセロトニンは、気分の安定や集中力に関係する神経伝達物質です。これが不足すると、気分の落ち込みや倦怠感が起こりやすくなります。
また、寒さによって血流が悪くなり、筋肉のこわばりや冷え、肩こりなどの身体的不調も重なりやすくなります。
⑤ 心理的ストレスや人間関係の疲労
帰省による家族関係のストレスや、周囲との比較意識、将来への不安なども正月病の一因です。SNSでは楽しそうな投稿が増えるため、「自分だけが取り残されているかも⋯」と感じるケースもあります。心理的な孤独感は、自律神経のバランスをさらに崩してしまいます。
正月病の原因は、単なる疲れや怠けではなく、生活リズムの乱れ・暴飲暴食・寒さ・心理的ストレスなど複数の要因が重なって起こります。年末年始は楽しむ時間である一方で、心身への負担も大きい時期です。早めに疲労を自覚し、生活を整える意識が大切です。
正月明けにやる気が出ない理由
「休み明けなのに、なぜか気持ちが上がらない」「仕事に手がつかない」
これは多くの人が感じる正月明け特有の気分の低下です。単なる怠けではなく、脳やホルモンの働きが関係していることが分かっています。
休暇後のギャップによるストレス
人はストレスの少ない環境に慣れると、急に緊張状態へ戻る際に心身がついていけなくなります。長期休暇でリラックスしていた心身が、急に仕事モードへ戻ろうとすると、自律神経が混乱してだるさや無気力が現れやすくなります。
仕事始めの日は、体も頭も準備運動ができていない状態です。焦らず、ペースを取り戻すまでに数日かけるくらいが自然です。
脳内ホルモンとモチベーションの関係
やる気の源となるのは、脳内で分泌されるドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質です。睡眠不足や不規則な生活、栄養バランスの乱れによってこれらの分泌が減ると、自然と気力も低下します。
特にセロトニンは朝日を浴びる・軽い運動をする・リズムのある行動をとることで活性化します。正月明けに気持ちが沈むのは、これらの習慣が一時的に途切れてしまった結果ともいえます。
適応障害やうつ病の入り口の可能性も
正月明けの無気力や気分の落ち込みが、2週間以上続く場合は注意が必要です。仕事や人間関係などへの不安から心のエネルギーが消耗し、適応障害やうつ病の初期症状が表れていることもあります。
以下のようなサインが複数当てはまる場合は、早めに専門機関へ相談しましょう。
- 朝起きられない、会社に行くのがつらい
- 食欲がない、または過食してしまう
- 眠れない・夜中に何度も目が覚める
- 以前好きだったことに興味が持てない
- 漠然とした不安が続く
これらのサインがあるときは、自分を責めずにしっかり休むことが大切です。無理に頑張るよりも、心と体の充電期間を設ける方が回復が早まります。
正月明けにやる気が出ないのは、心の弱さではなく、脳と体のバランスが一時的に崩れているためです。生活リズムを整え、朝日を浴びて体内時計をリセットしながら、少しずつ通常のペースに戻していくことが大切です。長く続く場合は、心の不調が背景にある可能性もあるため、早めのケアを意識しましょう。
正月病の対処法・改善策
正月病は、多くの場合、生活リズムと心身のバランスを整えることで自然に回復していきます。大切なのは、無理に元の調子へ戻そうとしないことです。ここでは、今日から実践できる具体的な対処法を、心と体の両面から紹介します。
① 睡眠リズムを整える
正月病の改善で最も重要なのが睡眠です。夜更かしや朝寝坊で乱れたリズムは、少しずつ元に戻すことがポイントです。急に早寝早起きをしようとすると、かえって眠れなくなることがあります。
まずは起床時間を一定にすることを意識しましょう。休日も含めて同じ時間に起き、起きたらカーテンを開けて朝日を浴びることで体内時計が整いやすくなります。
② 食生活を整える
年末年始の食生活は、どうしても偏りがちです。正月明けは、胃腸をいたわりながら栄養を補う意識が大切です。特に、エネルギー代謝を助けるビタミンB群や、気分の安定に関わるたんぱく質を意識して摂りましょう。
脂っこい食事やアルコールが続いていた場合は、和食中心の食事に戻すことで胃腸の負担が軽くなります。
③ 軽い運動で血流と気分を改善する
疲れているから動きたくないと感じるときほど、軽い運動が効果的です。激しい運動は必要ありません。散歩やストレッチなど、体をほぐす程度の動きで十分です。
体を動かすことで血流が改善し、自律神経のバランスが整いやすくなります。また、セロトニンの分泌が促され、気分の落ち込みも和らぎます。
④ お酒とカフェインを控える
正月明けも習慣的にお酒を飲み続けていると、疲労感が抜けにくくなります。アルコールは一時的にリラックスできる反面、睡眠の質を下げてしまいます。
また、カフェインの摂りすぎも自律神経を刺激します。夕方以降は控えめにし、白湯やハーブティーなどで体を温めるのもおすすめです。
⑤ 心を休ませる時間を意識的につくる
正月病の回復には、心の余白も欠かせません。何かを頑張ろうとするよりも、何もしない時間を許すことが回復につながります。
好きな音楽を聴く、自然に触れる、静かに過ごすなど、刺激を減らす時間を意識して取り入れましょう。
⑥ 仕事や日常は慣らし運転で進める
正月明けから全力で動こうとすると、心身がついていかず反動が出やすくなります。最初は簡単な作業から始め、少しずつペースを戻すことが大切です。
小さな達成感を積み重ねることで、自然とやる気が戻ってきます。
正月病の対処法は、特別なことをするよりも、睡眠・食事・運動・休息といった基本を丁寧に整えることです。焦らず、心と体を慣らしながら日常に戻すことで、自然と調子は回復していきます。
正月病を予防するには
正月病は、事前に意識することで予防しやすい不調でもあります。年末年始をより心地よく過ごし、休み明けを楽に迎えるための工夫を紹介します。
スケジュールを詰め込みすぎない
年末年始は予定が集中しやすい時期ですが、あらかじめ何もしない日を確保することが大切です。休暇中に休めていないと、正月明けの疲労感が強くなります。
飲み会や会食の回数を調整する
すべての誘いに応じる必要はありません。体調や気分に合わせて断る選択も、健康を守る行動のひとつです。連日の飲酒は避け、休肝日をつくりましょう。
休暇中も朝日を浴びる習慣を続ける
起床後に朝日を浴びる習慣を保つだけでも、体内時計の乱れを防ぎやすくなります。外に出られない日は、窓際で光を感じるだけでも効果があります。
食べ過ぎを防ぐ工夫をする
おせち料理やごちそうは楽しみつつ、量を意識することが大切です。野菜や汁物を先に食べる、間食を控えるなど、小さな工夫が胃腸の負担を減らします。
心のセルフケアを意識する
年末は一年を振り返り、気持ちが沈みやすい時期でもあります。反省よりもよくやってきた点に目を向け、心を労わる時間を持つことが、正月病の予防につながります。

正月病は、年末年始の過ごし方を少し意識するだけで予防できます。予定を詰め込みすぎず、生活リズムを大きく崩さないことが、休み明けを楽にする最大のポイントです。
受診が必要なケースと相談先
正月病は多くの場合、生活リズムを整えることで自然に回復していきます。ただし、中には一時的な不調ではなく、専門的なサポートが必要なケースもあります。ここでは、医療機関や相談窓口を検討したほうがよい目安について整理します。
不調が長引いている場合の目安
以下のような状態が続いている場合は、単なる正月病ではなく、心や体が限界に近づいているサインかもしれません。
- 気分の落ち込みや無気力感が2週間以上続いている
- 眠れない、または寝すぎてしまう状態が改善しない
- 朝起きるのが極端につらく、日常生活に支障が出ている
- 食欲不振や過食が続いている
- 理由の分からない不安や焦りが強い
- 以前は楽しめていたことに関心が持てない
これらが複数当てはまる場合、適応障害やうつ病などの初期段階である可能性も考えられます。早めに専門家に相談することで、回復までの時間を短くできることも少なくありません。
医療機関や相談先を頼ることは弱さではない
「この程度で相談していいのだろうか」と迷う人は多いものです。しかし、心や体の不調を感じたときに相談することは、決して特別なことではありません。風邪をひいたら病院に行くのと同じように、心の不調も早めの対応が大切です。
心療内科やメンタルクリニックでは、薬を使わない相談や生活指導を中心とした対応が行われることもあります。また、自治体や公的機関の相談窓口では、匿名で話を聞いてもらえる場合もあります。
https://kokoro.mhlw.go.jp/soudan/
相談することで見えてくること
専門家に話すことで、自分では気づいていなかった疲労やストレスの原因が整理されることがあります。「つらい理由が分からない」という状態そのものが、不安を大きくしているケースも少なくありません。
第三者の視点が入ることで、気持ちが軽くなり、次の一歩を考えやすくなります。
正月病は一時的な不調であることが多いですが、症状が長引く場合は注意が必要です。早めに相談することは、自分を守る行動のひとつです。無理に一人で抱え込まず、必要に応じて専門家の力を借りましょう。
まとめ
正月病は、年末年始という特別な時期に多くの人が経験する、心と体のバランスの乱れによる不調です。「やる気が出ない」「体がだるい」といった感覚は、怠けや気合不足ではなく、生活リズムや自律神経が乱れているサインでもあります。







