ストレスチェックの高ストレス者とは?企業が取るべき正しい対応と注意点

ストレスチェックの高ストレス者とは?企業が取るべき正しい対応と注意点 ストレスチェック

高ストレスと判定された従業員が出たとき、企業として最も大切なのは、その後の対応です。
しかし実際には

  • 「面談を案内しても申し出がない」
  • 「どこまで会社が関与すべきか判断がつかない」
  • 「放置はNGと聞くが、具体的に何をしたらいいのかわからない」

といった悩みを抱える人事・労務担当者が少なくありません。

ストレスチェック制度は、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぎ、働きやすい職場づくりにつなげることを目的とした重要な取り組みです。一方で、その運用には法的な理解・適切なコミュニケーション・企業としての安全配慮義務の視点が不可欠になります。

さらに2025年の法改正を機に、ストレスチェックは中小企業にも義務化の動きが広がり、制度導入や高ストレス者対応の整備はすべての企業にとって重要なテーマになっています。

今回は、高ストレス者とは何かという基本から、企業が取るべき正しい対応、やってはいけないNG対応、面談を拒否された場合の考え方や実務上のリスク対策まで、現場で活かせる視点でわかりやすく解説します。

ストレスチェック制度の目的を改めて確認する

ストレスチェック制度について、「高ストレス者を見つける制度」「メンタル不調者を早期に発見する仕組み」と捉えられているケースは少なくありません。しかし、厚生労働省の指針において、制度の目的はそれとは明確に異なります。

ストレスチェック制度の主な目的は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止すること(一次予防)です。

制度では、定期的にストレスの状況を把握し、その結果を本人に通知することで、労働者自身が自分のストレス状態に気づくことを重視しています。さらに、結果を集団ごとに分析し、職場環境の改善につなげることも重要な位置づけとされています。

ストレスチェック制度の基本的な考え方

  • 労働者自身のストレスへの気づきを促す
  • 職場に存在するストレス要因を把握する
  • 職場環境の改善を通じて、不調を未然に防ぐ

つまり、ストレスチェック制度は、問題のある人を見つけ出すための制度ではなく、働く人と職場を守るための予防的な仕組みであると言えます。

この制度趣旨を十分に理解しないまま運用してしまうと、高ストレス者の選定や面接指導が管理や評価のように受け取られ、労働者の不信感を招くおそれがあります。

よくある誤解

  • 高ストレス者=メンタル不調者である
  • 面接指導=休職や配置転換につながる
  • ストレスチェック結果が人事評価に使われる

これらはいずれも、本来の制度の目的からは外れたものです。ストレスチェック制度は、労働者が安心して働き続けられる環境をつくるための「一次予防」の仕組みであることを、まず企業側が正しく認識しておく必要があります。

次章では、この制度の中で重要な位置づけとなる「高ストレス者」とは具体的にどのような状態を指すのかについて整理していきます。

ストレスチェックにおける高ストレス者とは

ストレスチェック制度における高ストレス者とは、ストレスチェックの結果から、心身に強い負担がかかっている可能性が高いと判断された状態の人を指します。

ここで重要なのは、高ストレス者という区分が、性格や能力、働き方の姿勢を評価するものではないという点です。あくまで、その時点でのストレス状態を示す指標として位置づけられています。

厚生労働省の実施マニュアルでも、高ストレス者は固定的な属性ではなく、業務内容や職場環境の変化によって変動しうる状態であることが前提とされています。

高ストレス者はどのように判定されるのか

高ストレス者の判定は、ストレスチェックの調査票の回答結果をもとに、一定の評価基準に沿って総合的に行われます。

評価の中心となるのは、次の三つの観点です。

  • 心身のストレス反応(強い疲労感、不安、気分の落ち込み、睡眠の不調など)
  • 仕事のストレス要因(業務量の多さ、裁量の少なさ、人間関係の負担など)
  • 周囲からのサポート状況(上司や同僚からの支援の有無)

これらの回答結果を点数化し、一定の基準を超えた場合に高ストレス者として選定されます。ただし、この基準は診断を行うものではなく、医師による面接指導につなげる必要性を判断するための目安である点に注意が必要です。

高ストレス者の割合はどの程度を想定しているのか

厚生労働省の実施マニュアルでは、 高ストレス者の選定にあたり具体的な評価基準の例が示されています。 これらの基準を用いた場合、高ストレス者は全体のおおむね10%程度となることが想定されています。

これは、高ストレス者を意図的に一定割合に調整するという意味ではありません。医師による面接指導を本当に必要とする人を適切に抽出し、 制度を現実的に運用するための目安として示されている考え方です。

そのため、ストレスチェックの結果として一定割合の高ストレス者が選定されること自体は、 制度が適切に機能している結果であり、 必ずしも職場に重大な問題があることを直接示すものではありません。

高ストレス者だからといってメンタルヘルス不調者ではない

高ストレス者と判定された場合でも、 それだけでメンタルヘルス不調や精神疾患を意味するわけではありません。

実施マニュアルでは、ストレスチェックの結果をもって診断や病名の判断を行うことはできないとされています。

高ストレス者とは、このまま強い負担が続いた場合に、心身の不調につながるおそれがある状態を早期に把握するための区分です。

企業側が理解しておきたいポイント

  • 高ストレス者は問題のある社員ではない
  • 診断名や病名とは切り離して考える必要がある
  • 業務や環境の調整によって改善するケースも多い

この前提を踏まえずに対応してしまうと、 高ストレス者という区分が過度に重く受け取られ、面接指導の申出がためらわれる原因にもなります。

次は、高ストレス者が制度上どのように扱われ、企業にはどのような対応が求められているのかを整理していきます。

高ストレス者は制度上どのように扱われるのか

ストレスチェック制度において、高ストレス者と判定された場合でも、直ちに何らかの措置が自動的に行われるわけではありません。

制度上、高ストレス者への対応として位置づけられているのが、医師による面接指導を受ける機会の提供です。

この面接指導は、企業側が一方的に実施するものではなく、高ストレス者本人からの申出があった場合に行われる という点が大きな特徴です。

面接指導は本人の申出によって行われる

高ストレス者として選定された労働者は、 医師による面接指導を受けるかどうかを自ら選択することができます。

企業は、高ストレス者に対して面接指導の案内を行い、 制度の内容や趣旨を説明する義務がありますが、 受けるかどうかを強制することはできません。

面接指導が本人の申出を前提としているのは、ストレスチェック制度が管理や監視を目的としたものではなく、 労働者自身の気づきと判断を尊重する考え方に基づいているためです。

面接指導の目的と位置づけ

面接指導の目的は、 精神疾患の診断や、休職の判断を行うことではありません。

実施マニュアルでは、 面接指導は次のような点を確認・整理する場として位置づけられています。

  • 現在のストレス状況や心身の状態
  • 勤務時間や業務内容、業務負担の状況
  • 職場におけるストレス要因の有無
  • 就業上の配慮が必要かどうか

つまり、面接指導は 不調が深刻化する前に、状態を整理し、必要な対応を検討するための予防的な機会 と位置づけられています。

面接指導後に企業が受け取る情報

面接指導を実施した場合、 医師は労働者の同意を得たうえで、 企業に対して意見を述べることがあります。

この医師意見には、 勤務時間の配慮や業務負担の調整など、 就業上の措置に関する助言 が含まれることがあります。

一方で、診断名や詳細な健康情報が そのまま企業に共有されるわけではありません。

企業が受け取るのは、 あくまで就業上の配慮を検討するために必要な範囲の情報であり、 個人情報やプライバシーには十分な配慮が求められています。

高ストレス者対応は義務ではなく配慮が基本

高ストレス者への面接指導やその後の対応は、懲戒や評価と結びつくものではありません。

制度上求められているのは、労働者が安心して働き続けられるよう、 必要に応じた配慮や環境調整を検討すること です。

この考え方を正しく理解せずに運用してしまうと、 高ストレス者対応が過度に形式的になったり、 労働者に不安や誤解を与えたりする原因となります。

次は、こうした制度上の位置づけを踏まえたうえで、 企業が取るべき具体的な対応について整理していきます。

企業が取るべき正しい高ストレス者対応

高ストレス者への対応は、 単に制度上の手続きを行えばよいというものではありません。 対応の仕方によっては、 制度への不信感を高めてしまったり、 本来支援につながるはずの機会を失ってしまったりすることもあります。

ここでは、厚生労働省の実施マニュアルの考え方を踏まえながら、 企業が押さえておきたい基本的な対応のポイントを整理します。

まず重要なのは制度趣旨の正しい周知

高ストレス者対応で最も重要なのは、 ストレスチェック制度の目的や考え方を、 労働者に正しく伝えることです。

高ストレス者という区分について、 問題のある社員と受け取られてしまうと、 面接指導の申出がためらわれる原因になります。

そのため企業は、 高ストレス者が何を意味するのか、 どのような目的で面接指導が用意されているのかを、 丁寧に説明する必要があります。

周知の際に伝えておきたいポイント

  • 高ストレス者は評価や処分の対象ではないこと
  • 結果が人事評価に使われることはないこと
  • 面接指導は不調を未然に防ぐための機会であること

面接指導につなげるための配慮

制度上、面接指導は本人の申出によって行われますが、 実際には申出に至らないケースも少なくありません。

忙しさや遠慮、不安から、 高ストレス者であっても申出を控えてしまうことがあります。 そのため企業には、 申出しやすい環境を整える配慮が求められます。

例えば、次のような工夫が考えられます。

  • 面接指導の流れや内容を事前に分かりやすく説明する
  • 業務時間内に面接を受けられるよう調整する
  • 産業医や外部専門職との相談体制を明確にする

こうした配慮があることで、 高ストレス者対応が形式的なものにならず、実際の支援につながりやすくなります。

高ストレス者対応で企業が注意すべきポイント

高ストレス者への対応は、 善意で行ったつもりの対応が、 かえってトラブルや不信感につながってしまうこともあります。

制度の趣旨を踏まえたうえで、 企業が特に注意しておきたいポイントを整理します。

不利益な取扱いを行わない

高ストレス者であることを理由に、 人事評価や配置、業務内容において 不利益な取扱いを行うことは認められていません。

たとえ配慮のつもりであっても、 本人の同意なく業務を外したり、 評価を下げたりすることは、 結果として不利益取扱いと受け取られるおそれがあります。

高ストレス者対応は、 懲戒や管理のための措置ではなく、 あくまで就業を継続するための配慮であることを企業側が明確に意識しておく必要があります。

情報の取扱いとプライバシーへの配慮

ストレスチェックの結果や、 面接指導に関する情報は、 要配慮個人情報に該当します。

本人の同意なく、 結果を上司や人事担当者が把握したり、 職場内で共有したりすることはできません。

企業が把握できる情報は、 就業上の配慮を検討するために 必要最小限の範囲に限られます。

情報管理で注意したい点

  • ストレスチェック結果は原則として本人のみが確認する
  • 医師意見は就業配慮に必要な範囲で共有する
  • 不要な保存や二次利用を行わない

高ストレス者を個人の問題にしない

高ストレス者が一定数出ている場合でも、 それを個人の資質や努力不足の問題として捉えるべきではありません。

特定の部署や業務で高ストレス者が多い場合、 その背景には、 業務量、役割分担、人間関係、マネジメントのあり方など、 職場環境上の要因が存在している可能性があります。

個人対応だけで終わらせてしまうと、 同じ状況が繰り返され、 結果として制度が形骸化してしまいます。

面接指導を特別視しすぎない

面接指導を受けることが、 重大な事態や休職の前段階であるかのように受け取られると、 申出をためらう原因になります。

面接指導は、 現状を整理し、必要な配慮を検討するための機会であり、 特別な措置ではありません。

企業側が過度に構えてしまうことで、 労働者に不安を与えないよう注意が必要です。

形式的な運用で終わらせない

高ストレス者対応が、 制度上の義務を果たすためだけの 形式的な対応にとどまってしまうと、 本来の目的である予防につながりません。

面接指導の案内や周知の仕方、 その後のフォローまで含めて、 労働者が安心して相談できる仕組みになっているかを 定期的に見直すことが重要です。

次は、高ストレス者対応を 職場環境改善へとつなげていく視点について整理します。

面接指導後の企業対応の考え方

面接指導を実施した後、 医師から就業上の配慮に関する意見が示されることがあります。

企業は、その意見を踏まえながら、 労働者本人と十分に話し合い、 可能な範囲で対応を検討していくことが求められます。

ここで重要なのは、 医師意見をそのまま機械的に適用するのではなく、 業務内容や職場の実情を踏まえたうえで、 現実的な調整を行うという視点です。

高ストレス者対応は、 特別な措置ではなく、 働き続けるための環境調整の一つ として捉えることが重要です。

次は、こうした対応を行う際に、 企業が特に注意しておくべきポイントについて整理します。

高ストレス者対応を職場環境改善につなげるには?

高ストレス者への対応は、 個人への配慮だけで完結するものではありません。 制度の本来の目的を踏まえると、 職場全体の環境改善につなげていく視点 が欠かせません。

高ストレス者が一定数選定されること自体は、 必ずしも特別なことではありません。 重要なのは、 その結果をどのように受け止め、 次の行動につなげるかです。

高ストレス者が多い部署は個人の問題ではない

特定の部署や業務において 高ストレス者が集中している場合、 その背景には、 職場環境上の要因が存在している可能性があります。

例えば、業務量の偏り、 役割や責任の不明確さ、 人間関係やコミュニケーションの問題などが重なっているケースも少なくありません。

こうした状況を、 個々の労働者の問題として処理してしまうと、 根本的な改善にはつながりません。

集団分析結果を活用する意義

ストレスチェック制度では、 個人結果とは別に、 部署や職場単位での集団分析を行うことができます。

集団分析は、 高ストレス者を特定するためのものではなく、 職場に共通するストレス要因を把握するための手段 です。

例えば、 仕事の量や質に関する負担が高いのか、 裁量の低さが影響しているのか、 サポート体制に課題があるのかといった点を客観的に確認することができます。

職場環境改善は大きな施策でなくてOK

職場環境改善というと、 大規模な制度変更や組織改編を想像されることもあります。

しかし、実際には、 業務の進め方を見直す、 情報共有の方法を工夫する、 相談しやすい雰囲気をつくるといった 小さな改善の積み重ねが効果を発揮するケースも多くあります。

重要なのは、 ストレスチェックの結果を一度きりのものとして終わらせず、職場を振り返る材料として活用することです。

高ストレス者対応は企業価値を高める取り組み

高ストレス者対応や職場環境改善は、 リスクを回避するためだけの取り組みではありません。

働きやすい環境づくりは、 離職防止や生産性の向上につながり、 結果として企業価値の向上にも寄与します。

ストレスチェック制度を単なる義務対応で終わらせるのではなく、 人と組織の持続的な成長につなげる仕組みとして活用していくことが求められています。

おわりに

ストレスチェック制度における高ストレス者対応は、 単なる法令対応やリスク回避のための取り組みではありません。高ストレス者とは、 問題のある社員や特別な存在を指すものではなく、 一定の負担がかかっている状態を早期に把握するための目安 です。

制度の目的は、 不調が表面化してから対応することではなく、 心身への負担が大きくなる前に気づき、 働き方や職場環境を見直すことにあります。企業がこの考え方を正しく理解し、 高ストレス者への対応を丁寧に行うことで、 労働者が安心して働き続けられる環境づくりにつながります。

また、高ストレス者対応をきっかけに 職場環境改善へと視点を広げていくことは、 離職防止や生産性向上といった面でも 大きな意味を持ちます。ストレスチェック制度を 義務として形だけ運用するのか、 人と組織の持続的な成長につなげる仕組みとして活かすのかは、 企業の向き合い方次第です。

高ストレス者対応は、 目の前のトラブルを防ぐための守りの施策ではなく、 これからの職場をより良くしていくための投資として捉えることが重要です。

参照
『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』(厚生労働省)
『医学的知見に基づくストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面接指導実施のためのマニュアル』(厚生労働省)

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